「独断と偏見で推す テキレボでオススメの吸血鬼小説」


Text-Revolutions Extra 2
2020/12/26(土) 21:00〜2021/01/11(土) 23:59
テキレボEX2(オンライン開催)

「独断と偏見で推す テキレボでオススメの吸血鬼小説」
イベント総合案内ページ
https://text-revolutions.com/event/

(カタログページ)
https://plag.me/c/textrevo_ex2

 いちおう、吸血鬼ものマニアを自称しているので、このような記事を書いてみました。
 拝読していない作品は掲載しておりません。すべて拝読した上で、推す作品ですので、吸血鬼ものが好きな方は是非購入をご検討ください。
 一次創作同人誌界における吸血鬼小説の振興と発展の一助になればと願っています。
 おもに吸血鬼もの好きな私のために。
 ちなみにこの記事では、私のサークルの作品は掲載しておりません。
 自己宣伝は含まれておりませんので、安心して(?)お読みください。
 奇特にも私の書く吸血鬼小説や吸血鬼映画解説本にご興味のある方はテキレボのカタログページで「バイロン本社」で検索をかけていただけると幸いです。

★★★★★

「【ライトノベル】ネナトウーラ アイドルの怪異事情」人生は緑色
https://plag.me/p/textrevo_ex2/7553
小高まあなさん(@kmaana)

 まあなさんの全作品を拝読したわけではないのですが(それでも10作くらいは拝読しているはず)、じつは本作はこっそり新機軸なのではないかと思ったり。
 まあなさんの作品には友人でもなく、恋人でもないある種の絆が描かれていることが多いと感じているのですが、本作は恋愛が主題のひとつになっている!
 アイドルとしての「好き」と、人生をともに歩む対象としての「好き」が書き分けてあって、さすがだと思います。
「ある数字」にまつわる齟齬も、ほんとにするっと紛れ込ませてあって、「あれ?」と思いつつ読み進めていくとそれも巧く本筋に絡まっていく。
本当に巧いな……いやもう、メンバーの書き分けも含めて「巧い」としか出てこないんですが。
 エピローグ的なインタビューで、本作の物語としての輪は閉じていますが(ダイアナさん、一般人のところも含めてよかった……)、はた迷惑な父親のせいで不発のまま眠ってるネタは転がっていそうだし、これは外伝もあり得るかな、と思ってるんですがどうでしょうか。(その後、Webで短篇は拝読いたしましたが、怪異がらみの作品もまたお願いします)
 個人的にはシューくん推しってことで。

★★★★★

「【ライトノベル】【ローファンタジー】吸血鬼もどきはシーツをかぶり」イヌノフグリ
https://plag.me/p/textrevo_ex2/8843
ωさん(@UselessArts)

 取り立てて大きな事件は起こっていない日常回短編集、といった趣。
 事件は起こっていないけれども死にかけたり死んでしまったりなにか得体の知れないものにぱっくりされたりはします。それもまあ、日常ですね。
 作者のご趣味なのか、悲劇もあまり悲劇性を強調せずに淡々と描かれているんで、主人公が自分の境遇になにを思っているのかもはっきりとは言及されていませんが、比較的現状に馴染んでいるようで……いまのところ顔見せだけのキャラとか以前お見かけしたキャラの意外な側面が垣間見られました。
(「【ライトノベル】【ローファンタジー】無能探偵アライバルシリーズ 3冊セット」
https://plag.me/p/textrevo_ex2/10127  こちらの作品に関係者が登場します)
 驚き(?)だったのは三つ編みの人(「剣の聖者」と呼ばれる人の姿をした凶器)がわりと真面目に社員教育してたところですね。なんか出会い頭真っ二つ、終了。(探偵の出てくる話の印象です)みたいな人かと……テキレボで続きも出るらしいんで、今後のみなさんの活躍に期待したいと思います。 冒頭で主人公が「手遅れ」になってから話が始まってますが、このあたりの因縁も語られるのか、ないのか、なんで「まさし」が「まさこ」って呼ばれてるのか、とか、いろいろ気になるところですね

★★★★★


「【ローファンタジー】オーバー・ブラッド-不老不死の夜-」教授会
https://plag.me/p/textrevo_ex2/8867
紗那教授さん(@prof_shana_GG3S)

