遺伝子工学による移植医学の進歩への期待

無題

酵素α1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼは、α1,3-ガラクトース(α-1,3Gal)エピトープを合成します。これは、ブタからヒトへの異種移植で超急性拒絶反応を引き起こす主要な異種抗原です。α-1.3GTを持つバクテリアの感染により、ヒトは、抗α-1.3GT抗体を獲得します。ブタの臓器からα-1,3Galを完全に除去することは、ブタの臓器をヒトへ移植する異種間移植の成功に向けた重要なステップです。2003年1月17日、フェルプス博士らは、Science誌に、3回の連続したクローン作成によって生産された健康なα-1,3GTダブルノックアウト雌子ブタが、ヒトへ移植するためのより安全な臓器を作る可能性があると報告しました。

2021年11月1日、ドルギン博士は、ニューヨーク大学で行われた異種間移植研究によって、人間の免疫システムが、人間の免疫システムを狂乱に陥れる糖分子であるα-1,3Galを欠くようにされた遺伝子改変ブタの臓器を直ぐには拒絶しないことが示されたことをScience誌で報告しました。ヒトに移植された遺伝子改変ブタの腎臓は、血液から老廃物をろ過し、少なくとも54時間尿を生成しました。

最初の基礎研究の報告から、約19年後に、ヒトへの異種間移植の臨床研究が行われ、大きな進歩が報告されました。今後の移植医療への進歩に期待したいです。

α-1,3Galは、細菌をはじめ多くの生物に発現しています。しかし、霊長類であるホモサピエンス(ヒト)には、α-1,3Galは、発現してません。なので、乳幼児の際、何かしらの細菌に感染すると、ヒトの免疫機能は、α-1,3Galを異物として認識して、抗α-1,3Gal抗体を産生します。なので、α-1,3Galを発現しているブタやチンパンジーなどの臓器をヒトに移植すると、ヒトの免疫である抗α-1,3Gal抗体が直ぐに移植臓器に反応し、急性拒絶反応が生じてしまいます。

がん医療/新興感染症専門ドクター                                               New Engl J Med. published at Jan 06, 2022 by 京都@takumaH

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