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スタートアップ・デットファンドを設立しました。

 

はじめに、自己紹介

本日2022年5月24日、日本初の独立系スタートアップ向けデットファンド(スタートアップ・デットファンド1号投資事業1号、以下「本ファンド」)の設立を発表しました。運営を担うSDFキャピタル株式会社の代表を務めている福田と申します。設立にあたってご支援・ご協力いただいた皆様に、心より感謝申し上げます。

本ファンドの詳細はぜひプレスリリース をご覧いただければと思いますが、リリースには書ききれなかった設立への想いや経緯なども、せっかくだからまとめておいたら?と関係各所よりアドバイスをいただいたため、常は筆不精な身ですが感謝の気持ちも込めてnoteを書かせていただきます。

まずは、「福田?誰?」と思われる方も多いと思いますので、簡単に自己紹介を。

キャリアのスタートは2004年、UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行し、様々な融資案件に携わりました。その後は複数の再生ファンドでキャリアを積み、2014年にトパーズ・キャピタル株式会社に入社しました。振り返ればこのトパーズ・キャピタルへの入社が、本ファンド設立への大きなきっかけでした。

スタートアップ・デットファンドとは何か

設立経緯をお話しする前に、まずは本ファンドがどのようなものかを説明したいと思います。

一般的に投資ファンドとは、複数の投資家から資金を集め、その運用益を分配する仕組みを言います。運用手段として最もイメージしやすいのはエクイティー(株式)投資ですが、本ファンドは「デット(貸付)」を中心に投融資を行います。さらに、投融資対象となるのは主に「未上場のスタートアップ」です。

スタートアップにエクイティー投資するファンドは多くありますが、現在、日本国内でデットを供給しているファンドは非常に少ないです。本ファンド以外だと、私の前職トパーズ・キャピタル、そして一部銀行傘下のファンドが行っている以外はほとんど耳にしません。

スタートアップ・デットファンド構想のきっかけ

ではなぜ、日本で少ないデットファンドでスタートアップ向けに投融資を行うのか。その理由はトパーズ・キャピタル時代にありました。

トパーズ・キャピタルでは主に再生企業へのブリッジファイナンス、不動産・太陽光のアセットファイナンス、あとはLBO等向けのメザニンファイナンス等を行っていました。しかし様々な案件に触れるうち、スタートアップからの融資ニーズが多くなっていることに気がつきました。

私が2014年に携わったYCP Holdings(当時:ヤマトキャピタルパートナーズ)への融資案件もその1つです。YCP Holdingsは、コンサルティング事業中心にいくつかの事業を立ち上げあるいはM&Aを行っていました。代表の石田さん中心に大変優秀なメンバーで構成されており、コンサルティング事業は既に収益化していました。しかし「M&Aで買収するお金の調達ができない、トパーズ・キャピタルでどうにか貸してくれないか」という相談を受けたのです。

一般的に、買収資金を使途とするファイナンスはLBOファイナンスと呼ばれ、数十億規模以上の買収はメガバンクを中心に専門部署が対応しています。しかし、数億レベルではなかなか担い手がいないのが実情です。当時のYCP Holdingsはまだスタートアップでしたので、その点でも難しかったのでしょう。
だからこそ、ここは独立系プレイヤーが担うべき分野だと感じ、様々な議論を重ねながら融資を実行させてもらいました。今でも忘れない、私にとって記念すべき案件です。

トパーズ時代、唯一作ったツームストンは今でもYCPオフィスに飾っていただいているそうです。嬉しい…

その後も、多数の融資案件に携わりましたが、接したスタートアップからは同じような言葉が出てきます。

・ 急成長しており金融機関の審査が資金ニーズに追いつかない
・ 特殊な資金使途(M&A等)を計画している
・ 一時的もしくは季節性の資金需要がある
・ エクイティー調達ではダイリューション(希薄化)が懸念点だ

ベンチャーキャピタル(VC)等によるエクイティーではダイリューションが発生してしまう、かといって既存の金融機関からの借入にはまだ手が届かない。そんな既存プレイヤーの間に落ちてしまっているような融資ニーズを拾い上げたいという思いが、日に日に強くなっていました。

さらにここ数年、プライベートでもスタートアップに携わる友人が増え、彼らからも様々な業界ニーズを聞くようになりました。特に定期的に開催している意見交換会(飲み会)のメンバーは、スマートニュース松本さん、SmartHR玉木さん、ESネクスト監査法人藤岡さん、さらにこの出会いが運命とも言うべき(笑)、マネーフォワード金坂さんです。彼らからも、業界の課題として上述したような「デットニーズ」の話を聞くようになりました。個社要因だけではない、スタートアップ業界は確かにデットを欲している、仮説はどんどん確信に変わっていきました。

スマートニュース松本さん、SmartHR玉木さんといつもの店で

「自分達で立ち上げないと!」

とはいえ、当時在籍していたトパーズ・キャピタルが行っているのはスタートアップ専用のファンドではありません。金額、金利、担保等の考え方がマッチしないことが多く、このままではスタートアップからのニーズに応えられないという焦りのような気持ちが募るばかりでした。

そのような日々で突然、何の前触れもなく突然思いつきました。「あ!会社辞めよう!自分でファンド作ろう!」と。2020年夏のことです。

まず電話したのは金坂さんです。これまで様々な意見交換をし、会えば「いつかは一緒にやりましょう」と言っていたので話は早かったです。金坂さんなりのスタートアップ・デットファンドの考え方やリサーチ結果をまとめてもらい、関係者の紹介いただくなど色々な動きが始まりました。

そして2021年夏頃に出会ったのがWARC石倉さんです。懇意にしている弁護士先生より紹介を受け、オンラインで会話したのが最初でした。会話した瞬間から意気投合したことははっきりと覚えてます。WARCでは多数のスタートアップの管理業務を受託しているが、悩みのかなりの部分がファイナンスであり、デットのことだと。WARCも自前でデットをやりたいが融資はプロではないので、プロの人材を探していると。

ここに役者が揃いました。あとは立ち上げるだけ。

SDFキャピタル誕生!

こうして2021年11月にスタートアップ・デットファンドを担うSDFキャピタル株式会社を設立しました。シンプル・イズ・ザ・ベストな社名、気に入ってます。

株主は私、マネーフォワードシンカ(マネーフォワードの100%子会社)、WARCの3社です。マネーフォワードシンカからは光井さん、WARCからは石倉さんが社外取締役として就任いただけました。投資家へのコネクション・スタートアップ業界の人脈・エクイティーサイドの見立て・ファンドのバックオフィスをマネーフォワードシンカとWARCが、ファンド運営経験・デット業務全般を私が担う、そのような役割分担です。

2022年に入ってから本格的にファンド立ち上げを開始し、様々なご縁をいただきながら、今日の発表に至りました。大変お世話になりながら今回お名前を紹介できなかった方々も多くいます。皆様への感謝の気持ちと共に、立ち上がったスタートアップ・デットファンドに全力で取り組んでいきたいと思っています。

本ファンドを機にスタートアップ業界でデットファイナンスの活用が進み、業界全般ひいては日本経済の発展にわずかながらも寄与できれば幸いです。

本件のお問い合わせ:info@sdfcap.jp

左から、金坂さん、私、石倉さん。冒頭の写真撮影時に光井さんがコッソリ撮ってくれました。
しかし3人ともデカいなぁ…



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