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とらつぐみ(鵺)
2022年4月10日 18:20
金曜日の夜10時。唐津香苗は重い足どりで自宅マンションに帰ると、5階の角にある一室の玄関ドアを開ける。その音で、玄関の橙色のライトがほわん、と柔らかく灯った。『おかえりなさい』隣人に配慮してボリュームが絞られた声が香苗を出迎える。「……ただいま、ウタ」彼女は玄関で黒のパンプスを脱ぎ散らかすと、薄手のコートをハンガーにかけた。スーツのジャケットは脱ぎ捨てて、洗濯機の中へ。