DSP版フォノイコライザ (3)

そういえば続きを書き忘れていた。

これ、

DSP版フォノイコライザ (2)|Takumin|note

の完成後、なんかまだ「できることをやってない」感があって、それはなんだろう、としばし考えていたのだが。

そうだ!DSPで細かくフィルタをいじれるのなら、アナログレコードの「標準原器」を使って、カートリッジも含めたエンド-to-エンドの特性をそろえちゃう!ってことが可能なはず。

いまどきだともうスタジオやPAなどではごく普通の方法です - 基準信号を流して、それを測定器または測定用ソフトウェアで拾って、エンド-to-エンドで特性をそろえてしまう、というやり方。自分のスタジオでもだいぶ前に測定してみて、結果あまりいじる必要はないのがわかったのですがw、たまに音響設備設計を請けてその調整(施工はできませんごめんなさい)の際に、そういったことができるこういう製品を使ったりしている。

dbx Drive Rack PA2

おっと、話をフォノイコライザに戻そう。

で、基準信号が記録されたアナログ盤がまず必要になるのだけれど、そんなもんあるんかいな?と皆さん不思議がるかもですが、ちゃんとあるんです。

一般社団法人 日本オーディオ協会 | オーディオチェックレコード AD-1 (jas-audio.or.jp)

これかなり前からある気がするんですが、何度かバージョンアップされたかもしれない。このなかに、1KHz基準信号とかのお決まりの信号のほかに、周波数スイープ信号もあるので、これをフォノアンプ経由でオーディオインターフェースに入力・記録して、それを周波数分析(たいていのDAWでできる)すれば、たとえば10KHzからダダ下がりだな、とかが一発でわかる。

今調べたら、これ以外にもこんなのが出ているので、同様に使えるんじゃないかなと。

ただ15KHzまでしか測れないのはちょっと残念かな?

ご存じのようにアナログ盤再生で使用する「フォノ・カートリッジ」は、基本的に電磁誘導でレコードの溝を電気信号に変えるわけですが、もうこれも各カートリッジによって特性がバラバラです。なので、この基準信号とDSPによるイコライザを使って、できるだけ入力=この原器の信号を、出力=アンプの出力とイコールになるようにDSPのフィルタの係数を変えることで「そろえて」やる。まあイコールにするからイコライザなんですけどねw

で、実際は、測定方法やオーディオインターフェースの特性のばらつきもあり、まったくぴったり一致させるとだいぶハイ上がりになるので、お気に入りのレコードを聴きながら細かく追い込んでいく感じ。まあこれがコンデンサと抵抗で作ったフォノイコライザだととても難しい部分、だけど、デジタルなら一発。

最終的に調整したフィルタ係数は、当然ながらそのカートリッジ専用になるので、カートリッジを複数取り換えるなら制御するマイコンのプログラムで係数を切り替える、ということも可能。もちろん純粋RIAAカーブだけのも用意しておいてカートリッジの色付けと比較する、なんてこともできる。

メジャーなカートリッジについてはデータを用意し、特別なやつは実際に測定して係数を追い込むサービスもつければ、ショーバイになるかしら(ならないなきっと…)。まあハイエンドなお客さんのデジタルアレルギーを取り除くほうがはるかに難しそうだけど。うーむ。


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