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【要約・感想】100億人-私達は何を食べるのか?

買い物は、投票である。

映画「100億人-私達は何を食べるのか?

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フードドキュメンタリーが好きなたくまです。今回観た映画は「100億人-私達は何を食べるのか?」(原題:10 billion What’s on your plat)」

1.あらすじ

この映画は、世界人口が100億人に届いたときの食糧事情を、バイオ企業から極小規模の農家までインタビューして、考えていく映画。考えていくというか、視聴者に考えさせてくる映画です。

100億人を養うことができるか。

FAOの公開資料を雑に要約すると、「いまの食糧生産システムを続けていると、環境が保たなくなるから無理があるよ」という結論になります。これは侃々諤々の議論が続いているトピックです。最近では、その解決のためにバイオベンチャー、アグリテックなどの台頭が盛んに見受けられるようになりましたが、この作品ではそれにちょっと待ったをかけています。

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監督は、Valentin Thurn氏。1963年ドイツに生まれて、2003年には映像制作を行うThurn film productionを設立し、主に食分野の社会問題を扱う作家、映像ディレクターとして活躍されています。過去作の、フードロス に迫ったドキュメンタリー「もったいない!(原題:Taste the waste!)」は、5カ国語に翻訳されて公開されています。また、ドイツではもったいない食材を共有するコミュニティ「foodsharing」の運営も務めていたり。ただ、ヨーロッパで広がる「TOOGOODTOGO」のようなベンチャー感あるものではなく、非営利・広告なし・オープン化の相互扶助モデルみたいです。彼の思想が表れています。

そのため、本作自体が中立な立場のように見えて、伝統的な生産システムがいかに重要かを説いているように映っています。

2.本作における対比構造

大手バイオ企業は、農家の収量UPのためによりはやく育ち、多く稔らせる品種をつくり、それに合う肥料、農薬をセットで販売します。しかし、現地で頻発する洪水に耐えることはできません。

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そのため現地の農家は、長年その土地で育ってきた固定種を使うことを選択します。交配種より遅く育っても、収穫量が0になるよりことは避けられまし、なにより農薬と肥料を抑えることは、農家自体の健康にも繋がるのです。

無機肥料の素になるチッソ・リン酸・カリウムは、作物が育つための必須栄養分です。作中で紹介される鉱山掘削業者は、「農業の生産性を上げる」ための採掘は、今後3-40年は需要があると見込まれています。

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その一方、緑肥(クローバー、ソルゴetc..)に頼る有機農家にとってそれらは不必要なもの。彼の主張は、外部資源に頼らない農法こそが持続的だ、というもの。

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地域の農家と協力して休耕地に家畜を放って畑を肥したりと、最小限のコストでまわる仕組み。

「面積あたりの収穫量は、小規模農家の方が大規模農家より多い。なぜなら、彼らはその小さい畑に労力や資源を集中できるからだ。」

確かに、大きすぎると多少の値動きやロスに目を瞑る印象。

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本作では、このような対比が続いていきます。

大規模な養鶏工場、小規模な養鶏家。

ペルーの大規模な大豆生産者、マラウイの小農家。

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NYの先物取引市場と、CSA(前払い、顧客参加型農業)。

遺伝子組み換え養殖漁場、植物工場と、アクアポニックス施設と。

ただ、本作中では天の声が「これどうなん?」「あかんくない?」と語ってきたりします。それがまた主観が入っている意見なので、中立とは..?となってしまうのですが。。

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おわりに

本作のメッセージの一つとして、将来の食糧生産システムは、いまのあなたの食生活から成り立つ、ということが挙げられます。

同じことをフードインクでも述べましたが、持続可能な食糧生産となると「合理性を突き詰めた生産システムではなく、伝統的な、小規模かつ各運営体に裁量があるようなそれの方が、長い時間軸でみたときに合理的である」というもの。中央集権型か、自律分散型か。私たちの食事ひとつ、買い物ひとつがその選択になるのです。

買い物は、投票です。

この時期だと、まさに飲食業界の方、生産者の方も辛酸を舐めることもあると思いますが、この状況だからこそ気付けることもあるのではと思います。

農業についてつらつら書いているので、よかったら見ていってください。φ(・_・

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