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瞑想と自然のある暮らし。まんがら農園野満さんの考える百姓観とは。

2004年に、夫婦で愛媛に移住して農的暮らしをしようと決めた。大阪に住みながら、自然農法のパイオニアである川口由一氏の赤目自然農塾に通って農を学んだのちに、西日本を縦断して有機農家を訪ねながら終の住処を探す旅に出て、ここ愛媛に腰を下ろした。

「ほんと、今のたっくん(岩本)と同じような感じよね。笑」
そう微笑む野満さんは、2017年現在小学5年生と2年生の息子を抱えながら、今春から心理学を学ぶために大学院に通い始めた。生活を支える妻の理恵さんは自身でイベントを主催したり、家族でまんがら農園の可能性の幅を広げている。

この地で畑をするにあたって、土質を徹底的に分析。どの肥料分が足りないか土壌ph値とにらめっこする日々が続き、たどり着いたのが1平米あたり米ぬか1キロを混ぜ込む“まんがら農法”。畑の状態によっては肥料の量を調整するが、基本的に不耕起草生栽培を軸として自然に寄り添って栽培している。

ヴィパサナー瞑想のある農的暮らし。

ヴィパサナー瞑想とは「ものごとをありのままに見る」という意味の、インドで最も古い瞑想法のひとつ。
夫婦揃って京都にて10日間の瞑想体験を経たのちに、そこで学んだ原始仏教の考えに基づいて農のある暮らしを送っている。元々、仏教徒であった育郎さんは、その教えの中で自身を高めるために”あるがままの自分”を自然の中で見つめなおし、この暮らしの中でいかに自然と共生していけるかどうかを考えている。

農とは、暮らしそのもの。

移住が決まってから、自宅も左官屋と地元の素材を使って一緒に作り上げた。手作りの風呂では、屋根の上にあるタンクの水を太陽熱で沸かしている。これがパーマカルチャーと言われる、日本で昔から伝わってきた暮らしだそう。
「農業」というと、水耕栽培や単一化されたプランテーションといった自然栽培とは対極にあるような産業も含まれてしまう。ただの商売ではなく、農とは個人の思想・哲学価値観を含むもので、農法を通して田畑が日々の暮らしの映し鏡となるのだ、と育朗さんは静かに声を張る。

瞑想を通して、自分自身と、また自然と向き合うことで日々の行いは徳となって還ってくることを彼らは知っていた。

「野菜は人を喜ばせるものだよ」と語る野満さんの顔は明るい。無農薬・無化学肥料でこだわって育てた野菜が、それを求める方のもとに届く。それを料理して食べる人が喜んで、自然に還ってくる。
それが畑に恵となって戻って来て、虫にやられて実りの悪いものは、土の世界に巡らせる。

仏教観の“輪廻”に基づいたこの考え方は、消費者が自然栽培に理解があることが前提となるため、野満さんは万人に広がるよう少し意識のある方にとってお求めやすい価格で野菜やお米を販売している。

瞑想のある生活を通して、自分自身とまた自然と向き合うことで日々の行いは徳となって還ってくる。

それが百姓としての彼の考えだった。


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