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本を短時間で効率よく、かつ深く読む方法 『東大理Ⅲスピード読書術』書評

佐々木京聖さんの著書『東大理Ⅲスピード読書術』を読んだ。

佐々木さんは現役の東大生でありながら、塾講師、家庭教師、執筆活動などをこなし、野球部にも所属する。そんな超多忙な中でも、本を週2冊以上は読破しているという。


本書の結論は、次の一言に要約されている。

「要点以外は、読まなくてもいいからすっ飛ばせ!」

読むべき部分(要点)と読まなくていい部分を見極め、要点のみをつなぎ合わせて読んでいく、ということである。
1冊の本には、10万字の文字がつまっている。そのすべてを読むのではなく、著者が伝えたいこと(要点)を選び出して読む、そうすれば短時間で効率よく、かつ深く読むことが可能になる。

「かつ深く」というところがポイントだ。
短時間で読めて、しかも内容を忘れない読書こそが、私が身につけたい方法である。
本書から学んだ3つのポイントをアウトプットしておく。

文章の構造を知る

そもそも、文章や本がなぜ存在しているのだろうか。佐々木さんは次のように言う。

それは、書き手(著者)がその文章を通して、読み手に伝えたいメッセージがあるからです。

「読み手に伝えたいメッセージ」、それが主題であり、要点である。
ただ、主題のみをストレートに表現しても、読み手を納得させることは難しい。なぜその主題を主張できるかの理由やそれを裏付ける事例、比喩などを組み合わせて論は展開されている。
まず、そういった文章の構造を先に知っておくことが大切で、構造が分かれば10万字の中から主題を簡単に見つけ出せるという。
文章の構造は以下の6つの要素から成り立っている。

結論:主題に対しての著者の最終的な主張
理由:結論に至った理由
例 :結論を裏付ける事実
権威:「ジョンズ・ホプキンス大学によると」などといった引用
数値:「世界の約3000万人がコロナウイルスに感染した」等の具体的な数値
比喩:「ペストが猛威をふるった暗黒の中世の再来である」といったたとえ

この6つの要素のうち、結論に「著者が本当に伝えたい」内容が含まれる。他の5つは結論を裏付けるための補足でしかない。つまり、結論以外は積極的に読み飛ばしていい部分ということになる。

具体的に言うと、「たとえば」「~のような」「~によると」などの表現が含まれた文には、著者が本当に伝えたい内容が含まれていない。時間がないときは、これらの文を読み飛ばしたとしても、迷子になることはない。

もう一つ注目すべきなのは、文中に登場する頻度
繰り返し登場する表現・内容こそが、書き手が文章を通じて伝えたいメッセージであり、そこをとらえれば、著者の言わんとする主題をつかんだことになる。

私はこれまで、「6つの構造」を意識したことがなかったので、「主題」と「読み飛ばしていい部分」との区別がつかず、漫然と読み進めてしまうことが多々あった。
「構造」を知り、「頻度」に注目することで、一冊のコアな部分にあたりをつけやすくなるだろう。読解力の精度を上げていきたい。

論構造から主題を見つけ出す

ビジネス書などの説明形式の文章(論)には、よく使われる構造がある。
佐々木さんは、多くの論はジャンルを超えて次の3つの構造に帰着すると述べている。

型1 サンドイッチ型‥結論+説明+結論
型2 謎解き型‥課題提議+分析+結論
型3 誘惑型‥具体例+一般化+結論

この3つの型の構造は、スタートとゴールの設定の仕方によって分けられる。したがって、まずは本のスタートとゴールを読み、3つの型のどれにあてはまるかを確かめることで、文章理解を速く、正確にすることができるのだという。3つの型をそれぞれ見ていこう。

型1 結論から始める「サンドイッチ型」
スタート:著者が伝えたい要点
ゴール :著者が伝えたい要点
スタートとゴールに結論(主題)が書かれているパターン。
中盤には何が書かれているのかというと、結論をわかりやすく説明するための具体例やたとえ話、著者の体験談など。著者が最後にもう一度結論を提示することで、論の一貫性を保ちながら説得力を持たせることができる。主題だけを知りたい場合、サンドイッチ型ならば文章の中盤を読む必要はない。読むのであれば、そこに書かれているのは主題ではなく、結論をよりわかりやすく説明するための材料なのだと意識して読むといいとのこと。


型2 まず課題を提起する「謎解き型」
スタート:著者が解決したい疑問(課題)
ゴール :疑問に対する回答
文章の冒頭に「☓☓とは?」と疑問(課題)を提示して、読み進めるにつれてその答えが明らかになっていくパターン。結論は文章の最後に書かれている。
この型は言ってみればミステリー劇場。序盤で事件が起き、ドラマの中盤で様々な証拠が現れ、最後に「この人が犯人だったのか」となる。
佐々木さんは、ミステリー劇場を「古畑任三郎型」に書き換えてしまうことを勧めている。犯人(結論)を先に知っておくことで、安心して読み進むことができ、中盤についての考察をより精密に行うことができるというメリットもある。


型3 具体例から始める「誘惑型」
スタート:著者の体験、具体例、引用など
ゴール :スタートのエピソードから得られる結論
誘惑型は具体例や書き手の体験談、引用などで始まるため、ゴールの結論を理解しても、スタートとどのようなつながりがあるのかがわかりにくい。
ではどうすればいいかというと、接続詞のあとに注目すること。
それまで体験談が書かれていたのに、いきなり「〇〇とは~」と抽象度が上がることがある。そこに注目することで主題にかかわる言葉をつかむ。
言わば宝探しの感覚で、結論と合致する要点をつかんでいく。

