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私とダノン。

マイルチャンピオンシップの週になった。Xのタイムラインは、既にエリ女の残り香すら感じない。競馬ファンの切替の速さは異常である。

今年もなかなかのメンバーが集まったようで、おそらく1番人気はセリフォスかシュネルマイスター、それに続くのがモレイラ騎乗のソウルラッシュと、ムーア騎乗のナミュールだろうか。

近年の競馬ファンは馬券が本当に上手で、オッズ通りに走ることが多い。G1に至っては、力関係を俯瞰するのにオッズは大変便利だ。「まあそうだろな」というオッズで最終的に着地する。

タイトルに示した、ダノン。

個人オーナー「ダノックス」の冠名で、マイルチャンピオンシップではダノンスコーピオンとダノンザキッドが出走する。

何人かの友達や親しいフォロワーさんはご存知かと思うが、僕はダノックスの箱推しをしている。ほかの競馬ファンより、ダノックスの馬が1.3倍強く見える眼を持っていて、基本的にダノックスは誰にも負けない。という気持ちでレースを見ている。

ダノンを好きになったきっかけは、2010年のNHKマイルカップ。ダノンシャンティを見たことだった。

通算成績8戦3勝。G1勝ちはNHKマイルカップのみ。まあ、よくいるNHKマイルカップだけ勝った存在感の薄いG1馬である。

勝利したNHKマイルの映像は、youtubeにきっとあるから見てほしい。一言でいうと「ダノンっぽいなぁ!」だ。

上がりは他の馬より1秒も速い33.5。直線では他馬が止まって見えた。競馬3年生だった僕には、キレキレの末脚を持つダノンシャンティがたまらなくかっこよく見えた。これだ、この馬が一番だと思った。

アラサーやアラフォーの競馬ファンは覚えていると思うが、2010年の牡馬クラシックは非常に豪華だった。ローズキングダム、ヴィクトワールピサ、ヒルノダムール、エイシンフラッシュ、ルーラーシップなど、後にG1級を勝つ馬が、春のクラシックから鎬を削っていた。

松田国英厩舎所属のダノンシャンティも、その1頭だった。どういう背景だったかは覚えていないが、最終的に「松国ローテ(NHKマイル→ダービーの変則2冠狙い)」で日本ダービーに向かうことになった。

日本ダービーの週。月曜日から楽しみで仕方なかった。ダノンシャンティがきっと誰よりも脚が速いはずだ。鞍上はダイワスカーレットに乗っていた安藤さんだ。きっと直線で突き抜ける。

週中、枠順が確定した。大外18番だった。今なら「やばい」と思うが、もうそんなの気にしてなかった。ダービーは前々日から馬券が発売される。ダノンシャンティは3番人気だった。ちょうどいい。

そしてダービー前日。

競馬はタラレバが多い競技だ。

もしダノンシャンティがダービーに出ていたら?と何度も考える。競馬の知識もついた今なら、フジキセキ産駒で2,400ⅿなんてお世辞にも推せるものではない。ただ、もしも無事なら、と思うのがやめられなかった。競馬歴の浅さの表れだとも言える。

競争馬の骨折は、サッカー選手の靱帯断裂、野球選手の肩の手術に似ている気がする。カムバックすることはできる。ただ元通りかというと、必ずしもそうではない。ダノンシャンティも例外ではなかった。その後勝利することはなく、ターフを去った。

ダノックスからは、その後たくさんのG1馬が生まれた。ダノンスマッシュ、ダノンシャーク、ダノンプレミアム、ダノンキングリー、G1は勝てなかったけどダノンファンタジー。どの馬も素晴らしかった。今のように明確な理由はないまま、僕は何となく贔屓にしていた。強く見えたし、強かった。

あれから12年流れ、2022年のNHKマイル。ダノンスコーピオンが出走した。

なんとなく、意地を張ってこの馬を買いたくなった。もっと強い馬はいるし、前哨戦だってそこまで強いかといわれたら、「?」だった。意地の原因は言いたくないが、言わなくてもわかる。同行していた人に「絶対ダノンスコーピオンが一番強いから、勝つから」と根拠のない勝利宣言をした。

結果はあの時と同じ。詰め寄られはしたが、ダノンはNHKマイルカップを勝った。馬券は大した金額にはならなかった。ただとてつもない充実感がそこにはあった。とても満たされた気分だった。

結局のところ、自分の競馬との接し方は初めから何にも変わっていない。

見たい景色、見たいドラマを馬に重ねている。

それはとても勝手なことで、馬にしたら「知らんがな」という話だろう。レースの一つ一つに自己の理想があり、それを追いかけている。

それは馬の一生にまで及んでいる部分もある。因縁や敵討ちという文言が出てくるのも、人間の作ったドラマのせいだ。

逆に言えば、だから今日まで競馬を続けているとも言える。そりゃ誰しもお金を賭けたなら当てたい。勝つ馬が決まっていれば知りたい。だから予想は売れる。ただそれなら投資信託にお金を突っ込んだ方がお金が増える確率は高い。

僕も過去に予想家さんみたいなことをやってみたいと思ったが、出来なかった。勝ちたいなら、馬券は買わないほうがいい。(それでもプラス収支の予想家さんはすごい。尊敬する、

思い出や、ロマンに少々のお金を乗っけてみる。

これからもきっと
そんな風に、競馬と接していくだろう。

そしてダノンが一番強いんだと。
懲りない僕は、今週も高らかに宣言するのである。

2023年マイルチャンピオンシップ

◎ダノンスコーピオン
◎ダノンザキッド

#競馬
#マイルチャンピオンシップ
#エッセイ




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