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食べる女

監督:生野慈朗
公開年:2018

 この映画は簡単に言うと、「人それぞれ事情を抱えた中で、もがきながら生きていくしかないよね。 おいしいもの食べてさ」っていう映画。(笑)

 この映画に出てくる女性たちは、各々、主に恋愛の事情を抱えながら生きている。最愛の人をなくした女、夫に家を追い出された女、離婚した夫を引きずり続けている女、恋愛をあきらめた女、ついついいろんな男と寝てしまう女、彼氏にときめきを感じなくなってしまった女。

 そんな女たちに小泉今日子演じる「モチの家」の主人、敦子が声をかけるのだ。

 人ってね、おいしいごはん食べてる時と、愛しいセックスしてる時が一番、暴力とか差別とか争い事から遠くなる。セックスは相手がいないとできないけど、ごはんはいつでもできる。
 だから、手抜きをするな、女たちよ

 料理=食べること=何か、を描いた作品は多くあるが(南極料理人、かもめ食堂、等)、この作品は女性にスポットを当て、恋愛=セックスを重ねるように描いている。

 ”食べる”というのがダブルミーニングになっているかは各々の解釈次第だと思うが(さすがに襲う=食べるとして、食べる女と表現するのは下世話すぎる気がするので)、食べる女性を描くことで、懸命に前へ進もうとする様子を表現したかったのではないだろうか。

 本作、小泉今日子、鈴木京香、沢尻エリカと、豪華女優陣がラインナップされている。お芝居も素晴らしかった。ちょっともったいなかったのは前田敦子。こういう、日常を生きている中で、少し影を出す、というのは難しい。(イニシエーションラブの時の前田敦子は素晴らしかった)。

 最後に、ずっと枯れていた井戸が最後で、再び湧く、という演出があるのだが……情景描写として、女性が生きていく様を、井戸に例えるのは、直接的すぎないだろうか(笑)


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