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おいしいもの(短編小説集)

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食べ物が出てくる短編小説をまとめました。
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2022年4月の記事一覧

夜更けの甘長とうがらし(小説)

夜更けの甘長とうがらし(小説)

金曜日の夜10時。

唐津香苗は重い足どりで自宅マンションに帰ると、5階の角にある一室の玄関ドアを開ける。

その音で、玄関の橙色のライトがほわん、と柔らかく灯った。

『おかえりなさい』

隣人に配慮してボリュームが絞られた声が香苗を出迎える。

「……ただいま、ウタ」

彼女は玄関で黒のパンプスを脱ぎ散らかすと、薄手のコートをハンガーにかけた。スーツのジャケットは脱ぎ捨てて、洗濯機の中へ。

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