熟練講師があまり何もしていないように見えるのは何故か?
興味関心の明かりを灯す
研修講師さん(TOCインストラクター)に対しての社内研修プログラム設計相談。
研修は一通りプログラム通りできるけど、企業さんに合わせた研修となるといろいろ進行が詰まりそう... という心配事があるということです。
参加者さんのことをよくご存知である講師の直感は大切。何が引っかかりそうか?を紐解いていきます。
公開研修との大きな違いは受講者層。
公開では前のめりの経営者やマネージャーの方が多いですが、社内は研修というもの自体が初めてという現場社員さんの方が多くなります。
そして実際には「社長の命令で来た」、つまり内発的な動機はない状態で来ていることがほとんどです。
そこに対して最初にいかに興味関心の明かりを灯すか。
小さくてもいいから、ちょっと聞いておいても良さそうだな、自分と関係がありそうだなと感じてもらうことで、後の進行が大きく変わります。
実は講師の初心者・中級者は、研修の後半になるほどファシリテーションの技術を駆使する調整場面が増えて大変!と思いがちなのですが、
上級者になるほど最初にしっかりコミュニケーションが自然と流れる場を創れるので、実は後々の進行にあまりファシリテーションの技術は必要としません。
ですから、
1.開始直後のアイスブレイクの入り方
2.最初の理論の講義を自分事として捉えてもらう
ことに相談の大半の時間を割きました。
アイスブレイクを単体で盛り上げない
1.のポイントは「あとの学びと関連のあるアイスブレイクをする」ということ。
簡単なゲームをやってワイワイやるのはいいのですが、終わりました、じゃあ本番に入りましょうとプログラムに入ると、「あれ?さっきのゲームは何だったんだろう?」ということになり、またアイス状態に戻りやすくなってしまいます。
ここではTOCの実践に必要な、情報の共有をスムーズにするための下地づくりのアイスブレイクを考えました。
具体的な方法は書きませんが、今まで長く一緒に居た社員さん同士の、意外な一面を知る仕掛けを行うことにしました。身近にいる相手に少し興味関心を持てるような環境を作るのです。
人間、仕事に必要な情報だけを共有するのはかえって不自然です。何気ない対話がし易い環境を整えて、必要な情報も自然に流れるようなきっかけを作れると、後のプログラムの学び効果が倍増します。
抽象と具体を行き来する道筋づくりを最初にする
2.のポイントは「抽象度と具体度を、自分が主語になれるレベルに調整する」。
経営者の発言は理念とか数字とか、概して抽象度が高いでしょう。対して現場で作業する社員さんは、モノをどう動かすとか技術の話しとか、一般的には具体度が高いです。
経営者向け公開研修のように抽象度が高いままでは、現場社員さんは自分ごとになりにくい。
いやそこは思考停止してるんじゃないの? 抽象的な話から具体的な自分の仕事に落とし込めよ! というのは酷な話。
経営者の多くはここは社員さんが勝手に落とし込んでくれるものと期待しているフシがありますが、抽象化と具体化の行き来にはかなりのトレーニングが必要です。そしてそれは学校やこれまでの職場ではほとんどやっていないはずです。
最近ようやく「13歳から鍛える具体と抽象」本が出ているくらい。実はここはしっかり学ばないと結構難易度の高い技術なのです。
最初は講師・ファシリテーター側から、抽象度の高い理論の話 → 具体度の高い現場の話 と階段を降ろしていく必要があります。
例えば私達がよく使う「キャベツはまとめて切ったほうがいいか、1つづつ切ったほうがいいか」の事例があります。
どちらがいいかの理論的な説明はここではしませんが、この事例の学びを抽象化して、キャベツを切るのではない仕事をしている職場にさらに具体化するのは、得意な人と得意でない人がいます。
現場の人たちには、最初は現場作業を具体的にヒアリングしておき、実際のまとめ作業と1個づつの作業に繋げて説明する必要が大いにあります。
ああ、この理論は自分のこういう仕事に関係するんだ、それは悪くはなさそうだなと、相手が掴むことができればOKです。
最初の抽象・具体の行き来の道筋はちゃんと作っておくといいですね。ああ、そういうことかと一度分かれば「具体的に自分たちのお仕事ではどんなことになるでしょうか?」と意識して問いかければ、自分たちで具体化ができていくようになります。
他にも全体の設計や後半の山場などいろいろ話しましたが、それはまた別の機会に。まずは、
最初を掴む!
抽象度と具体度
のポイントをご紹介させていただきました。
受講される企業さんの眠っている力が開花されますように。
TOCなど研修講師のプログラム設計相談はこちらをご参照下さい。
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