12.9インチ iPad Proを選ぶなら、円安で高くなるM2待たずにM1モデルを買っておけ(2022年7月1日追記あり)
円安に背中を押されてM1 12.9インチ iPad Pro購入
このところの円安を背景に、円貨をモノに替えていく資産防衛活動(以下「散財」という。)に力を入れています。
中でも、為替変動リスクに敏感なApple製品の価格動向(以下「口実」という。)に注目しています。ビジネス利用がメインで金額が上振れしやすい 12.9インチ iPad Proなどは、高額な次世代が出る前に買っておくのもいいかもしれません。中国での感染症再拡大によって部品の調達難も発生し、次世代モデルは品薄になるかもしれませんし!
ということで、購入から3年超経過した12.9インチ iPad Pro(2018)から、M1 12.9インチ iPad Pro(2021)へと乗り換えることにしました。
そもそも 12.9インチ iPad Proは必要なデバイスなのか?
iPad mini 6の登場で激減した12.9インチiPad Proの持ち出し頻度
振り返ると、2021年はiPadにとって変化の年だったように思います。iPad mini 6が発売され、その完成度の高さが、多くのiPadフリーク達の価値観を塗り替えたからです。
それまでは、「大は小を兼ねる(better too big than too small)」iPad Pro 12.9インチとどこに行くにも一緒だった私も、mini6入手以降、外出時はminiしか持ち出さなくなりました。「小よく大を制す(David beats Goliath)」とはよく言ったものです。
これはmini自体の性能がすごいというより、文房具としてのApple Pencil 第2世代のポテンシャルを引き出すのにちょうどいいサイズの端末が、iPad mini 6であった、ということだと自分の中で整理しています。
こうして、私のiPad Pro 12.9インチ 2018モデルは、Magic Keyboardに装着されたまま家の中で時を過ごすことが多くなりました。
それでも「最良のデジタルノート」として12.9インチiPad Proは必要不可欠
だからといって、12.9インチiPad Proを卒業できるかというと、それは困難です。私にとって12.9インチiPad Proは、紙のノートブックに代わる必要不可欠な文房具だからです。
仕事で情報を集約しながらまとめるとき
個人的な勉強をするとき
読書をしながらメモを作るとき
一人ブレインストーミングをするとき
こんなとき、昔なら紙とエンピツが必要でした。しかし、デジタルでこれを行おうとすると、エディタとキーボードではやはりペンの代わりにはなりません。ではiPad miniやiPad Pro 11インチではどうでしょうか?やはり、12.9インチ以下サイズのiPadは「手帳」にはなれても、「ノート」の代わりにはならないからです。
ペンで直感的に絵や文字を書きなぐるには、それなりの画面の面積を持つノートがどうしても必要であり、現存するデバイスの中から最良のデジタルノートとペンの組み合わせを選ぼうとすると、現状は、12.9インチiPad ProとApple Pencil 2をおいて他には考えられない現実があります。
動作のキビキビ感には磨きがかかった
では、今回実際に新しい12.9インチ iPad Proに乗り換えてみて、どうだったでしょうか。
さすがにハードウェアの進化は頭打ちかな…と期待はしていなかったのですが、触ってみると、やはり新型ならではのキビキビ感が感じられました。
ただそれは、一般に言われるM1チップのおかげというより、Wi-Fi6 (802.11 ax)が貢献している部分が大きいかなと。同じ自宅内の環境下で、Wi-Fi5(802.11 ac)な2018モデルでは40-250MB前後しか出なかったのに対し、Wi-Fi6な2021モデルでは400-500MB前後と、スピードと安定感に歴然とした違いがあります。
といった具合に、いいところを次々に挙げられればよいのですが、残念ながら、この12.9インチiPad Pro 2021モデルには、それ以上に看過できないネガティブな側面がいくつもあります。
M1 12.9インチ iPad Proのネガティブな側面
