繰り返した先に見える光
中学3年生の受験期…だから、もう4年以上前のこと。
「行きたい高校ならどこでも行きなさいよ」
と言ってくれていた母に、ある日
「志望校を△△高校に変えたい」と打ち明けた。
自分なりに勉強法を模索し、日々勉強し続けていたが直前期になっても思うように成績が伸びず、不安で一杯だったのだ。
どこでも好きなところに行きなさいと言ってくれていた母ならきっと許してくれるだろうと思っていた…けど、
「〇〇高校(当時の第一志望校)くらい行ってくれないと情けないわ」
という予想外の返事が帰ってきた。
確かに、その時の母は酒に酔っていた。
だけど、なんとなく本心なんだろうと思った。
母が昔から私に期待してきたことはわかっていたから。
父と兄は「△△高校に行きたいなら行ったら良い」と言ってくれた。
もうどうしたら良いかわからなくなった。
私は食事を済ませて涙を堪えながら自分の部屋に戻り、再び黙々と勉強を始めた。
その夜、布団の中で聴いたあの曲。
夕日が僕を起こして
深い海に沈んでいく
僕の好きな夜がきて
暗い部屋で一人きり
ーー省略ーー
朝 夜の繰り返し
寂しくて空を見上げてみる
朝 夜の繰り返し
朝に眠る夜と夢を見る
SEKAINOOWARI(この曲が収録されているアルバムの発売時は世界の終わりだけど)の白昼の夢。
その時、セカオワは冬季五輪のテーマソングという名の応援歌として『サザンカ』をリリースしていたが、当時の私はその曲を好きになれなかった。
『サザンカ』は夢や目標に向かって頑張る人をそばで見守る家族や友人の目線で描かれた曲だ。
でも、私の中の応援歌はそういう曲じゃなかった。
何かと戦う人、苦しみの渦中にいてもがいている人の気持ちを歌い、聴いている人たちの心の内側をそっとあたためてくれるような曲こそが、私にとっての応援歌だった。
『白昼の夢』はADHDやパニック障害、精神薬の副作用で苦しんでいた頃のFukaseさんのことを歌っているのだと思う。
早く布団に入ってもそのまま眠れずに朝を迎えたり、一日中眠ってしまい起きたら夜になっていたり…
人々が眠る時間に目覚めて孤独を感じたり、人々が起きている時間に眠ってしまって絶望してしまったり…
ただ絶望的な朝と夜を繰り返すだけの日々。
もうすぐ僕の部屋に太陽が来る
もうすぐ僕の部屋に太陽が来る
この曲の最後のフレーズは"朝が来る"ではなく
"太陽が来る"。
この歌詞は絶望的な日常にも終わりがあることを教えてくれている。
何かが終われば、また新たな何かが始まることを歌い続ける彼ららしい歌詞。
このフレーズの2回目のFukaseさんの歌い方も本当に素敵。
諦めを感じて投げやりになっているようであり、暗闇の中に少し希望を見出しているようでもあり…何とも言えない歌い方をしている。
ここまでグダグダ書いてきたけれども、当時の私は出だしのFukaseさんの真っ直ぐな歌声を聴いただけで何かがプツリと切れたように涙が溢れて、布団の中で息を殺して泣いていた。
この曲を聴いて泣き、安心したかのように眠りにつく。
そんな夜を繰り返した。
合格発表の日。
全く手応えがなくて、俯き加減で高校に向かった。
周りから嬉しい悲鳴が聞こえる中、
私の番号がそこにあった。
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