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2020年読書日記33

『コロナ後の世界』by 世界の知性6人のインタビューを大野和基が編集

新型コロナウィルス感染はいつ終息に向かうのでしょうね。ロシアでワクチンが承認された、ファイザー製薬のワクチン臨床試験で抗体の発生が確認できただなんてニュースは入ってきますが、まだまだ見通しが立たないのが現状です。本屋さんに立ち寄ればよくもこの短期間(約半年)にこれだけの文筆が生まれたなと感心するくらいのコロナ関連書が並び、人々の最大のトピックスだと改めて感じるわけですが、本書もそのひとつ。わたしは新聞広告に載っていたのを見つけて手に取りました。

その理由は著者の顔ぶれ。文藝春秋が雑誌用にインタビューしたものを編集しているため「著者」とくくるのは正しくはないですが、あえて著者とすると、ラインナップがすごい。以下、Amazonに載っている紹介文からです。

・ジャレド・ダイアモンド「21世紀は中国の時代にはならない」
(カリフォルニア大学ロサンゼルス校地理学教授。著書『銃・病原菌・鉄』)

・マックス・テグマーク「AIで人類はもっとレジリエントになれる」
(マサチューセッツ工科大学教授。著書『LIFE3.0 人工知能時代に人間であるということ』)

・リンダ・グラットン「ロックダウンが日本人の新しい働き方を生んだ」
(ロンドン・ビジネススクール教授。著書『ライフシフト 100年時代の人生戦略』)

・スティーブン・ピンカー「人間の認知バイアスが感染症対策を遅らせてしまった」
(ハーバード大学心理学教授。著書『21世紀の啓蒙 理性、科学、ヒューマニズム、進歩』)

・スコット・ギャロウェイ「パンデミックでGAFAはますます強大になっていく」
(ニューヨーク大学スターン経営大学院教授。著書『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』)

・ポール・クルーグマン「経済は人工的な昏睡状態。景気回復はスウッシュ型になる」
(ノーベル経済学賞受賞者。著書『格差はつくられた 保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略』)

惹起文いわく、「新型コロナウイルスが国境を越えて感染を拡大させる中、現代最高峰の知性6人に緊急インタビューを行い、世界と日本の行く末について問うた」。そりゃ読みたくなると思いませんか?

結論から申し上げると、そう長くはないインタビューを構成したものなので難しい内容をとても読みやすくしており、テーマからもたらされる印象に反して意外にカジュアルであっという間に読めます。それは◎。反面浅いって感じ。きっと長い時間かけられなかったインタビューが基なので仕方ないといえばその通りです。また、文藝春秋的には日本へのエールをいただくという主旨があったのだと推測でき、この状況を日本のプラスに転じることを解く内容が濃かった印象。その中で心に残ったのは、複数の知性が「レジリエンス」と言っていたこと。最近よく聞きます。流行りでしょうか? その意味は「弾力、回復力、復元力」であり、ビジネスの世界でひと言で表そうとすると、「どんな状況にも適応して生存を勝ち抜く」って感じでしょうか。一般論をキャッチーなコトバで表すとこうなった(苦笑)でしょうか。

とやや批判的な書評になってしまいましたが、世界最高峰の知性が6人考えていることが手軽にわかるのはよいです。決してお値段高くはないですし、それを本書最大のウリと考えれば及第点かと思います。なお個人的に最もおもしろかったのは、ポール・クルーグマンアベノミクスは完全な失敗だった、とするポール・クルーグマンが安倍首相の経済政策「アベノミクス」が大失敗だと断言しているくだりでした。


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