令和3年度労働行政運営方針派遣事業に係る重点施策

 ■「令和3年度地方労働行政運営方針」策定の目的

 厚生労働省は、2021年4月1日付けで「令和3年度地方労働行政運営方針」を策定しました。各都道府県労働局は、この運営方針を踏まえつつ、各局の管内事情に即した重点課題や対応方針などを盛り込んだ行政運営方針を策定し、計画的な行政運営を図ることとしています。

 「令和3年度地方労働行政運営方針」の概要は以下のとおりです。

 1.ウィズ・ポストコロナ時代の雇用機会の確保
 2.ウィズコロナ時代に対応した労働環境の整備、生産性向上の推進

 労働者派遣事業においては、コロナ禍で、派遣労働者の雇用安定が重点施策にあげられています。具体的には、以下の課題が示されています。

 <課題>
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う労働者派遣契約の中途解除や不更新が生ずる中、派遣労働者の雇用の確保を図るとともに、労働者派遣事業の適切な運営を確保する必要がある。

 ■課題から判断する行政の対応(派遣事業への期待と不信)

 総務省が5月14日に発表した2021年1~3月の失業者は、214万人で前年度期に比べ31万人増えています。そのうち、「希望する職種・内容の仕事がない」と答えた人は64万人と30%、2019年の20%代後半から増えています。新型コロナウイルスの感染拡大が長引く中、雇用調整助成金の活用といった短期的な失業抑止のための助成制度から、労働移動を促す仕組みへの転換が求められていますが、雇用のミスマッチも多く見受けられています。そんな中、民間の需給調整機関に当たる人材派遣事業者への期待は高くなっています。

 人材派遣事業者には、労働者派遣法で1年以上雇用している派遣社員に対して雇用安定措置が課されています。雇用安定措置には、「派遣先への直接雇用の申込み」や「新たな就業場所の確保」などがあります。この義務を果たすことができれば、失業することなく、派遣スタッフは働き続けることができるのですが、中小派遣会社の中には、派遣先から、労働者派遣契約を終了されると、雇用安定措置を講じずに、中途解約(解雇)や契約期間満了による雇止めをするところも少なくありません。

 そのため、4月1日から施行規則を改正し、雇用安定措置を講ずるにあたり、該当する派遣スタッフの希望する措置の内容を聴取し、派遣元管理台帳にその内容を記載することを義務付けました。これにより、都道府県労働局が、定期指導を行う際に、派遣元管理台帳をチェックすることで、履行していない派遣事業者を把握しやすくなったのです。当然、希望を聴取していない場合は、是正指導が行われます。

 また、派遣労働者相談窓口に労働者派遣契約の中途解除等の相談が寄せられた場合も、定期指導を行い、必要に応じて是正指導等を行うことを徹底することが明らかにされています。

 ■定期指導で是正指導(文書指導)される割合が多いのはどんな書類?

 1.文書指導される割合

 厚生労働省が発表した資料によると、令和元年度の派遣元事業主指導監督件数は11,614件。うち、文書指導実施件数は、6,140件と約53%の派遣元事業所が是正指導を受けています。また、派遣先指導監督件数は、2,148件。うち、文書指導件数は、1,560件と約73%の派遣先が是正指導を受けています。派遣先にも調査が行われることについては、派遣会社側も十分注意しなければなりません。

 自社に調査が入らないからといって、対策を講じておかないと、派遣先が是正指導される恐れがあるのです。あとで、説明しますが、例えば派遣会社が作成した契約書を使ったにもかかわらず、労働者派遣契約の内容に不備があるとして、是正指導されたのであれば、派遣元への信頼を失い、取引継続を拒むかもしれません。

 2.文書指導される内容(法令違反別上位5位)

 (1)派遣元事業主の法令内容別違反状況
  ①派遣労働者に対する就業条件等の明示(法第34条)
  ②派遣元管理台帳(法第37条第1項)
  ③労働者派遣契約締結の際の記載事項(法第26条第1項)
  ④派遣先への通知(法第35条)
  ⑤マージン率等の提供(法第23条第5項)

 (2)派遣先の法令違反別条状況
  ①派遣先管理台帳(法第42条)
  ②労働者派遣契約の記載事項(法第26条第1項)
  ③抵触日の通知(法第26条第5項)
  ④労働者派遣契約締結の際の記載事項(法第26条第1項)
  ⑤派遣受入期間の設定(法第40条の2第3項)

