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外は狼、内は子犬7 出会い前編

〇〇「雨か」

私は今愛しの彼ぴと傘をさして散歩しております

〇〇「何で雨の日に散歩なんだよ」

ひより「だって雨好きなんだもん」

〇〇「そうだったの?初めて知った」

外だと相変わらず表情動かないね〜

家だとまん丸お目目が見開くのに

ひより「〇〇と出会う前は嫌いだったんだけどね」

〇〇「俺と出会ってから好きになったの?」

ひより「やっぱり覚えてないか」

〇〇「なんかあったっけ?」

ひより「去年のこれくらいの時期にさ、雨降っててさ」

〇〇「うん」

ひより「天気予報が外れて私傘持ってなくてさ、〇〇が傘貸してくれたじゃん」

〇〇「あーあったね、そんな事」

ーーーーー

これは私と〇〇が出会うお話し〜パチパチ

ひより「あーもう!補修でも最悪なのに何で雨なの!もー最っ悪!」

高校3年春が終わりに近づいていた

中間テストで赤点を取った私は先生にこっ酷く叱られ補修も受けさせられた

ただでさえ嫌いな勉強をして帰り道にゲリラ豪雨の様な雨が急に降ってきたの

開店前の居酒屋の前で何とか雨宿りできた

すぐ上がるかな〜って思ってたら全然やまない

ひより「びしょ濡れで帰るとまた怒られるしどうしよ」

悩んでたらその時、無表情の君が助けてくれたんだよ

〇〇「あの、良かったら使って下さい」

半強制的に渡された黒色の折り畳み傘

ひより「え、大丈夫ですよ、ちょっとー」

雨の中を鞄を抱えて走る君の背中は小さいけど大きく感じたの

無事に家に着き傘を閉じて取手を見ると名前が書いてあった

齊藤〇〇

その時から君の事が気になって

傘を返す為に君の事を探してたんだ

〇〇「あの、良かったら荷物持ちますよ」

見つけたと思ったらお婆さんの荷物を持って横断歩道渡ってあげたり

〇〇「どうぞ座って下さい」

〇〇「自分次の駅で降りるので座って下さい」

電車で妊婦さんに席を譲ったり

〇〇「もし良かったら一緒に横断歩道渡りましょうか?」

目の不自由な方を先導して横断歩道渡ったり

どれも全部無表情だったけどお人好しで困った人を見捨てられずにはいられない優しい人だと分かった

気づいた時にはあなたを自然と探していた

傘を返す事を口実にどうにかしてあなたと話したくて

人見知りな私はどうしようもなくて…

ひより「この前ね、駅のホームで迷子になった子をね、一緒に親を探してあげてたの」

美穂「またその齊藤さんは助けてたんだ」

この子は渡邉美穂、小学校から高校までずっと一緒の幼馴染

今はカフェで齊藤さんの近況報告

ひより「それでね」

美穂「で、どうするの?」

急に真剣な顔になってどうしたの?

ひより「え?」

美穂「いつまでその傘持ってるのって聞いてるの」

ひより「返すよ」

いつでも返せる様に肌身離さずもってるもん

美穂「それを聞いて1週間経ってるけど〜」

ひより「返したいけどタイミングが…」

美穂「いっぱいあったでしょーが!それだけ齊藤さんを見てたら」

ひより「だって、ストーカーって思われたら」

美穂「それだけの目撃情報あったらもうストーカーだわ!」

ひより「違うもん!」

美穂「違うくない、そんな言い合いじゃなくて」

美穂「好きなんでしょ?」

ひより「分かんない」

美穂「じゃあ目閉じて」

ひより「なんでよ」

美穂「いいから目閉じて」

何だよ、次は目を閉じてとか

美穂「今ひよりは立ってます」

ひより「ん?立つの?」

美穂「違う、想像の中で立ってます」

ひより「うん」

美穂「ひよたんの隣に1人立ちました」

ひより「うん」

美穂「目を開けて」

変わらず真剣な美穂の顔が正面にあったけど

私の頭の中は隣にいた人で頭がいっぱい

美穂「誰がいましたか?」

ひより「…」

美穂「それがひよたんの本心だよ?誰が居た?」

ひより「…齊藤さん」

美穂「うん。どうする?」

ひより「傘返す。」

美穂「今度こそ?」

ひより「うん。ちゃんと返す」

美穂「よく言った!」

ひより「ありがとう美穂」

美穂「いいよ、でも」

ひより「でも?」

美穂「好きなんじゃ〜ん!」

ひより「ちょっと大きな声で言わないでよ」

美穂「恋愛には興味ありませーん!今が楽しければそれでいいですよーって言ってたのに」

ひより「やめってばー」

美穂「ひよたんが大人になってしまった」

ひより「何言ってんだか」

親友のお陰で自分の本心にやっと気づいた

ありがとう美穂

ーーーーー

「すいませーんボール取って下さーい」

〇〇「行くぞー」

あなたはその時、少年達にサッカーボールを蹴り返してあげてた

「ありがとうございます!」

無表情だけど目はすっっごく優しい目をしてた

ひより「あ、あの!」

この一言から私たちの運命が動き出した気がする

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