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英語嫌いが大量発生する時代がやってくる? 〜 豊島岡女子中の英語入試から考える日本の英語教育の問題点

こんにちは。
元大手進学塾トップクラス担当講師で、
現在はニュージーランド在住の受験&国際教育コンサルタントのTakuです。

先日ネットでニュースを見ていたら、
豊島岡女子中で英語入試が新設されたとの記事を見つけ、
思わずふむふむと読み込んでしまいました。

​​​​確かに最近中学受験で英語入試が盛り上がっているのは、
さまざまなところから伝えきいてはいたものの、
難関校の豊島岡女子中が実施のインパクトは大きい。

今後さまざまな学校が追従していくだろうことは、
容易に想像がつきます。

でもそのトレンドを追いかけるように、
保護者が子どもに英語教育を課していくことには、
大きな憂慮を覚えています。

そこで今日は混迷を極めている日本の英語教育について、
豊島岡女子中で実施される英語入試を元に、
少し考えてみたいと思います。


透けて見える学校側の思惑

このような私立中学における英語入試の導入には、
各学校の思惑が透けて見えるように思います。

英語教育はどの学校にとっても、
保護者からニーズが高い分野ではあるものの、
成果を出すのは容易ではありません。

各学校はそれぞれさまざまプログラムを用意していますが、
実態はかなり付け焼き刃的なものも少なくなく、
実態は受験対策になってることが多いもの。

それは英語力が低い学生をたった6年間で、
受験にも対応しつつ実践的スキルまで習得させるのは、
困難極まりないからです。

その観点からするとすでに英語力の高い生徒であれば、
受験対策はそれほど手間がかからず合格実績も出せ、
その上実践的な英語力育成のプログラムが作れる。

これは保護者にはいいアピールとなり、
(あなたも好きではありませんか?)
結果としてより能力の高い生徒集めにも貢献する、
理想的な好循環が生まれる。

英語教育の負担を家庭に投げて負担を軽減しつつ、
大学進学実績をしっかりと確保でき、
その上新しいプログラムで魅力的な生徒の集められる。

まさに見事な学校経営の戦略だと、
感心するしかありません。

小学生に英検学習を課すリスク

しかし家庭の側から見ると、
この流れがトレンド化することには、
大きな負担とリスクを伴うことになります。

豊島岡女子の英語基準を見ると、
以下のように英検のスコアがそのまま点数化されます。

準1級以上=100点
2級以上=90点
準2級以上=70-80点(スコアによる)
3級以上=50点

これを見ると明らかに、
最低準2級は持ってきてねという、
学校側からのメッセージが読み取れます。

つまり学校としては高1までの4年分は、
家庭で身につけてきてくださいねと、
保護者に伝えているということです。

こうした英検による序列付は、
学校にとっては大変便利なものですが、
家庭側からすればその対策が必須になります。

英語入試一本で行くならともなく、
通常は2科目もしくは4科目受験も併用するでしょうから、
受験勉強+英検対策に向かうことになります。

それは誰に目から見ても、
親子共々に大幅な負担増を強いることは、
明らかなことでしょう。

さらに懸念されるのは、
こうした流れの中でますます子どもたちが、
英語嫌いになることです。

英語とは本来コミュニケーションのツールにすぎず、
無理に点数化する必要はないものです。

しかし英検対策に乗り出した子供達にとって、
英語は合格するために勉強する科目であり、
苦痛が増えただけと感じることでしょう。

こんなことを続けていけば、
仮に英検を取得したとしても、
英語はうんざりと思う可能性も十分あります。

英検取得はただのスタート地点で、
実践的なスキルを身につけて使えるようになることが、
本来のゴールのはずです。

しかしその英検取得がゴールになる、
本末転倒な現象が今後加速することを、
心から心配しています。

英語学習を根底から見直すべき

先日も別の記事で書いた通り、
日本人の英語力の低さは、
アジア諸国の中でも下位の位置にあります。

こんなに溢れるほどの教材やメソッド、
各種塾や教室があるにも拘らずのこの結果は、
明らかに何かが間違っているからでしょう。

そしてその本質的な問題点は、
日本人が英語を受験の試験科目として、
捉えているからだと私は考えています。

さらに踏み込んでいうのであれば、
英検という日本独自の英語資格の存在が、
日本の英語教育を歪めているのかもしれません。
(こちらは別記事で後ほど書きます)

日本人が英語を勉強しようと思った時、
真っ先に思いつくのが英検だと思いますし、
その学習のためにテキストを購入するでしょう。

そして単語や熟語を覚えて文法を学習し、
演習問題をたくさん重ねて解いていく。

詰まったら解法のコツを塾に行って学び、
いざテストに向かっていく。

あなたにも覚えがあるのではないでしょうか。

でもこれは本来の英語力取得とは、
対極にある学習と言ってもいいかもしれません。

なぜなら語学とは本来使いながら、
徐々に習得していくものだからです。

英語は英語圏の国では日常的に、
人々がお互いにコミュニケートするために、
日々使用している生きた言葉です。

そこでは文法通りでない表現も使われるし、
新しい言葉も生み出されていく。

実際にネイティブに英検の上位級を受験させたら、
一体どれくらいの人が高得点を取れるでしょうか。

そんな英語テストを子供達に、
英語学習意欲を失わせてまで進めていて、
英語力の向上が図れるはずがない。

英語=受験のための科目という概念を、
払拭できる新しい英語教育システムが、
今こそ必要なのではないでしょうか。

まとめ

さて、いかがだったでしょうか。

中学受験の世界への英語入試の拡大は、
今後ますます進行していくことが予想されますが、
それはさらなる英語嫌いの量産につながる恐れがあります。

受験に合格した後で学習意欲を失う、
燃え尽き症候群をさらに増加させることも、
大いに懸念されることでしょう。

そうした事態を回避するためにも、
そろそろ英検信仰の洗脳から目覚めて、
新しい英語教育を志向すべきではないでしょうか。

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