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ロケぅとはどう制御され、誘導されるのか?

※この記事は2022年4月12日にstand.fmで放送した内容を文字に起こしたものだ。


前回はロケットの軽量化について解説をして、具体的な方法にロケットエンジンの「多段化」や小型エンジンを束ねて作る「クラスターロケット」について紹介した。

では、そうして軽量化したロケットは、打ち上げの際どのように制御・誘導されて宇宙へ向かうのか?というのが今回の本題である。

まずはロケットの制御について。

ロケットの姿勢や方向を変えることを「制御」というが、制御の方式には空気翼法、噴流翼法、2次噴射法、副エンジン法やガスジェット法、首振りエンジン法などがある。

それぞれかんたんに説明すると、空気翼法と噴流翼法は、ロケット開発初期に考えられた方法で現在はどちらも使われていない。

2次噴射法は、ロケットのノズルに気体や液体を吹き込んで噴射ガスの方向を変えようとするもの。ロウソクに息を吹くと火のたなびく方向が変わるのと同じように、ロケットの噴射ガスに対しても、特定の方向に力を加えてあげることで噴射の向きを調整することができる。

そして副エンジン法とガスジェット法だが、これはノズルのまわりに制御用の小型エンジンまたはガスジェットを複数装着し、それを噴射することによって制御しようというものだ。エンジンをエンジンで制御するということなので難易度は高いが、その分細かい調節が利くのが利点だである。

最後は首振りエンジン法で、これはロケットエンジンそのものやノズル全体を動かすことによって制御しようという方法だ。

身近に例えると、パソコンに使うマウスには、内蔵されたボールを使ってスクロールできるタイプのものがあるだろう。ボールそのものを転がすことで接続したポインターも一緒に動く。首振りエンジン法もそれと似たようなものだ。
これは現在、多くのロケットで使われている制御法の1つとなっている。理由はやはり、調節がしやすい上にコストもあまりかからない点だろう。少しでも費用を抑えて開発したいと考えるロケット開発者にとって、首振りエンジン法はかなり重宝されているようだ。

次にロケットの誘導について説明しよう。

ロケットの誘導方式にはいくつか種類があるのが、もっとも一般に使われるのが「慣性誘導方式」と呼ばれるものだ。この方式で飛行することを「慣性航法」という。

これは、慣性センサーというジャイロと加速度計をロケットに積み込んで、プログラムされた軌道と自分の位置のズレを自分で判断し修正できるようコンピューターで制御するというものだ。
必要な機器をすべてロケットに内蔵するため地上との連絡を必要としない。そのため、システムが単純で運用が容易になる。加えて、他の誘導方式と違い誘導ができない領域というのもなくなるため、誘導精度が向上するという利点もある。

ロケットはただでさえ内部構造が複雑になりがちだ。これまでの放送でも解説してきたが、ロケットに使われる燃料を固体にするか液体にするかでもロケットの構造は大きく変わる。そのため、少しでも設計を容易にしようとシステムをなるべく単純化する試みは、信頼性や経済性の点からも非常に重要なことなのだ。

慣性航法はロケットによく採用される飛行方法ではあるが、当然デメリットも存在する。例えば、積み込んだ慣性センサーにトラブルが発生すると、打ち上げに失敗する可能性があるので、ジャイロや加速度計などの機器にの開発には高い技術が要求される。場合によってはこうした部品1つ作るだけで相当の予算を必要としてしまうだろう。

ロケット開発をしている国は先進国、それも科学技術を得意とする国が多い。その理由の1つは、やはりこうした技術力の高い部品を作る能力が育ってないとロケットは作れないことにあるようだ。

その点日本は、自動車製造で培った高度な技術力があるので、それを宇宙開発にも活かせると宇宙産業でもシェアを獲得できる可能性は十分にある。

問題は予算と場所の確保なので、そこは政府が今よりもっと支援・援助してくれるようになるといいだろう。ロケットの開発はミサイルの開発とほぼ同義なので、安全保障上の点から見ても非常に重要だ。

ウクライナ侵攻の情勢で、日本は軍事予算の見直しもせざるを得ない状況になっている。そこを宇宙産業の発展と結びつけて指揮できる政治があると、きっと評価は高いだろう。そのあたりを考えながら政治家を選んでみるのも1つのポイントだと僕は思っている。

参考文献:ロケットの科学 改訂版 創成期の仕組みから最新の民間技術まで、宇宙と人類の60年史 (サイエンス・アイ新書)


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