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脳の仕組みを理解して、人生をいい方向にコントロールしよう:⑥アセチルコリン

こんにちは。ニシムラタクミです。このnoteでは「脳の仕組みを知って、人生をより良く生きよう」をテーマに、人の行動や感情に影響を及ぼす脳内物質の特性について解説していきます。

1回目の記事をまだ読んでいない方はこちらから↓

今回紹介するのは認知・記憶・学習に関わってくる物質「アセチルコリン」です。

アセチルコリンを理解することで、勉強や仕事の効率を1段階あげることができます。

やる気とひらめきをもたらす物質:アセチルコリン

何か(掃除、勉強、運動など)を始めようとしてもなかなか「やる気」が出ずに始められないといったことはよくあると思います。

しかし、「何かをやってみよう」といったような『やる気』は実は脳内には存在しません。『やる気』というのは実際に作業に着手することによって初めて生まれる感覚です。

始めるまではモチベーションがなかったけど、いざ初めてみると気分が乗ってどんどん作業が進むといったことはないでしょうか。(いざ掃除を始めてみたら、細かいところまで気になって隅々までやっちゃうみたいな。)

このように何かを始めることによって気分が盛り上がる現象を心理学者のクレペリンは「作業興奮」と呼びました。

この現象は、何かの作業を始めることによって、脳の「側坐核」という部分が刺激され、「アセチルコリン」が分泌されるこによって起こります。逆に何もせずに待っていても、アセチルコリンは分泌されないので、「やる気」が出ることはないのです。

このアセチルコリンは、その他にも、思考・記憶・学習・集中・ひらめきなどに関わってきます。アセチルコリンをコントロールすれば仕事や勉強の生産性やクオリティをアップさせることができます。

記憶を定着させやすくするシータ波

アセチルコリンが分泌されると脳内でシータ波という脳波を発生させます。このシータ波が発生すると脳内のシナプスがつながりやすくなり、「記憶力が向上する」、「アイデアが生まれやすくなる」といった効果が現れます。

<補足>シナプスとは
シナプスは脳の神経細胞と神経細胞の間の「つなぎ目」のことをいいます。人の身体の情報伝達は神経細胞を通じて行われます。シナプスがつながりやすくなることによって、情報がスムーズに伝達され、記憶力やアイデア出しにいい影響を与えます。

アセチルコリン・シータ波を分泌させるには

アセチルコリン・シータ波を分泌させ、学習能力を向上させるにはどのようにすればいいのでしょうか?具体的な方法について紹介します。

昼寝
30分程度の昼寝をすることにより、脳のパフォーマンスが30%以上も回復すると言われています。アセチルコリンは寝ている間に分泌が高まり、脳内の情報を整理したり、脳の休息を促します。

午後に脳が疲れているなと感じたら、甘いものを食べたりコーヒーを飲んだりするよりも、昼寝をした方が脳のパフォーマンスを改善することができます。

瞑想・ぼーっとする
瞑想や何も考えずにぼーっとするだけでもアセチルコリンは分泌されます。

また、瞑想は「セロトニン」や次の記事で紹介する「エンドロフィン」の分泌も促進するなど、集中力を高め、適度にリラックスするために非常に効果的な方法です。(瞑想の効果については、また別途で解説していと思います。)

新しいものに出会い好奇心を刺激する
今まで知らなかった新しいこと・ものに出会うことによって、アセチルコリンが分泌されます。

新しいものといっても大袈裟なものではなく、「いつもと違う道を通ってみる」、「行ったことのないレストランに行ってみる」程度のことでも全然OKです。

いつもと全く同じ行動ばかりしていてもアセチルコリンは分泌されません。日常の中の一部分でいいので、何か新しいものを取り入れてみましょう。

運動
適度な有酸素運動はアセチルコリンの分泌を促進します。ウォーキング程度の軽い運動でもアセチルコリンは分泌されます。

何か新しいものを発見するために外へ軽く散歩することは、好奇心への刺激とも相待って、アセチルコリンの分泌に適していると言えます。

アイデアは机に向かっていても生まれない

アイデアが浮かびやすい「4B」というものがあります。4Bとは「バー((Bar)」、「お風呂・トイレ(Bathroom)」、「バス(Bus)」、「ベッド(Bed)」の頭文字をとったものです。