擁護しようがない重さ
覚悟はしていましたが、2018モデルの630g→2021モデル680gへの重量が50g増加したのは、思っていた以上にネガティブです。どんなに鈍感な方であっても、持ち替えた瞬間にこの違いに驚くでしょう。
人間の手の重量センサーには、650g位を境に閾値があるんでしょうか?630gだった2018モデルの印象は「画面の大きさの割に軽いな」だったのに、680gとなった2021モデルは、ずっしりとした重さを感じるただの重い鉄の板になってしまいました。
今回のモデルでもっとも不満なのは、この重量増加であることは間違いありません。
XDRディスプレイ(ミニLED)の恩恵は、Apple TV+を観るとき以外は実感できない
その重さの原因は、XDRディスプレイ(ミニLED)を搭載したことによるバッテリーの増量にあると言われています。では、重さを犠牲にしてまで入れたXDRディスプレイの画質はいかほどでしょうか。
確かにミニLEDのおかげで黒が引き締まっているのはすぐにわかります。しかし、肝心の画質の差は、正直なところ、Apple TV+でHDR撮影されている映画やドラマを再生しない限り、先代モデルとの違いは感じられません。ミニLEDの仕様により、エッジ部分の輝度が暗いのもイマイチです。
ただ、私が心の師と仰ぐ、Apple製品に辛口な高城剛氏が「iPad ProのXDRディスプレイはイノベーション」「目にも優しい」と言っているので、目の健康に人一倍敏感な私は、その言葉を信じることにします。
バッテリーの持ちは悪くなった
さらに、これもXDRディスプレイの負の側面がもうひとつ。バッテリーの持ちが悪くなったという点です。
同じM1チップを積んだMacBook Airがバッテリー持ちを劇的に伸ばし株を上げたのに対して、この落差はなんでしょうか。バッテリー容量の小さいmini6並みの速さで減っていきます。
2018モデルのバッテリーに不安を感じたから乗り換えたのに、本末転倒な気がします。
WWDC2022で発表されたiPad OS 16がゲームチェンジャーに
こうして、M1モデルに買い直したメリットを見出せないまま迎えた2022年6月6日(日本時間で7日)。WWDC2022にてiPad OS 16が発表されたのですが、ここで、M1 iPad Proの価値を著しく向上させる2つの新機能が発表されました。
一つが、「ステージマネージャ」機能によるマルチタスキング強化と、外部ディスプレイのサポートです。M1チップの描画性能を活かし、最大8つのアプリをウインドウをずらしながら重ねて表示できるだけでなく、それらを6Kの外部ディスプレイに、ミラーリングではなく拡張表示かつフルスクリーンで出力できるようになりました。
さらに、「ディスプレイスケーリング機能」が追加され、画面のピクセル密度を変更できるようになりました。上記のステージマネージャで威力を発揮するのはもちろん、これまでのようにSplit Viewで画面分割をする際にも、12.9インチの画面サイズを効率的に活用できるようになります。
実際に、iPad OS 16 Dev βをインストールし、4Kの外部ディスプレイに接続して試してみた感想は以下。
1)画面ピクセル密度がUPしただけでも、新しいiPadを触っているかの様な別モノ感が得られる
2)ステージマネージャすると、12.9インチでも狭い。11インチ上でのステージマネージャは画面が小さすぎて、全く役に立たない代物になりそう。
3)外部4Kディスプレイに繋いで操作したルック&フィールは期待以上にMacOSらしさがある。差はアプリの差だけかも。
そして、これらはM1チップ搭載のiPad Pro/iPad Airのみの機能。長年の12.9インチユーザーからしてみれば、このためだけに今のうちからM1モデルにアップグレードしておいても良いと感じられるのではないでしょうか。
円安&供給不足リスクを検証する
最も悩ましく、予想のしようがない変数が、冒頭述べた円安・供給不足による次世代モデルの値上げリスクです。円安傾向に加速がかかっているだけでなく、Appleの米国での販売価格と日本での販売価格の差異を観察すると、実際のドル円レートよりも円を安く評価する傾向にある点も、リスク要因です。
