見出し画像

「たっぷりの納期にバッチリの予算!」なんてことは一度もなかった

「ないものねだりをしても仕方ない」という状況。生誕以来、誰しもが向き合う絶望だ。

身長が欲しくても手に入らないし、素晴らしい両親に育てられたいと思っても親は選べない。もちろん成人した後も「ほしいけど手に入らないもの」で脳内はいっぱいだ。僕たちは「あれもほしい、これもほしい、もっとほしいもっともっとほしい」を繰り返している。

だから「配られたカードで勝負するしかないんだよ」みたいなことわざや格言は古今東西あふれかえっている。「あれも足りない、これも足りないなんて言っていても仕方ないのよ!黙りなさい!」ということだろう。

アルバムを制作するときなんかも同じだ。
「たっぷりの納期にバッチリの予算!」なんてことは正直一度もなかった。与えられた期間、定められたお金の中で作れる最高のものを作って、成果を叩き出すしかない。そこで「時間ないよー金が足りないよー」なんて文句ばかり垂れていたら僕は今も音楽業界に残れていないと思う。

しかし最近「足りない」という感覚がなくなってきた。何かが足りないことが当然だと思いすぎて、そんな「足りている足りていない」という発想自体が死んでいる。

「この戦力で勝負せざるを得ない」という諦めを日々やっていると、体も心も慣れるのだろう。「僕はこういう人間性だし、持っている武器はアレだしコレだし」ということばかり考えてきた。

悪いことではなく、「今月、このタイミングではこの戦力しかありません。これでやります」というのは覚悟とも言える。だいたいの喧嘩は腕力や技術なんかよりも思い切りで決まる。アクセルを躊躇せずに踏めるかどうかは、覚悟の深度と相関性がある。

「今ある具材、時間で美味いものを作る」という方が結果が出たりもする。

やはり『覚悟』というのはそう捨てたものでもない。『諦め』というのは毒だけでもない。月末最終週。今日からテレビ局行ったりレコーディングしたり。

音楽を作って歌っています!文章も毎日書きます! サポートしてくれたら嬉しいです! がんばって生きます!