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【ホテルログ⑪嵐山邸宅MAMA】京都感に迎合することなく生み出された「新しい京都のホテル」

11回目のホテルログは、京都の嵐山邸宅 MAMAについて。

同年代の設計・デザインチームが手がけるホテルが京都にできたと聞いて気になっていた場所。

結論から書くと、悔しいくらいにめちゃくちゃ良かったです。
日本のホテルの中では自己ベスト更新となった宿泊体験でした。

2021年6月に開業した新しいホテルなので、まだレビュー記事等は少ないですが、今回の宿泊体験から、京都を代表するホテルになると思っています。

そのくらい感動したMAMAの体験。今回もたっぷりの写真中心にお届けします。

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嵐山邸宅MAMA, Kyoto, Japan

MAMAは、京都随一の観光エリア、嵐山にあります。

京都の市街地の西部に位置する嵐山には、桂川にかかる渡月橋を中心に観光エリアが広がっており、常に多くの観光客で賑わっています。

嵐山の魅力はなんといってもその美しい景色。
山と川が作り出す自然の景色は、桜・紅葉の名所であることはもちろん、新緑や雪景色等、四季を通じてさまざまな姿を見せてくれます。

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MAMAがあるのは渡月橋のすぐ近く。阪急嵐山駅から5分ほど歩いた嵐山の麓に佇んでいます。

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賑わうイメージの嵐山の中ですが、MAMAの周辺は静かで落ち着いて過ごせるエリア。

駅からの道で見えてくる日本家屋の門とのれんに心躍ります。

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▲立派な門構えのエントランス

エントランス&建物

のれんをくぐり、庭を抜けて中に入ると、そこには天井が吹き抜けになった開放感のある空間が。

レストランを兼ねたエントランスは、木造の温もりに陽の光がたっぷり入り、最高に気持ち良い。
これからの滞在への期待値も高まります。

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MAMAはかつて阪急電鉄が保養所として使っていた建物だそうです。
室内はモダンにリノベーションされていますが、伝統ある建物の良さもしっかりと残されており、日本人として懐かしさを感じます。

客室へは、エントランスで靴を脱ぎ、下駄箱に入れて向かう仕組み。
実際にここに住んでいるような感覚を覚えさせます。

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▲エントランスを抜け客室へ降りる階段。

1Fだと思っていたエントランスは実は2Fでした。
建物全体が丘に建てられているようです。面白い構造。
こういったちょっとした意外性がワクワク感を刺激しますよね。

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▲床はグレーのカーペット仕様。

ホテル内の廊下で、靴を脱いで素足で歩く体験は結構新鮮。
ホテルでありながら、旅館的な要素も感じられるので、海外のゲストは嬉しいだろうなと思います。

客室

客室の扉を開けると、思わず「わぁ〜」と声が出てしまう素敵な空間が待っていました。

シックで上品な空間の先に、日本家屋らしい庭園が広がります。

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ホテルに泊まる時の、この部屋の扉を開ける瞬間が大好きです。
良い空間が目の前に広がると、長旅の疲れが一気に吹き飛びますよね。

この日は、10室ある客室の中から、1Fに位置する「MAMA Garden」に宿泊。室内面積は26㎡で、天井も高くはないですが、奥にある庭のおかげかかなり広く感じます。

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客室に入り、まず目に入るのが部屋の奥にある浴室と洗面台。
ホテルの広い洗面スペースってテンション上がりますよね。
これを楽しみにしてる人には、その期待にしっかり答えてくれます。

部屋の1/3程度を占める贅沢な洗面スペースは、使われている素材のミックスセンスが最高。

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浴槽や洗面は黒を貴重としたシックなテラゾー。
木材のブラウンと合わさり、落ち着いた大人なしつらえに。
個人的にもテラゾーが大好きなので、ここばっかり撮ってしまいました。笑

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▲家具のバランス感も秀逸!

洗面スペースから床材も切り替わり、屋内が区切られています。
ザラッとした質感の床が庭との接続地点として機能しています。

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朝は自然光がたっぷり差し込みます。
庭の植物の木漏れ日の中入る朝風呂は最高に気持ち良い。
お風呂のドアは全開放できるので、露天風呂に早変わり。贅沢な朝が過ごせます。

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都会でありながら自然を感じることが出来るのは、庭園がある伝統的日本家屋の魅力ですね。

室内の中央には大きなキングベッド。
ベッドボードのディティールもかっこいい。

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コンセントやスイッチのデザインも抜かりない。
素材はもちろん、色の組み合わせが本当に素敵でした。

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一本足で備え付けられた美しいサイドテーブル。
垂れ下がるペンダントライト含め、完成尽くされたデザイン。

内装設計の仕事は、タイトな工期の中、限られた時間で進めなければならないため、デザインが完成しない状態で施工を走らせることも多々あるはず。

結果的に、最後に既製品を当てはめてなんとか完成させるということも頻繁に起こります。

でも、今回見たMAMAの客室は、空間の細部においても、事前に綿密にデザインされていないと作れない完成度でした。
改めてすごいなと思いつつ、背景のデザイン期間や工期が気になるところです。

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ベッド脇には襖があり、中にグラスやカトラリー、冷蔵庫が収納されています。

元々の部屋では押し入れだったのかもしれませんが、面影を感じさせない高い完成度。見事な収まり。

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部屋の黒い塗り壁の質感も絶妙に空間にマッチ。
少し荒っぽい印象が、空間がスタイリッシュにキマり過ぎないためのアクセントになっていると感じました。
キメキメでなく、ラフさがある方が肩肘張らずに快適に過ごせますよね。

昼はもちろん、夜の雰囲気も格別です。
計算されたライティングがムード抜群の空間を作ってくれました。

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▲窓を全開放して入った夜の露天風呂、最高でした...!