 人外が人工の人外によって駆逐されつつある時代、種族の存続をかけて、人ならざるものたちが暗躍する。
 いまは敵としてまみえる主人公達の恋愛や、兄弟対決などありますが、愁嘆場にはならずにアクションでとばします。 凝ったギミックつき武器と異能の肉弾戦。映画「アンダーワールド」「ブレイド」「ヴァン・ヘルシング」あたりのアメコミっぽいノリが小気味よい。
 しかし、道ならぬ恋の行方とか囚われの女王の件とか人狼と吸血鬼のコンビの活躍とかいろいろ気になることがあるんですがこれ、続くんですよね???
 一応、本作の「事件」は解決で一区切りはついていますが……
 続きが読みたい人(^.^)/
 ってことで、よろしくご検討をお願いいたしたく……

★★★★★

「【ローファンタジー】【百合】【伝奇】カルミラ族の末裔」ミルフィーユ
https://plag.me/p/textrevo_ex2/4966
伊藤裕美さん(@itoyumille)

 どの翻訳書でもいい、レ・ファニュの「カーミラ」の小説を窓辺に置き、石榴石を透した満月の光でその本を充たし、頁を開けば、読者はきっと、その本に「カルミラ族の末裔」を見いだすことになる……

 と、書き出しましたがもちろん、「カーミラ」をご存じなくてもかまわないと思います。
 「カーミラ」をご存じなら、冒頭の「旅先で難渋して、貴族の屋敷に逗留することになる謎めいた美しい乙女と、彼女に心引かれる貴族の娘」「貴族の娘によって綴られるたおやかな手記」「スピエルドルフ」だけで、すでに抗いがたい引力を感じるでしょうし、ご存じなくても「性別を越えた中性美の乙女」「寄宿舎に集う少女たち」「紅の鴉を友に時計塔に棲む謎の麗人」「家のために大人になることを強いられる少女たちの哀しみ」……そういうキーワードに魅惑を感じられる方も、一読のこと。
 もちろん「乙女たちの秘めやかな血の交歓」……このキーワードも外せません。
 いずれにせよ期待を裏切られることは決してありません。

 物語は全編、複数人の少女たちによる手記で綴られています。
 たおやかで典雅な言葉遣いで綴られる、少女と「カルミラ族」との交流と交歓……その合間に垣間見える社会や家族に対するある種の諦観、あるいは「大人になること」に対するぼんやりとした不安。少女たちの哀しみと、その胸の奥に宿る激情の炎。
 直截な表現を排除しつつも、菫の慎ましやかな姿と香りとともに燻る官能美。

 読者は、紅の鴉を友に時計塔に棲む麗人「リデル」の謎を、寄宿舎の女学生ペネロピーとともに追い、いまだ人であったリデルとカルミラ族のラウラの出会い、そして絶望に彩られた再会、鴉のシルディンとの甘やかないたみに満ちた絆……それらの物語を知るうちに、読者もまた、みずからが「カルミラ族の末裔」であったことを知る。

 逃れがたく美しい少女たちの「愛」の物語。
 シルディンとリデルの、主従を越えた絆は……済みません、どう表現して良いのか……官能と背徳、分かちがたい結びつき……素敵です。
 原典「カーミラ」で、カーミラが六歳になる前のローラの夢の中に出てくる、冒頭のエピソードにも(原典では、なぜカーミラが幼いローラの寝室に現れたのかについての言及はない)ちゃんと理由が与えられていて、芸が細かいと思いました……!
 あと、コルセットに際立つ繊細な書き込み……神は細部に宿るとはこういうこと……!!

 続編としての短編集も出ていますよ!

「【ローファンタジー】【恋愛】【現代】続・カルミラ族の末裔1「血と菫」」
https://plag.me/p/textrevo_ex2/8779

★★★★★


「【伝奇】conducatorul intunecat 1 悪魔の子の血族」ナイスボート観光
https://plag.me/p/textrevo_ex2/9861
ミドさん(@mid_rhimthy)

 家族の理不尽と、人の世の理不尽に紛れ込んでいるのは、人外。
 人の世界と、人の血を求めながら、同時にそれらを切り捨てている存在。
 けれど、その在り方が異質に見えないのは、作者の描く世界が時に人外よりも残酷だからでしょうか。
 それとも、作者の描く人外が、時に人の温かさを垣間見せるからでしょうか。

 歪さを抱えた家庭に翻弄される大貴族の娘の物語、第一次大戦下のルーマニア王国、脚色こそあれ、実際の世界史を横糸に、虚構の存在、ドラキュラの暗躍を縦糸に紡がれた物語。
 ブラム・ストーカーの「ドラキュラ」の登場人物たちが、ルーマニア王国の王族や貴族たちの足跡につかず離れず重なってゆく……作者の手によって織りなされる文様の妙。
 伝奇小説を読む快楽が、ここにあります。

