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居宅介護支援の逓減性緩和の効果は限定的

逓減性とは、ひとりのケアマネジャーの利用者担当件数が一定数を超えると基本報酬が引き下げられる仕組みのことです。
これまでは、担当件数が40名以上になると基本報酬が減額されていました。
2021年の介護保険制度改正により、この担当件数が40名以上から45名以上へ緩和されています。

逓減性が緩和されることで、ケアマネジャーはより多くの利用者を担当することができ、より多くの介護報酬を得ることができます。
一方、多くの利用者を担当することによって業務負担の増加が見込まれます。

このケアマネジャーの業務負担を少なくするために、逓減制限の緩和には条件が定められています。その条件とは、「ICTを導入すること」または「事務員の配置をすること」です。
どちらかの条件を満たしたうえで保険者に届け出ます。そうすることで、逓減性を緩和してケースを持つことができるというわけです。

では、実際に逓減性を緩和してケアマネジメントを行っている事業所はどのくらいあるのでしょうか?

「居宅介護支援および介護予防支援における 令和3年度介護報酬改定の影響に関する調査研究事業報告書」によりますと、逓減性の緩和を実際に運用している事業所は全体の1割以下とのことです。
この結果は、逓減性を緩和した影響がほとんどなかったことを示しています。

逓減性の緩和に取り組まない事業所が多いのはなぜでしょう?
その原因のひとつに、逓減性を緩和する必要性を感じないことが挙げられます。

「令和4年度介護事業経営概況調査結果」によりますと、令和4年度のケアマネジャーの平均担当件数は、36.9人です。
このデータを見る限り、実際のケアマネジャーの担当件数は40名すら届いていません。
この状況で逓減性を45名以上に緩和したところで、何の効果もないのは明らかです。効果がないのにわざわざ逓減性を緩和する必要性はありません。

また、ICTや事務職員にケアマネジャーの業務を効率化する力があるのかどうかも疑問です。
もちろん、ある程度効率化することはできるでしょう。しかし、それによって担当ケースを増やせるくらい効果があるとは思えません。
しかも、どちらも導入するには一定の費用がかかります。特に小規模の事業所では、導入のハードルが高いでしょう。

事業所の経営の安定化を狙いとしたこの逓減性の緩和ですが、その恩恵を受けることができるのは、多くのケースを抱える能力のあるケアマネジャーやICTに投資する体力のある事業所などです。
逓減性緩和の効果は限定的であると言えるのではないでしょうか。

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