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3-4 高等専門学校の未来

前回は

高等専門学校を取り巻く情勢

 色々な経緯を経て成立した高等専門学校ですが、高度成長期には、その速成の機動力が生かされて、一定の成果を挙げました。

 しかし、その後高校までの進学が義務教育並みに上昇し、高校までの就学人口のほぼ半数が大学まで進学する状況になるにつれて、その立場が微妙になっていきます。また、国の政策として進められた特殊性ゆえに、国立高等専門学校が計画的に配置されたのに比べて、公立や私立には設置の機運が広まらず、未だに大半が国立学校です。また、初期に設立された私立高等専門学校については、大学進学が一般化する情勢に合わせて、高等専門学校を母体として大学化したものもあります。

 現状では、国立では独立法人化や統合を経て、学校数で51校に、公立と私立はそれそれ3校と、どの設置主体についても最盛期よりも数を減らしています。

高等専門学校の進路の多様化

 この様な情勢に合わせて、高等専門学校についても、変化が生まれます。

 先ずは、卒業生を対象とした国立大学への編入学の制度の恒常化です。これは、東京大学を始めとした国立大学の工学系学部で、高等専門学校の卒業生を対象とした3年次特別編入学の制度が行われる様になり、就職以外の卒業後の進路が開けることになります。

 続いて、高等専門学校の卒業生を対象とした技術科学大学が全国に2校設置されました。この大学は、定員の大半を、高等専門学校卒業生対象の3年次編入学に振り分けていて、修士課程までの4年を標準の学修期間として、現在の工学系の技術の高度化に対応させたカリキュラムとなっているのが特徴です。

 近年は、高等専門学校自体も、卒業生を対象にした2年制の専攻科を設置する様になり、現在ではほぼ全ての国立高等専門学校に設置されています。この専攻科を修了する事で、学位授与機構の審査を経て学士号が授与され、大学卒業と同等に扱われることになっています。

 現状の高等専門学校は、5年制の特別な教育機関というよりも、高大接続の7年制高等教育機関と位置付けてもいいような状況になって来ているのではないかと思います。

高等専門学校の未来

 単線型の教育制度の中にある異質性故に、常にマイノリティの立場に置かれている高等専門学校ですが、進行する少子化のあおりを受けて、学生募集にも苦労しているようです。ただ、徐々に単線型の区分に組み込まれる部分が増えてきている事もあって、今後専攻科の更なる充実や、大学編入による大学院までの一貫教育の利点などを強調することで、大学入試に振り回されない学校種別である事が理解されれば、それなりの学生を集めることが出来るのではないかと思います。今後の高等専門学校関係者の奮起に期待します。

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