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事業用不動産の買い方

当方所謂デベロッパーと呼ばれる仕事をしております。以前は東京のど真ん中に土地を買ってオフィスビルを開発していました。今は首都圏やや郊外で商業施設を作っております。今回は事業用の不動産の買い方について書こうと思います。

1.何を目的に買うのか? 開発素地/収益物件

まず目的により以下に大別され、チェックポイントも変わってきます。
●開発素地
建物を建てて賃貸/売却する、土地を事業者に貸す等既存の状態に手を入れて収益を生む物件にすることを目的に購入します。(基本的に購入した状態では収益は生みません。)
●収益物件
現状で賃貸収入等を生んでいる物件を購入してその収益を得ることを目的に購入します。(暫くの間は手をかける必要はありません。)

2.購入前のチェックポイント

収益物件のチェックポイントはある程度一般化されていると思いますので開発素地として物件を購入する場合の手順についてご説明します。

①用途のあたりをつける
開発を行ってどのような用途の建物を建てるかを検討します。オフィス/商業施設/住宅/物流施設/データセンター etc…色々とあります。何がよいかは周辺の利用用途をみればだいたい判断できます。(住宅地のど真ん中にオフィスは建てませんよね)またそもそも土地には用途地域というものが決まっており、場所によって何が建てられるかは予め制限されています。
用途地域一覧)東京都都市整備

②マーケットチェック(賃料)
次に周辺の賃料相場を把握します。月額坪あたり●●円というような単価をチェックします。プロは場所と用途で凡その賃料単価が分かります。特殊性の強い土地であれば直接需要がありそうなテナントにヒアリングします。WEBでも十分に情報収集できます。以下お役に立ちそうなもののリンクを貼っておきます。
オフィスマーケット(三幸エステート)
住宅マーケット(HOME’S)
商業施設(日本不動産研究所×BAC)
物流施設(CBRE) 

③マーケットチェック(利回り)
事業計画を立てる上で必ず必要になるのが出口戦略(要はいつ、いくらで売るか)です。そのためには開発した物件がどの程度の利回りで取引されるのか知る必要があります。最も参考になるのは実際の取引事例です。J-REITは情報開示の義務があり、売買した物件の利回りデータを開示していますのでJ-REITのHPからアクセスして売買事例を確認するのがよいと思います。また日本不動産研究所は毎年投資家に対して期待利回りのヒアリングを行っています。ここでは将来的な利回りの見通しがプロ目線の数字で出てくるので参考になります。
J-REIT.NET(J-REITの売買事例が簡単に確認できます。)
日本不動産研究所

④プラン作成
土地をそのまま貸すという場合もありますが、建物を建てて賃貸する場合建物プランを作成する必要があります。こればっかりはプロの設計士に依頼するしかありません。どの程度の面積の建物が建築できるか検討することをボリュームチェックと言います。費用は用途によっても変わりますがだいたい数十万円くらいと思います。

⑤物件の確認
①~④を行い収入が確保できそうな案件であれば物件の状況を確認していきます。以下の点に着目して確認すればよいと思います。(多いですが)
・権利関係
登記簿にて所有者及びその他債権者の確認

・地積、接道状況
実測図を入手し、土地面積、前面道路幅員等について確認します。これによってプランが変わってきます。

・境界確認
隣地との境がどこであるか確認します。境界標があるかどうか、また隣地所有者全てとの間で境界確認書が取り交わしてあるかどうか確認します。

・越境物
隣地から購入しようとしている土地にはみ出しているもの(木の枝や、エアコン室外機がはみ出しているケースが多いです。)がないかどうか確認します。越境物があった場合でもすぐに是正することは難しいので将来撤去できるときにしてねという主旨の覚書を交わします。

・埋蔵文化財
文化財保護法によって埋蔵文化財包蔵地において開発事業を行う場合には教育委員会に事前の届出を行うことが定められています。埋蔵文化財包蔵地かどうかは各県の教育委員会のHPで確認できますのでチェックしておきましょう。

・土壌汚染
これまでの活動履歴により土地が鉱物や薬品等により汚染されている場合があります。汚染があった場合どのような対策を取るのか話始めると長くなりますのでここでは割愛します。工場やガソリンスタンドに使われていた場合かなりの確率で汚染されています。

・地質、地盤確認
活断層の有無や、地盤の固さを調べます。確実に調べるにはボーリング調査が必要ですが簡易にWEBでも調べることができます。地盤が軟らかいと工事で杭の長さが長くなり工事費UPに繋がります。

・公拡法届出の要否
公有地拡大推進法という法律がありまして、一定規模以上(市街化区域内:5,000㎡以上、市街化区域以外の都市計画区域10,000㎡以上)の土地を売買する際に行政が優先的に取得(交渉)することができるという法律です。防火上どうしても空地にしておいたほうがいいとか公共上の理由があれば行使される権利です。対象地の場合は知事あての事前届け出が必要で届け出から3週間は売買ができません。広い土地の場合は予め売主から届け出が必要なのでよく確認しておきましょう。

次回は売買契約締結~引き渡し時のチェックポイントについて解説したいと思います。​

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