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2021年読書日記その3

『真夏の雷管』by 佐々木 譲

佐々木譲といえばハードボイルドやミステリーの人気作家ですが、その著作群の中で最も好きなのは北海道警察を舞台にした「道警シリーズ」。道警で実際に起こった不祥事をテーマにした1作目『うたう警官』(いまは『笑う警官』に改題)から始まり、不祥事の影を引きずりながら1冊ごとに完結するスタイルをとってきました。なお、「うたう」とは密告の業界用語でして、北海道警察の不正を暴こうとした北海道警察の面々を主要人物に据え、警察世界をリアルに描いて物語が展開します。スーパーヒーローが登場することなく、カタルシスも多くはないですが、臨場感あふれ、濃い時間が流れ、重厚かつ魅惑的な連作となっています。

その8冊目がこの本。今回はJR北海道の不祥事をベースにした元社員と鉄道好きの小学生が心通わせながら犯罪を計画し、主人公らがいかに防いでいくかというストーリー。毎回毎回大きな罪と悪にまみれた組織に抗うところがしびれます。シリーズを重ねるにつれて当然年月が経過するわけですが、時間を重ねることで登場人物の生活や心情が変わっていくところも見ものです。性根の座ったミステリーをお好みの方にはぜひぜひ読んでいただきいです。


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