 定期指導では、派遣元・派遣先管理台帳を中心に各種契約書がチェックされます。特に労働者派遣契約は、派遣労働者を保護するために、法第26条第1項で記載要件が定められています。また派遣元管理台帳では、教育訓練の実施状況や実施した雇用安定措置の内容が記載されているかどうかチェックされます。

 また、2012年4月1日から雇用安定措置の希望聴取の内容について派遣元管理台帳に記載することが義務化されました。派遣会社は、雇用安定措置を講じる体制を再構築しなければ、法令違反を指摘されることになるでしょう。さらに、同じく4月1日からは、マージン率等のインターネットでの提供が必要となります。

 ■契約書は派遣元をトラブルから守るもの

 契約とは、お互いの「約束事」のことです。契約は、口頭でも成立しますが、言った言わないで後々トラブルの種になります。そこで、契約書を作成して、お互い合意した事項についてどんなことを合意したのかを書面に記載することで、トラブルを防ぐことになるのです。

 労働者派遣契約や雇用契約については、前述のように法律で記載項目が定められている法定要件といわれるものがあります。それは、あくまでも法律を遵守するためのものですが、それ以外にお互いに取り決めておきたい内容が必ずあるはずです。労働局が公開しているひな型どおりに契約書を作成しても、自社を守ることにならない理由は、そこにあるのです。

 例えば、雇用契約書の中に「就業規則による」という文言を入れていることが多いと思います。ところが、派遣労働者が就業規則をいつでも閲覧できる派遣会社は、意外と少ないのです。確認できなければトラブルになります。トラブルを未然に防止するためには、重要な点について雇用契約書に記載しておくほうが良いのです。

 ■契約書診断サービスのご案内

 契約書の内容に不安を感じられる方は、まず契約書を、匠ソリューションズにお送りください。問題があるかないか診断させて頂きます。

 診断報告書の作成までは、無料で行っています。是正指導の確率が高い場合は、診断結果を踏まえ、具体的な改善点と改善方法について、コンサルティングさせていただきます。

 無料で診断する契約書は、①労働者派遣契約書、②派遣先への通知、③労働条件通知(兼)就業条件明示書、⑤派遣元管理台帳、⑥派遣先管理台帳、の5点(1パターン)とさせていただきます。

 「契約書診断コンサルティング」では、不備のある箇所を、具体的にどのように修正すればよいかご指導させていただきます。契約書内容にご不安をお持ちの方は、まずは、契約書診断をご活用ください。

 <<契約書診断コンサルティング費用(税込)>>
 一般:1回 49,500円(税込)  BP会会員:1回 38,500円(税込)
 ※ 修正内容を具体的に記した「診断レポート」をメールにてお送りします。
 ※ 訪問による説明が必要な場合は、別途訪問時基本料金と交通費が必要となります。

 別途お見積もりさせていただきます。

 ◆オプション:「労働者派遣基本契約書診断」

 契約書診断コンサルティングのオプションとして労働者派遣基本契約書の診断を行っています。ご希望の方は、契約書診断コンサルティングにあわせてご利用ください。

 費用(税込):一般16,500円  BP会会員11,000円

 ☆秘密保持について

 ・お預かりした契約書は、契約内容のチェックの目的としてのみ使用します。
 ・知りえた情報については善良なる管理者の注意をもってその情報を管理・保持します。
 ・お預かりした契約書については、事前の承諾なく複写することはありません。

 ■内勤社員のスキルアップのためにビジネスパートナーの会入会をお勧めします!

 ビジネスパートナーの会にご入会いただくと、会員特典として、毎月、派遣先に提供する情報誌「パートナーニュース」と社員研修「オーディオセミナー」をお届けしています。

 「ビジネスパートナーの会では、派遣に係る情報提供に加え、皆様からのご質問(原則メール)にもお答えしています。また、匠ソリューションズが主催するセミナー受講費用も会員価格でご提供させていただくなど各種の特典をご用意しています。

 派遣先向け情報誌「パートナーニュース」は、派遣先からも好評で、毎月楽しみにしている担当者が多いことも特徴ですが、派遣会社の社員の皆様の情報源としてもご活用していただいています。

 ビジネスパートナーの会については、以下をご覧ください。
 ⇒ http://www.takumi-sol.com/bp/

 ご希望の研修について、ご不明な点がありましたらご連絡ください。詳しい資料もご用意しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
 ⇒ http://www.takumi-sol.com/cons/c5.html