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【帰ってきたひいおばあちゃん】


これは、私が体験した最初で最後の不思議であり、怖い話です。


実話なので、怖い話が苦手な方は読まないでください。



この話は、私が高校2年生の時の話です。

私は、幼い頃から怖い話などが苦手の気の弱い男の子でした。

家族は、祖父・祖母・父・母・兄・私の6人家族で、夏にはよくみんなとリビングで、テレビ番組の怖い話特集を観ていました。

しかし私は怖がりなので、途中からはテレビ番組を観ずに本などを読む始末。怖ければ部屋をでればいいのに、怖がりの私は一人で自分の部屋に戻ることはできませんでした。

家族のなかで唯一私だけが怖がりで、よく兄が私の部屋に来ては怖い話などを無理矢理聞かされ、からかわれていました。部屋から出て行けと言っても、ふざけて居座り続けるような意地の悪い兄でした。

私は、父や母に、「兄が私を怖がらせてくるからなんとかしてほしい」と何度も相談しました。

しかし、二人とも「そんなの実際にあるわけない」「ただの作り話なんだから」と、まともに聞いてくれませんでした。

ある夏休みの朝、私は家の中の仏壇に御供物を供えてくるように母から頼まれて、仏壇の前に行きました。

私は、仏壇にはたまに御供物を供えに行きます。

その日もいつもと変わらず御供物を供えに行ったのですが、以前兄から怖がらせられたことや、父や母に相談してもあしらわれたことを思い出し、ひいおばあちゃんの仏壇に心の中で語りかけました。

「ひいおばあちゃん、帰ってきてください。」

「みんながいじわるします。帰ってきてください。」

何回か心の中で語りかけました。

そして私は、何事もなかったかのようにいつもの生活へと戻りました。

そんな出来事を忘れて数日経った頃です。

私は、自分の部屋で眠っていると真夜中に目が覚めました。

まだ眠たかったので、壁に掛かった時計を横目にもう一度目を閉じました。

1時半か2時の間でした。

また眠ろうとして、ふわふわと心地良くなってきた時です。

誰かが部屋の扉を開けました。

私は床に布団を敷いて寝ているのですが、誰かが私の横を歩き、頭の近くにある机の方に向かったようでした。

そして、机の引き出しをガサガサと漁り、出て行く音がしました。もちろん誰かの足音も歩くたびに床に伝わる振動も感じました。私は薄目を開き、その誰かの足を見て、また目を閉じました。

兄の部屋は私の部屋のすぐ隣にあり、よく私の部屋から文房具や漫画を勝手に持っていきます。

なので今回も、兄が私の部屋に何かを取りに来たんだと思いました。

いつものことなので、私は気にも留めませんでした。

私の部屋の扉の開く音がして、そして閉じられました。

(さあ、また眠ろう)

そう思ったのですが、何か違和感がありました。

兄の部屋の扉の開く音がしないんです。

私は、直感しました。

(また、ふざけてるな。)

(部屋から出たフリしてそこにいるんだろ。)

私の兄はたまに、私が寝てる間にちょっかいをだして起こしてきたりします。

その日は私も疲れており機嫌が悪かったので、兄のその行動に怒りを感じました。

そして、私は勢いよく起き上がり大きな声で

「ふざけるなよ!!!!」

と言おうとしたその瞬間です。

今まで経験したことのない耳鳴りが頭の中全体に響き渡りました。

頭が痛くなるほどです。

身体も全く動きませんでした。

瞬間的に、今まで味わったことのない恐怖を感じ取り、開けようとしていた目をギュッと閉じました。

手足も頭も動きませんでした。

これが俗に言う金縛りかと、初めて認識しました。

耳鳴りはずっと止みません。

すると、部屋の扉の方から足音が聞こえてきました。

ススッ、ススッと

足を擦るような音です。

ゆっくり私の足元に音が移動してきました。

そして、布団の上を踏んで私の身体の方へと近づいてきます。

布団を踏まれている感触も伝わってきています。

私は、恐怖で頭がおかしくなりそうでした。

しかし、声も出せないんです。

大きな声で叫ぼうとしても、口が開きません。

唸ることしか出来ませんでした。

身体が硬直して、嫌な汗が全身に広がり、どうすることも出来ない。

半狂乱になりながら、もがこうと必死でしたが

次の瞬間、

ドシッ!

私のお腹の上に誰かが勢いよくのしかかってきました。

間髪入れずに、私の左耳まで顔を近づけてきました。

なぜ分かったか、息がかかったからです。

そして、ゆっくりおばあさんの声で


「きぃ〜た〜ぜぇ〜」


その声を聞いた瞬間に、身体が嘘みたいに軽くなりました。

しかし、身体が震えて力が入りません。

恐怖で目も開けることができませんでした。

物音一つしなくなった部屋に、安心はできませんでした。

今回ばかりは、兄に早く来て欲しいと思いました。

しかし、もちろん兄が私の部屋に来ることはありませんでした。

ずっと身動き取れず、どれくらい経った頃でしょうか。

少しずつ速くなっていた心臓の鼓動が、落ち着いてきたかのように感じました。

(今しかない)

そう思い渾身の勇気を絞り出し、一気に布団から飛び出して部屋の電気を点けました。

時計を見ると、3時でした。

私は部屋の扉を開けて誰かに助けを求めに行くことも、恐怖のあまりできませんでした。

部屋の電気を点けたまま布団を被り、ずっと恐怖に耐えていました。

外から鳥の囀りが聞こえてきました。

すると、家のどこからか生活音が聞こえてきました。

母が洗濯機を使っている音です。

朝の5時半でした。

そこでようやく、私は母のもとへと大声を出しながら行きました。

私は母に事情を話すと緊張の糸が切れたのか、急激な睡魔に襲われました。

私はリビングのソファーで眠ってしまいました。

眠りから覚めると、母と祖母がテレビを観ていました。

そこで、もう一度二人に昨夜の出来事を話すと、

「きぃ〜た〜ぜぇ〜」

という言葉に二人が驚いていました。

「◯◯ぜぇ」

という方言のようなものは、

私のひいおばあちゃんの方言だったのです。



仏壇の前で

「帰って来てください」と

心の中で語りかけた私に、応えてくれたのでしょうか。

そうだとしても、このような経験は二度としたくないです。



余談ですが、

私が20〜22歳の頃Skypeが流行りましたが、ビデオ通話をしていた時、3人ほど相手に怖がられて切られました。

画面いっぱいに大きな顔が映っていたそうです。

おばあさんの、、、


私自身あれ以来全く、恐怖体験からは無縁ですので、安心ですが。







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