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ロボットが創り出す新しい世界のカタチ

※この記事は2022年3月30日にstand.fmで放送した内容を文字に起こしたものだ。


ロボットに対して皆さんがどんなイメージを持たれているか分からないが、少なくとも日本では未だ工場や建設現場などは人による作業が大半を占めているので、ロボットがどれくらい役に立つのかイメージしずらいと思う。ところがロボットの進化は、インターネットの発展と日本で起きた震災被害を皮切りに、今、急速に発展しているのだ。

2011年に起きた東日本大地震の影響で福島第1原発の原子炉が爆発し、周辺地域が放射線の被害にあったのは知っての通りだ。被曝した地域はまともに人間が作業できなかったので、当時からロボットに作業させようとする動きが出てたようだが、おそらく知っている人は少ないだろう。当時のロボット技術では、人間の代わりにロボットが作業するレベルまで達していなかったのだ。

重工業で知られるホンダでは、震災による原発事故を受けて、危険な場所でも復旧作業ができるようヒューマノイド・ロボット「アシモ」を導入をしていた。ところが、「アシモ」は本来、エンターテイメント用に開発されたロボットだったので、災害への対応はできず、広報的には大失態に終わってしまった。

これを受けて、数年後にアメリカ国防高等研究計画局(通称:DARPA)は、こうした危険な環境下でも作業できるロボットを開発しようと「ロボティクス・チャレンジ」というプロジェクトを立ち上げた。当初は、人間が5分でできる作業はロボットは1時間もかけてしまう有様で大変だったが、チャレンジで第2位になったボストン・ダイナミクス社の「アトラス」というロボットは、雪で覆われた森の中を歩いたり、ホッケーのスティックで殴られてもバランスを立て直すことができたりなど、実用化に十分な技術が備わっていることを世界に知らしめた。また、震災当時は批判の多かったホンダも、2017年には災害対応ロボットの試作品を制作し、ハシゴを登ったり、凸凹の地面を四つん這いで歩いたりすることができるような段階まで進化させることができた。

今ではこうしたロボティクス化の動きは全世界に広がり、AIとの融合でさらに高度な進化を遂げている。例えば、手術でよく行われるヘルニア修復や心臓バイパス手術などのサポートといった医療の分野から、畑で作物を刈り取ったり、果物を摘み取ったりする農業の分野、さらには工場労働者に取って代わるロボットまですでに作られている。

デンマークのロボットメーカー「ユニバーサルロボット」では、「UR3」という名のロボットが市場価格$2,3000で販売されていて、これは工場労働者の世界的な平均賃金とほぼ同じだ。ロボットは疲労知らずで、休憩・休暇も必要ないので、一台工場に取り入れれば、業務の効率化も見込めるだけでなく、人件費の節約にもなる。すでにテスラ、GM、アマゾン、フォックスコンといった自動車メーカーや小売メーカーは工場の完全自動化のため、工場内の労働者を次々とロボットに置き換えている。

またロボットで注目されているものといえばドローンだ。荷物配送から災害救助、植林に至るまで、プログラムで動く無人の飛行物体の需要は今後ますます高くなっていくと予想される。例えば、航空機メーカーのボーイングが開発した重労働向けドローンは、小型車を持ち上げることが可能なことから実際の現場でも広く用いられているし、ジップラインという会社は、ルワンダやタンザニアといった、まともな道路が整備されていないようなアフリカの地域に向けてドローンを飛ばし、輸血用の血液や医薬品の配送を行なっている。こうした動きが今後も加速すれば、アフリカ大陸の医療の質は格段に上がると期待される。

今話したのは、ロボットが産業に与える影響のほんの一部に過ぎない。今後はAIやVR、ARなどの技術と融合してさらに高度な仕事までこなせるようになる。今まで手間をかけて人間がやっていた仕事をロボットに任せられるとなれば、人間はよりクリエイティブな活動を今まで以上に行えるだろう。誰だってつまらない退屈な仕事はやりたくないはずなので、そういう世界を想像しながら今の自分の生き方を考えてみるのも面白いはずだ。

参考文献:2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ (NewsPicksパブリッシング)

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