実際、昨年5月に販売された12.9インチiPad Pro 512MB Wi-FI / セルラーモデルは、米国価格が1,599ドルと設定されたのに対し、同じモデルの日本価格は183,000円。ここから求められる当時のApple実効レートは114.94円と、同日の実際のドル円レートよりも6円ほど円安を織り込んだような価格が設定されていました。
最近ではこれがますますエスカレートしており、下記記事でも指摘されているとおり、iPhone SE(第3世代)は今の円安を見込んでいたかのように、1ドル134円レートで価格設定されていました。Appleの為替予測力さすが…。
さらに、2022年6月のWWDC2022終了直後にも、既存のMacが一斉に値上げされました。MacBook Pro 14インチを例に挙げれば、2021年10月発表時に239,800円だったところ、イベント終了直後の価格改定で274,800円に。税金の違いはありますが、単純計算で1ドル137円レートの設定です。そして、M2 MacBook Airの米国販売価格は、M1の同水準モデルと比較して200ドル近くも上昇しました。
こうした過去データを踏まえ、
M2 12.9インチ iPad Pro 発売のXデーを2022年11月
米国価格は200ドルアップの1,799ドル
ドル円レートを130円/Apple実効レートを136円程度
と予想すると、M2 12.9インチiPad Proの日本価格は、244,664円になります。
上記はあくまでワーストシナリオの価格予想ではありますが、とはいえ今の市況を見る限り、新モデルが発売されるであろう今年の秋冬に逆方向に思い切りふれるということはなさそうで、中心価格帯が20万円を超えてくる可能性はかなり高いと推測します。
12.9インチモデルなら、割高になって壊れやすくなるM2モデルを待つよりも、M1モデルを買ってしまえ
今年の秋に出るM2 12.9インチiPad Proは、第3世代〜第5世代までがマイナーアップデートを繰り返していただけに、今年はハードウェアがメジャーアップデートされる公算が高いと言われています。その噂となっている変更内容が何かと言うと、
MagSafe対応
背面ガラスデザインの採用
OLED(有機EL)化
の3つです。
確かに、iPhoneがそうであったように、MagSafeに対応するためには(干渉の問題により)背面はガラスにする必要があります。背面ガラス化は、デザイン的にも高級感をさらに増す効果もあるでしょう。加えてOLEDを採用するとなると、かなりコストも嵩みそうです。
しかしここで気になるのが、背面ガラスを採用した場合、今でも軽いとは言えない12.9インチiPadがさらに重くなってしまうことに加え、壊れやすく・割れやすくなってしまうのは間違いないであろう点です。そうした課題はAppleも認識しているようで、ボディをチタン製にするとの噂も出ています。
家の中でも外でも「気軽に」持ち運びができるというのが、iPadに対する基本的な期待でもあったはずですが、こうなってくると、高級で壊れやすい、腫れ物に触るようなガジェットになってしまう可能性が高くなってきました。
不確定要素があまりにも多いM2 12.9インチ iPad Proを待つより、まだ円安による価格改定が来ていないうちに現行M1モデルを買っておいた方が良いのでは、と思う次第です。
2022年7月1日追記 本日以降はオススメしません
この記事の予想通り、そして前日の6月30日に一時1ドル137円を記録したのを見届けたかのように、Appleは、2022年7月1日付で、iPadをはじめとする全てのiOS端末と、Apple Pencil・AirPods・HomePod・Apple Watch等の周辺機器を値上げしました。
iPadは(最新のAir5を除き)20%超の値上げに。ボリュームゾーンであるiPad Pro 12.9インチ512MB セルラーモデルでは、183,800円→226,800円と、43,000円の値上がりになりました。
こうなった以上、本日以降M1 iPad Proを購入することはオススメしません。おとなしく、秋から冬に発売されるという噂の、M2 iPad Proを待つべきでしょう。
そして、新しいM2モデルが、このM1モデルの値段の価格を上回ることも間違い無いというのが、何よりおそろしい…。