先ほども説明した通り、アセチルコリンは脳をフル回転させて考え込んでいる時よりも、どちらかというとリラックスしている状態の方が活性化します。

何か新しいアイデアを生み出したい時は、机に向かって考え込んだり、会議室でひたすらディスカッションを行うのではなく、そのような場所からは少し離れてリラックスしてみる方がいいのです。

午前中は脳のゴールデンタイム?

午前中は「脳のゴールデンタイム」と呼ばれたりするのですが、これにはアセチルコリンが関わっています。夜寝ている間にアセチルコリンが分泌されることにより、脳の中で情報が整理され、脳がクリアな状態になっているのです。

また、午前中は「ドーパミン」や「セロトニン」などの『アミン』という系統に分類される物質が優位となります。この状態では高い集中力が発揮できるので、情報を整理していくような「論理的な」作業が向いています。

<午前中に向いている論理的作業の例>
・文章を書く
・数字を計算する
・計画を立てる など

午後や夜になってくると、脳が疲れてきて、情報がうまく整理できないようになってきます。この状態になると上記のような論理的な作業の効率は落ちてしまいます。

しかし、午後や夜はアセチルコリンが分泌されやすい時間なので、シータ波が出やすくなっています。そのような状態では、「ひらめき」や「斬新なアイデア」が生まれやすく、クリエイティブな作業が向いています。

ひらめきというのは、意識的に考え込んで生まれるものではなく、アセチルコリンによって、ある別々の要素同士が無作為に勝手につながった時に生まれるものです。自ら見つけに行くというより、アイデアが降りてくるようなイメージです。

午後の時間帯は脳の論理的思考力が落ちますが、それが逆に「〇〇であるべき」といった枠組みを取っ払い、いいアイデアが生まれやすくなります。

素晴らしいアイデアは睡眠とインプットから

歴史上の偉大な発見のいくつかは寝ている間に起こっています。

例えば、元素の周期表もそのうちの1つです。周期表を発見したメンデレーエフは、ある晩に宇宙の性質について考え込んでいたところ、うたた寝をしてしいました。その後目が覚めると、宇宙にある全ての原子がどのような体系であるのかが頭の中に思い浮び、目を覚ました直後に周期表を作り上げたと言われています。

このようなひらめき・発見もアセチルコリンが関係しています。人間の睡眠には浅目のレム睡眠と深めのノンレム睡眠があり、レム睡眠の時にアセチルコリンが非常に優勢になります。

アセチルコリンが分泌されることによって、脳の中の記憶の整理が行われます。この脳内での作業によって、1つ1つの要素が関連づけて整理されて、記憶として定着するのです。

また、この整理の中で、一見すると関連性の薄い要素同士がうまく結びつき、新しい意味が見出されます。それが「ひらめき」と呼ばれるのです。

しかし、素晴らしいアイデアは睡眠だけでは生まれません。先ほどのも説明した通り、「ひらめき」は、ある要素と要素の新たな繋がりによってもたらされます。何もないところから突如生まれるわけではありません。

つまり、そのような要素自体がそもそもなければ、新しいアイデアは生まれません。そのためにも日常的に新しい情報を取り入れることが大事です。

本を読むでもいいですし、今はネット上にも情報がたくさん転がっていますから(その分誤った情報も多く注意が必要ですが)積極的に新しい情報をインプットする習慣をつけましょう。

タバコはひらめきを阻害する

喫煙者の人は「タバコを吸うと頭がスッキリして集中力がアップする」と言いますが、これもアセチルコリンが関係しています。

脳内には「受容体」というものがあり、この受容体と脳内物質が結合することによって、脳が刺激を受け取ります。

アセチルコリンは「ムスカリン受容体」と「ニコチン受容体」の2つの受容体と結合します。後者はその名通り、タバコに含まれる「ニコチン」とも結合する受容体です。

タバコを吸うと肺からニコチンが吸収され、わずか7秒程度で脳内に到達し、ニコチン受容体と結合します。ニコチンがニコチン受容体と結合すると、アセチルコリンがニコチン受容体と結合するのと同様の反応が起こり、頭がスッキリしたような感覚が得られます。

