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留学を中止しました。

3/21に留学を中止し、帰国しました。新型コロナウイルスの影響です。留学の備忘録として始めたブログなので、その終わりもまとめてみようと思います。

2020.03.10まで (スイス国内感染者475人)

新型コロナウイルスの影響はアジアだけでなくヨーロッパにも広がり、特に隣国のイタリアで拡大していました。春休みのイタリア旅行をスペイン旅行に切り替えるなど、影響は受けていたものの留学そのものに大きく影響するとは考えていませんでした。

2020.03.11 (スイス国内感染者612人)

東大から「状況がひどくなれば留学中止もありうる」との連絡がきたため、留学自体への影響を考え始めました。

とはいえ、別のスタジオでは模型を燃やす実験をしているなど、いつも通りの日常が続いていました。(日本だと文字通り炎上しそうですね...)

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2020.03.12 (スイス国内感染者814人)

いつも通りにスタジオ課題に取り組んでいると、突然夕方にメールが届きます。翌週から学期末まで、ETHのキャンパスが封鎖されるとのことです。これは私たちにとって、大きな問題でした。

スタジオでは手書きの図面、手作りの模型を作ります。しかし、すべてをアナログで作るわけではなく、CADデータやGoogle Earthの情報をもとにしているため、それらを印刷する/スキャンする複合機が使えなくなるのは大問題でした。また、スタジオという一つの場所で集まって話し合うことが難しくなるのも残念でした。これからどうしようか、と考える中で帰国という言葉が頭に浮かびました。

2020.3.13 (スイス国内感染者1007人)

帰国を真剣に検討し始めました。東大に確認したところ、4月からの復学が可能だと伝えられ、留年をせずに卒業ができそうだと考えたからです。でも、これまでのETHの学びはどうなるのだろうか。講義はすべてオンラインになるため、帰国しても問題ないはず。

問題はスタジオ課題でした。議論や発表はオンラインですることになっていましたが、グループ活動でコミュニケーションが不足するのは深刻です。ただでさえ英語で難しいのに、画面ごしで正確に理解し、伝えられるのだろうか。教授はこれまで通りに続ける、と言っていたがそんなことができるのだろうか。考えれば考えるほどストレスがたまり、効率も低下していました。

そんなとき、「食べ放題があるから来ない?」と誘われます。キャンパスが封鎖になるため、食堂の食材が余ってしまいます。それなら全部食べさせてしまえ、ということで格安ビュッフェ形式のランチメニューが急遽できたのです。ETHの食堂は、食堂とは思えないほどに値段が高いのですが、この日の昼食は一番価値のある食事だったと思いました。

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2020.3.14

スタジオの一人が母国へ帰国しました。当時多くの人は「早い」と思っていて、私も同感でしたが、それが正しいような気もしていました。それにつられて他の学生とも話しつつ、帰国した場合に必要となる手続きを書きだし始めました。

2020.3.15

スタジオが翌日から閉鎖されることをうけ、メンバーの一人のフラットを間借りして、仮設のスタジオが作られました。最後のキャンパスを回るのは少し寂しかったですが、仕方ないと割り切って、後にしました。

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仮説のスタジオとは言え、他のグループもそこで一緒に作業していたため、和気あいあいとしていてよかったです。

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2020.03.16 (スイス国内感染者1680人)

帰国を決定しました。スタジオの中間発表が3/24だったため、その翌日に帰国することを決めました。帰国すると決めると気持ちが落ち着きました。せっかくの留学生活が中途半端に終わってしまうことは無念でしたが、中間発表を一つの区切りとして残りの時間を楽しむことにしました。

しかしそれが甘い考えだとすぐに知ることになります。夕方に、翌日からスーパーや郵便局以外のお店がすべて閉まることが発表され、慌てて模型材料を買いに出かけました。

2020.3.17 (スイス国内感染者2269人)

東大から正式に帰国要請が出されました。外務省の感染症危険情報でスイスを含むヨーロッパ諸国がレベル2になったことを受けた措置です。

東大からETHに留学している友人と話し、3/25の帰国が悠長だったと判断しました。スイス国内の感染者は指数関数的に増えていて、東京への帰国便が翌週にもある保証はありませんでした。中間発表への影響を懸念し、帰国を3/20に早めることにしました。

2020.3.18-19 (スイス国内感染者2772人)

帰国手続きをわずか3日間でするのは大変です。

1. 航空券の購入
2. 大学への連絡
3. 寮の解約
4. スタジオへの連絡
5. 銀行口座の解約
6. 市役所へ滞在中止の届け出
7. 保険の解約
8. 荷物の運搬
9. スマホの解約
10. 鉄道チケット(Halbtax)の解約 
11. 図書館へ本の返却

とやるべきことはたくさんあり、どれもすんなりとはいきません。例えば、3.寮の解約は管理会社から拒否され、今でも交渉中です。幸いにも、市役所と鉄道以外はすべてオンラインでできたため、いちいち足を運ぶ必要がなくて助かりました。

大変申し訳ないことに、スタジオ課題をする余裕がまるでなかったため、少しお休みさせてもらい、帰国準備に集中しました。

2020.3.20 (スイス国内感染者4176人)

帰国日。経由便では途中で入国拒否などを受ける危険があるため、スイスエアの直行便を購入しました。朝に寮のチェックアウトを済ませ、寮の友人たちと空港に向かいました。

電光掲示板を見ると、いくつかの便が運航停止になっていることがわかりました。減便の影響で手荷物検査場は非常に空いていて、過去一番の早さで搭乗ゲートまでたどり着きました。機内はさほど混んでなく、少し安心すると同時に、横になって眠れたのが助かりました。

2020.3.21

成田に無事に到着。成田もガラガラで、チューリッヒ空港で見たよりも多くの便が運休になっていました。検疫の都合で入国審査が長引くと思いきや、簡単な申告をするだけであっさり通されてしまいました。こんな簡単で大丈夫なのだろうか、と思いつつ家族に送迎してもらい、実家に帰宅しました。

2020.3.22 (スイス国内感染者8060人)

日本政府の検疫の対象範囲外でしたが、念のため実家で2週間の自主隔離をすることにしました。また、スイスエアが3/27以降にチューリッヒ-東京の直行便を運休するとのニュースを見て、帰国を早めて正解だったと改めて思いました。2週間後には東大の次のセメスターが始まります。ETHでの授業との兼ね合いがどうなるかは未定ですが、自分にとって良かったと思える選択をしたいと思います。

少し経って (3.27現在 スイス国内感染者12161人)

今の日本の状況を見ていると、まるで時間を巻き戻したかのような錯覚を覚えます。日本の状況は、スイスのそれのわずか2週間前を体現しているようです。
スイスにいたときには、日本の方が強硬な対策をとっているように感じていましたが、帰国してみると日本の対策の不十分さに驚かされました。
滞在最後の一週間の、急激な感染者数の増加、そして社会インフラの閉鎖を思い返すと、危機感を共有することが不可欠に思いました。

また、メディアの重要性も感じました。
スイスにいたときには日経電子版くらいしか見ていなかったのですが、大使館から毎日関連情報(感染者数、行政機関の対応、航空会社の対応、トラブル時の連絡先)がメールで送られてきたため、非常に有用でした。必要十分な情報が、すぐにわかるように設計されていて、ありがたかったです。

現在のところ、ETHのオンライン授業を受けているため、またそのことについてもまとめてみようかと思います。ではでは。

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