 作者の手にかかれば、実の娘に対する仕打ちが酷いとしか言いようのないクレトゥレスク公爵も父親に翻弄される娘のエカテリーナも、第一次大戦でルーマニアにやってきたロシアの将軍も、大貴族でありながらも自身の無力に苛立つブズ青年も、非常に魅力的に描かれています。
 もちろん、虚構側の人物たちは言うまでもない。
 ドラキュラやハーカー夫妻の息子、ドラキュラに随う魔女、あるいは陣営を異にする吸血鬼。

 さまざまな思惑と愛憎のゆくすえを見届けるためにも、是非、、まずはこの1巻目を手に取ってみてください!
 しかも、テキレボでは二巻目が登場するとのことです。買わねば!!
「【伝奇】conducatorul intunecat 2 魔竜の覚醒【R18】」
https://plag.me/p/textrevo_ex2/9862

★★★★★


「暗夜にぞ輝く」暮亭
https://plag.me/p/textrevo_ex2/10041
壱岐津礼さん(@ochagashidouzo)

 吸血鬼とクトゥルー神話を見事に融合させた物語。
 予備知識なしでも問題ないと思います。もちろん、両方知っているとそこかしこに聞いたことのある名前が出てきて転げ回ること間違いなしです。
 暗躍する「公」、哀しみを秘めてただ夜を生きる「コンテェサ」。手を汚さずにすべてを操ろうとする無貌の神。
そして、自身の目を求めるヨグ=ソトース……すべての鍵は輝けるトラペゾヘドロン……
 って、これを全部盛りで調理できる人がいらっしゃるんだっていうのがまず驚きでしたね! しかも面白い。伝奇小説であり、秘やかな愛の物語でもある。
 非常に個性豊か……というより、能力的に厳ついキャラクターが揃うなか、自身の与り知らぬところでその身を争奪される主人公は、人格的にも能力的にも非常に「普通」の娘さんなのですが、周りで暗躍する人々(半分以上は人外)がそれぞれに濃いゆえに、無垢さの際立つ存在として、キャラが立っています。
 そしてこの無垢さゆえに、ラストの彼女の選択が美しく、哀しく、かつ満ち足りたものとして読者に訴えかけるのです……
 では、主人公の周囲が邪悪……何者かへの悪意に満ちた人々なのかと言えばそうではなく、自身の望むところに純粋であるだけなので、やっていることはなかなか酷かったり死者数が半端なかったりするのですが、どの登場人物にも、読者が「好感」できる隙があります。
 壱岐津礼さんの御本を手に取る最初の一冊としてオススメ。

 本記事は、「一次創作の吸血鬼小説をオススメする」というのを基本にしているのですが、二次創作では、こちらもオススメです。
「永遠の放浪者」(吸血鬼ハンターD 二次創作)
https://plag.me/p/textrevo_ex2/10042

★★★★★


「永いメイドの手記 全三巻」P-Achira
https://plag.me/p/textrevo_ex2/6336
稲見晶さん(@Inami_Akira)

 赤子のおりに吸血鬼に拾われ、王宮の片隅で育てられ、長じて吸血鬼の屋敷でメイドをすることになった少女の物語。百合小説と表現するのでしょうか。吸血鬼ロザリーとイラの交流譚。
 主人公のイラの見ている世界は、ただひたすらに美しく、時折垣間見える政争、国家間の戦争、疫病……そういった浮世の盛衰も、主人であるロザリーが優しく……そう、ひたすらに優しく、目の当たりにしないように計らってくれる。
 そう……友人だとも思っていたテイラーさんを看取る、その悲しみを除いては。
 そして、最終巻ではとうとうイラも人間世界に巻き起こる嵐の余波を受けることになります。

 イラとロザリー、お互いに恐縮し合う仲なので、拝読しているほうとしては「いや、そろそろ長いお付き合いなんだからもうちょっと素直になっても良いんじゃないの」なんて思ったりもするんですが、この、お互いに想い合いながらも積極的に踏み込まないところが可愛らしいんですよね。
 主人公が受け身で、主人の与える選択肢を喜びとともに受け入れる話の流れであるがゆえに、もどかしさは募るばかりではあるのですが、友人の死、政権交代といった内外の動きが主人公に与える影響と、成長にも注目の作品です。

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