パリOQT2023注目のブロック:高橋健太郎選手の「右脚踏み切りワンレグブロック」
日本男子チームは2023年10月7日のスロベニア戦でストレートの勝利を収め、パリオリンピックの出場権を獲得しました。
本当におめでとうございます!
ゲームそのものもとても素晴らしいプレーの連続で、ここまで素晴らしい感動を体験できるとは思わなかったほど、本当に凄い試合でした。
上に上げたXのポストは、セルビア戦で石川キャプテンが審判に詰め寄った場面のことで、テレビを見ていても何が問題になっているのか分かりませんでしたが、このポストで分かりました。チャレンジは「セッターの足」について行ったのに、映し出されたのは西田選手が接触した「アタッカーの足」だったので、見るべきものが違うというクレームですね(ただ、「中継には出たけど」と書かれていますが、tv.volleyballworld のリプレイには「アタッカーの足」の方しか映されていませんでした)。
で、注目したいのは相手セッターの足ではなく、日本チームのミドルブロッカー高橋健太郎選手の脚の動きです。
手前のレフトブロッカーの向こうで分かりにくいですが、右脚の片脚踏み切りでジャンプしているんですね。スパイクのブロード攻撃を踏み切りの特徴から「ワンレグ "one leg"」とも呼ぶように、こちらは「ワンレグブロック」と呼ばれています。
普通右利きの場合ブロード攻撃は右に走って左脚で踏み切ります。そうすることで体の右側を後ろに引いたテイクバックの体勢を取りやすくなるわけです。両脚踏み切りでもスパイクジャンプの最後の脚は普通左脚ですね。
よって「右方向に走って左脚振り切り」のワンレグジャンプは右利きにとって馴染み深いわけで、ブロックでそれを使う選手も珍しくはありません(例えば同じく代表の山内選手も時々使っています)。
ところが、この動画の高橋健太郎選手は全く逆の「左に走って右脚振み切り」のワンレグジャンプを使っているんですね。それも、こうやって動画で確認して初めてわかるくらいなんの違和感もなくです。そして空中で有効なブロックを用意できています。
ブロックで片脚踏み切りを使うメリットは、より早いタイミングで踏み切ることにより、より早くブロック面を必要な位置に作ることができて「間に合う」ということです。もちろん「空中移動」を使うわけですが、「空中移動のメリット」についてはバレーボールマガジンに書いた記事【ぬのTのバレーボール技術論 動作から見た「ブロックシステム構築」への道 3「スイングブロック」】で詳しく説明しています。
そして、ワンレグブロックでは、左足を着く前に右脚だけで踏み切るので、普通の両脚踏み切りのスイングブロックよりもさらに早くジャンプすることができます。
ブロック面を作るべき位置とタイミングによって、様々な状況にあったステップを選ぶことになるわけですが、いつどこにブロック面を作っておきたいか(ボールがいつどこを通りそうか)「ゴールが明確」だと結果的にそうなる、そのやり方を体が選んでくれるということが重要です。「どのステップを選ぶか」考える時間はありませんね。
以前の記事で、高橋健太郎選手は「ブロックは正面まで行って真上に跳ぶ」というようなことを言っていた気もしますが、もしかしたらこれさえも「正面まで行って真上に跳んでいる」という意識なのかもしれません。いずれにせよ、実際にやっていることは「少しでも間に合うために、できる限りのことをする」という極限を追い求めているんだと思います。
その姿勢こそ【基本】としたいですね。
(高橋健太郎選手だけかと思いましたが、アメリカの大ベテランミドル、スミス選手も日本戦で「右脚踏み切りワンレグブロック」をやっていました)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?