しかし、これにはデメリットがあります。タバコからニコチンを摂取してニコチン受容体と結合すると、脳は「アセチルコリンが十分に分泌されている」と勘違いをし、アセチルコリンが分泌されにくくなります。

その結果、脳内でアチルコリンが不足し、それをまたニコチンで補うといったサイクルが繰り返されます。これが「タバコ(ニコチン)依存症」です。

タバコは脳内のアセチルコリンの分泌を阻害し、脳の認知機能を低下させるのです。

風邪薬がアセチルコリンの分泌を阻害する?

身近な薬には、実はアセチルコリンの阻害を分泌する副作用を持っている物もあります。風邪薬、下痢止め、酔い止めの薬などがそのような副作用をもっています。

「風邪薬を飲んだら眠くなる」といったことがあると思いますが、これは風邪薬によってアセチルコリンが抑制されたことが、1つの原因であると考えられます。

もちろん、風邪薬を一切飲まずに余計に症状を悪化させては本末転倒ですし、タバコのように中毒性があるわけではないので、全く摂取しない方がいいということはありませんが、集中力が必要になりそうな場面では、できるだけ風邪薬には頼らない方がいいでしょう。

アセチルコリンとアルツハイマーの関係性

若い人であれば、まだそこまで関係ない話かもしれませんが、アセチルコリンの分泌はアルツハイマーの症状にも関係しています。

実際にアルツハイマー病の治療薬には、アセチルコリンを増やす(正確には分解を阻害する)薬が用いられています。

また、アセチルコリンを増やし、アルツハイマー病の予防のために最も有効なのが「運動」です。運動をする習慣がある人とない人を調査したところ、運動習慣がある人はそうでない人に比べてアルツハイマー病になる確率が50%低いという結果が出ました。

有酸素運動を行うことより、アセチルコリンの分泌が促進されます。また、脳内の血流が良くなり、神経細胞の血液不足による死滅が軽減されます。

高齢者の方はもちろんですが、若い人であってもアセチルコリンの分泌の効果はあるので、45分~60分の軽い有酸素運動を週に2回以上を行うのがおすすめです。

アセチルコリンの原料であるレシチンを含む食材は?

アセチルコリンはレシチンという物質から生成されます。レシチンは卵黄と大豆に多く含まれており、その他にも玄米やレバー、ナッツにも含まれています。

普段から和食を取り入れている人は不足することはありませんが、食が偏っている人は意識的に卵や大豆製品を食べた方がいいかもしれません。

また、レシチンはアセチルコリンの原料となる以外に「乳化作用」をもっています。

乳化作用とは脂を溶かす作用であり、血管に付着したコレステロールの塊を分解することにより、血管のつまりを解消したり、脂肪肝といった生活習慣病を予防する効果もあります。

さいごに

アセチルコリンは脳の学習機能に影響を与える物質で、仕事や勉強の生産性に大きく関わってくると思います。

僕自身はアセチルコリンを十分に分泌させるために、「仕事中に適度に休憩を挟む」、「運動を定期的に行う」、「十分な睡眠をとる」、「瞑想」といったことを意識的に取り入れています。

特に瞑想は集中力を上げるのに、非常に効果的なので、また今度その効果ややり方について詳しく紹介したいなと思います。

また、日々の情報のインプットもとても大切だと思います。スティーブジョブスが「一見に関係なさそうな点と点が、後から振り返ってみると点同士が繋がって新しい発見を生むことがある」と言ったように、インプットする時点はわからなくても、後からそれらが繋がって新しいアイデアとなるといった経験は確かにあります。

アセチルコリンについて理解して、日々の仕事のアウトプットを向上させることができれば幸いです。

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