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無難なチキンレース


深夜なのでそういう人もいる
  • メルカリに出している本が売れたのでコンビニへ発送しに行く。歩いてもいいが、微妙に遠いので車に乗る。

  • 深夜は車が少ない。後続車がいないので信号が青に変わるタイミングを待ちながら惰性でずるずると車を進められる。私はこの惰性で動いている時間が好きだ。エンジンブレーキだけで減速し、青に切り替わる完璧な瞬間を狙う。ブレーキを踏んだ瞬間が負け。誰と競うこともない、無難なチキンレースだ。

  • コンビニの入り口では若い男性店員がモップをかけていた。私が入っても無言だった。深夜のコンビニバイトなので仕方がない。レジ前に行くとおばさんが奥から出てきて手早く処理してくれた。おばさんは異常に声が小さかった。男性店員はまだ入り口でモップをかけつづけている。同じところばかり掃除してどうしたいのか。男の横を通り過ぎるとき、下を向いて何かしゃべっているような気がした。

  • 車に戻りエンジンをかけ、ひと仕事終えた軽い満足感に浸る。隣に停まっていた軽自動車にはスーツを着たサラリーマンが口を開けて眠っていた。後部座席には仕事道具なのか生活用品なのか、雑多な品が散らかっていた。寝るのなら店舗から離れた場所のほうが眩しくなくていいのにと思ったが、訳ありっぽいので気にしないことにした。奥の方の駐車場にもライトを点けっぱなしの黒いハイエースがいる。こちらはもっとやばそうなのであまり見ないようにした。車を出すとき、代行のタクシーが暴走気味に左から突っ込んできて危なかった。

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