この3つの型では、「誘惑型」はやや難易度が高いだろうか。ただ、「サンドイッチ型」「謎解き型」は比較的主題を探しやすいだろう。
「はじめに」と「おわりに」を先に読み、結論をつかむという方法は、他の読書術の本でも推奨されているが、3つの型があるというのはこの本ではじめて知った。


10万文字を200字にまとめる3ステップ要約術

最後に要約について。
なぜわざわざ要約しておく必要があるのか、佐々木さんは3つの理由を挙げている。

ひとつ目は、文章を本当に理解できているかを知るためです。
二つ目は、読了後に時間が経ってからでも、内容を短時間で把握できるようにしておくためです。
三つ目は、記憶した情報を様々な状況下で活用するためです。


要約した内容を記憶にとどめ、生きた知識として活用することで一冊を読んだ価値がはじめて出てくるということである。
本書では、要約は三段階にわたって行い、最終的に一冊を二〇〇字にまとめるのを目標にしている。その3つのステップの中から重要な部分を抜粋してみる。

Step1  セクションごとの要約(各20~30字)
・ひとつのセクションを読み終えるたびに、そこに何が書かれていたか20字から30字でまとめる。
・見出しや最終段落から抜き出すのでもOK。
・すべてのセクションを要約する必要はなく、自分にとって必要だったセクションを中心に要約すれば良い。
Step2  章ごとにまとめる(各150字)
・Step1で各セクションの要約をつなげる作業。単純につなげれば300~600字程になるが、これをさらに150字に圧縮する。
・注意点は、セクションの登場順につなげるのではなく、各セクションが章全体でどのように関わり合っているのかを考えて、まとめ直す。
・はじめて知った知識や「これは勉強になる部分だ」というセクションを中心に圧縮をかける。
Step3  本全体をまとめる(200字)
・セクションの要約を章ごとの要約にまとめた際と同じように、つなぎ合わせて全体を200字にまとめる。
・著者が何を伝えたかったのか、また、自分がどんな知識を新しく得たかを効率的に振り返ることができる。
・作った200字の要約は、読書ノートにまとめておくことで、より記憶に残りやすくなる。

いきなり10万文字を200字にまとめるのは難しい。ただ、段階を踏んでいくことで難易度は下がるだろう。そして、計3回まとめる作業をすることで、本の内容がより記憶に残りやすくなるというメリットもある。

私はこれまで、「要約」を面倒くさいと感じることが少なくなかった。もちろん要約が大切であることは重々承知している。
本書を読み、どうすればこの面倒くささを軽減できるかと考えてみた。
ポイントは3つある。

第一に、効率的な要約の方法を知るということ。
まず本書で紹介されている3ステップの方法を実践するなどして、やりやすい方法を体得していくことが大事だろう。ステップを踏む、文章の最終段落や見出しに注目するなど、コアな部分をつかむ方法を知る。
第二に、要約のメリットを体感するということ
本の内容を効率的に覚えられる、アウトプットにつなげられる、SNSに投稿して反響を得られる、仕事に生かせるなど、要約のメリットを体感し、成功体験を積み上げていくことで、モチベーションが上げていく。
第三に、常日頃から要約を意識するということ
私の職種でいうと、会議録を書く、ケースの内容を同僚にわかりやすく伝えるなどといったことを毎日のようにやっている。いかに短く深く書けるか、伝えられるか、と日頃から鍛錬することで「要約」をルーティン化させてしまう。

以上3つを私自身のアクションプランとして実行していきたい。


まとめ

・文章の構造は、「結論」「理由」「例」「権威」「数値」「比喩」の6つの要素から成り立っている。
・6つの要素のうち、「結論」に著者が本当に伝えたい内容が含まれており、他の5つは積極的に読み飛ばしていい部分である。
・繰り返し文中に登場する表現・内容こそが、書き手が伝えたいメッセージであり、そこをとらえることで、主題をつかむことができる。

・説明形式の文章には3つの構造がある。
①サンドイッチ型‥結論+説明+結論
②謎解き型‥課題提議+分析+結論
③誘惑型‥具体例+一般化+結論
・サンドイッチ型は、スタートとゴールを読むことで主題をつかめる。
・謎解き型は、疑問からはじまり、最後に結論がくるミステリー劇場型。「古畑任三郎型」に書き換えることで、効率的に読める。
・誘惑型は、エピソードなどから始まり、結論とのつながりがつかみにくい。接続詞に注目して、結論と合致する要点をつかむ。

・10万字を200字にまとめる3ステップ要約術。
①セクションごとの要約(各20~30字)
・ひとつのセクションを読み終えるたびに、そこに何が書かれていたか20字から30字でまとめる。見出しや最終段落から抜き出すのでもOK。
②章ごとにまとめる(各150字)
・Step1で各セクションの要約をつなげる作業。単純につなげれば300~600字程になるが、これをさらに150字に圧縮する。
③本全体をまとめる(200字)
・全体を200字にまとめることで、著者が何を伝えたかったのか、また、自分がどんな知識を新しく得たかを効率的に振り返ることができる。
・作った200字の要約は、読書ノートにまとめておくことで、より記憶に残りやすくなる。

最後に。
本書から効率的な読書の方法を学ぶことができた。
文章の構造や型を知ることで、読むべき部分と読み飛ばしてもいい部分が理論的にわかったことが大きい。
そして、個人的には「要約」に悩みがあったが、ステップごとに要約する方法は試してみたいし、そこから自分自身の気づきも得られた。学んだことを実践していきたい。



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