【第9話】公表

病気のことを最小限の範囲内に留めるか、周囲の人たちへ積極的に知ってもらうか、人によって選択はまったく変わると思います。僕は、迷わず公表でした。

入院後、風の噂で病気のことを聞いた人たちが、心配の連絡をくれていたのですが、

「悔しくて涙がとまらない」
「なぜ◯◯さんがこんなことに」
「絶対に希望を捨てずにいてくれ」
「◯◯とはいろんな思い出があります」

え、おれもう死ぬの笑? って感じのものばかりだったり、逆に、まだ入院のことを知らない人たちからは、通常通りの連絡がきました。

「◯日の土曜、練習試合できないですか?」
「ちょっと気が早いけど3月3日を探してる」
「22日の夜、ヒマしてないかー?」

などなど…。そのため、着信やLINEが鳴るたびに、その内容がどちらなのかを察知して、感謝を伝えたり、事情を知らせたりすることが、僕の中では、けっこうなストレスだったのです。

だったら自分の言葉で「前向きですのでご心配なく」と公表して、周囲の皆さまに知っておいてもらえた方がよいのでは…と思いました。

SNS投稿後、周りからの連絡は激変しました。今後の日程調整のことは大幅に減り、病気のことを理解してくれた上での連絡に変わったのです。

「来年遊びに行くからねー!」
「元気なときにでも返信ちょ」
「前向きなようで安心しています」

本当に有難いメッセージばかり。僕にとって大きなチカラになっています。皆さまの優しさに甘えて、心配なく治療に専念できるようになった僕としては、やっぱり公表は正解でした。

ただ、これは、僕が病気のことを悲観していないからできたことでもあると思います。病気の種類や大きさによっては、まったく違うことをした可能性もあります。

どちらにせよ、いつだって僕がやりたいようにやって、それを「僕の正解」にしていけたら、それでよいと思うのです。

ひとつ失敗談。SNS投稿後、「親戚のおじさんやおばさんたちには、直接伝えてからの方がよかったね」と妻から。いつもお世話になっている親戚が、電波をとおして流れてくる情報で知ることになってしまったからです。

(たしかに…。そこの順番は守れてなかった…でも、おれにそんな余裕はなかったしな…。でも、もうやっちまったものはどうしようもない笑。よし、退院の時は順番を守ろう)

2023.11.5

【第10話】へ続く

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