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▲ベッドの寝心地もそれはもう格別でした。

レストラン

朝食は、エントランスを兼ねたレストラン「儘 MAMA」にて。

お昼と夜はピザを中心としたイタリアンレストランとして営業されています。


空間の半分が吹き抜けになっていて抜群の開放感。木造の暖かみを感じられる居心地良い空間でした。

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今回はランチとディナーは体験できませんでしたが、チェックイン時に15時頃伺った際でも満席と、かなり賑わっていました。

もちろん宿泊せずともレストラン利用は可能なので、食事だけの利用でも是非訪れて欲しいです。

レストラン営業時はイタリアンですが、宿泊者の朝食は意外にも和食でした。
海外のゲストが多い京都なので、朝は和食の方が良いのかも。

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シンプルな味付けの朝食が、美味しいものに溢れて食べすぎてしまう京都旅の朝には最適でした。

MAMAは、京町家や日本家屋に迎合することなく生み出された「新しい京都のデザインホテル」

MAMAを運営するのは、地元京都を拠点とするデザイン会社DAY inc.

デザイン会社でありながら、京都の半地下というビアバーも手掛けているチームです。

僕がMAMAの存在を知ったのも、この半地下がきっかけ。

何かの経由で半地下の運営チームがホテルを開くと聞いてものすごく興味を持ちました。

僕達自身もデザイン会社でありながら飲食店を経営していて、将来ホテルの開業を目標にしています。

だからこそ、「それを既に実現しているチームがいる。しかも、30代前半という自分達と同世代で。」となると、それはもう気になって仕方ありません。

そんな背景もあり、憧れと悔しさが入り交じる感情とともに訪れた感想としては、もう本当に「尊敬」の一言しか浮かびませんでした。

個人的に感動したポイントは、「京都なんだけど、京都っぽすぎない」デザインのバランス。

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「海外のゲストが多い京都で、贅沢な庭がある日本の伝統的な低層家屋をリノベーションする」というお題だと、京都感を追求するのが定石戦略だと思います。
その方針の方が、複数いる関係者達の納得感や合意も得やすそうです。

でも、MAMAの空間は、京町家や日本家屋をただ迎合するのではなく、元々の物件価値を活かしながら新しい魅力のある空間にリノベートされていました。

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▲レストランから見える庭の風景。所々にある美しい庭に癒やされます。

客室には畳や障子、襖などを用いず、ベッドや豪華な洗面を中心にデザインホテルたる仕様設計に。
一方、エントランスで靴を脱ぐと行った旅館的要素も残されており、ホテルと旅館の中間のような新しい体験ができます。

関東出身の僕からするとしっかり京都感も味わえたので、「ザ・京都」を求めて訪れる京都府外や海外のゲストからも喜ばれそうです。

空間としての既視感はなく、新しい。
それでいて、「京都のホテル」への期待感を裏切らずに満たしてくれる。

「こんなハイレベルなバランス感と完成度のデザインホテルを、同世代の人達が作り、しかも運営もしてるなんて」と思うと尊敬しか生まれませんでした。

余談ですが、この規模のプロジェクトだと、リノベーションにおいては建物保有者の阪急電鉄の資本が何かしらの形で入っていると推察しています。

そういったケースは関係者の価値観も多岐に渡るので、セオリー外の事をしようとすると反発意見が生まれるもの。
意見者が多くなると、アウトプットがどんどん丸くなって、結果的に「なんだか見たことある物」が出来てしまいます。

この物件においてそんな議論の背景があったのかどうかはわかりませんが、関係者は少なくないプロジェクトだとは思うので、ここまでチャレンジして、新しい空間を作りきっているのは本当にすごいなと尊敬します。

ホテル運営の実績がある巨大企業や、名のある建築家が作ったホテルならまだしも、若いデザインチームが初めて作ったホテルとなると、その凄さが身に沁みます。

そういった背景を加味して、日本で自分史上一番感動し、勉強になったホテルでした。

京都に行く際は、是非その空間の魅力を味わいに訪れてみて下さい!

<嵐山邸宅MAMA
HP:https://mama-arashiyama.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/mama_arashiyamahouse/
Address :  〒616-0003 京都府京都市西京区嵐山西一川町1−5

<レストラン>
Instagram : https://www.instagram.com/mama_arashiyama_/

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