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#7 自発性パラドックスの旅へ出よう

前回、最後に触れた「自発性パラドックス」について話をしてみる。

自発性パラドックスとは何か?

この言葉は金子郁容先生(←wiki閲覧はクリック)の「ボランティア-もう一つの情報社会-(岩波新書,1992)」で触れられている言葉だ。 今回は、金子(以下敬称略)が書いている引用をもとに、主体的に行動するからこそぶつかる壁やジレンマについて、金子はボランティアを次のように定義している。

 「ボランティアとは、困難な状況に立たされた人に遭遇したとき、自分とその人の問題を切り離して考えるのではなく、相互依存性のタペストリーを通じて、自分自身も広い意味ではその問題の一部として存在しているのだという、相手へのかかわり方を自ら選択する人である。表現をかえるなら、相互依存のタペストリーのなかで、「他人の問題」を切り取らない、傍観者でいない、ということである。」
 このようなボランティアは、「自発性パラドックス」に巻き込まれるという。ボランティアは、いわばやらなくてもよいことをやるのだから、そこには何の後ろ盾もない。「人が自発性に基づいて行動するとき、なにを、どのように、どこまでするか、原則としてすべて自分にかかってくる。自分で決めたことであるから、その妥当性を、上司の命令、組織の規則、社会の通念、契約上のとりきめといった、「外にある権威」によって正当化することは出来ないからである。」

 そこで、自分が自発的に行為をする結果、自分が苦しい立場に追い込まれることになる。これを金子は、「自発性パラドックス」と名づけた。
 自分が直接巻き込まれていない事象を「自分ごと」することによって、そこに主体的に関わるが、しかしながらそこには様々な制限があったり壁があったりし、結果として追い込まれることがあるということだ。

自発性パラドックスってどう考える?

 こういったことがあるのに、なぜ人はボランティアをするのか、という話に展開していくのだが、今日はここで出た「自発性パラドックス」の考え方について進めたい。(そこには様々な魅力や人を動かすものがあるということが触れられている)

そもそも、自発性パラドックスを感じている人がどれくらいいるのか?

自発性パラドックスをもっと広義に捉えて、「自分から主体的に動こうとすると、壁にぶつかったり批判されたり、自己矛盾が起きたりする」くらいに考えてみる。
これは、比較的日々の中に落ちていないか?感じていないか?

 これらを感じている人の特徴があると思う。
 当たり前かもしれないが、壁や自己矛盾にぶつかってでも乗り越えたい目標や夢を持っているか、ということだ。
これがある人は、どんなに自己の中でパラドックスが起きても乗り越えようと思うだろう。そして、実際にそういったことを乗り越えて、さらに次のことへと向かうエネルギーにしていっているはずだ。
 しかし、まずこういったことを感じていない人は、そもそも自身が壁にぶつかっていなかったり、自己矛盾を抱えていない人だろう。あったとしても自分ではどうしようもない他人のことや、外の事象を否定することによって、自分を守っている人か。SNSでもこういった投稿がみられる。

夢や目標を持って日々働けているか?

難しい、とすぐに諦めてしまっていないか?

自発性パラドックスをむしろ目指す

 恥ずかしながら、自分の関わる教育・福祉・医療の業界は、いろんな権威主義や安定志向の方が多く、簡単にいうと自発性パラドクスに陥るような行動を起こしているひとが圧倒的に少ないため、パーソナリティが未熟な人が多い。(言い過ぎていたらすみません) 
「決まりなんで」「それはちょっと無理かもしれない」「良いとは思うんですけどね」のような言葉をたくさん耳にする。

一歩外に出て、ビジネスを本気でやっている人にはそんな甘さはない。
真剣に良いものをwin-winで考えようとする人はたくさんいる。

もちろん教育・福祉・医療の業界にもいないとは言わないが、圧倒的にその数は少ない。

 これからこの業界を目指す学生や新卒の方には、もっともっと壁にぶつかり、それを乗り越えててでもこの業界を盛り上げたい、という気概を持ってもらわないと、この業界は「ただの良い人」がやる仕事ばかりになってしまう。何も大きな流れを考えずに毎日過ごしていいのか。それでは、目の前にいる支援すべき人の将来が危ういかもしれない。

 少子高齢化が進む中でも、一定数の割合で障がいのある方が生まれ、もちろん国は支援を充実する必要があるし、総合支援法の下に地方自治体らもそれを担う。しかし、その数は年々増えていく一方であり、結局何も体制や現場レベルの意識が変わらなければ、このまま毎年毎年、昨年度予算を超える金額を出し続ける国の体制を眺めているだけでいいのか。

 本来働く能力のある方が、福祉に依存せずに自分で稼いで税金を納めるようにする世の中にしなくてはいけない。
「当たり前」をこれまでの枠で考えてはいけない。一人一人個人の可能性や、企業を始めとする社会側の可能性はまだまだある。

難しいけど、挑戦する、やろうとするからまた壁にぶつかる。
でも、諦めないで、仲間を増やして、なんとか達成しよう

自発性パラドックスに自ら飛び込もう



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