一生は一度きり

2016年5月 66歳だった父はすい臓がんでこの世を去った。告知から10ヶ月という本人にも家族にも残酷な結末だった。

泣く間もなく通夜、葬式を終え、自分の生き方を40歳目前にして考えた。祖父もがん、父もがん、自分も多分早いんだろう。一生は一度しかない。

「そうだ父のペーパーカンパニーを継ごう」

父は某メーカーの財務畑で香港とドイツの現地法人とそれぞれ5年、4年と要職を務め、帰国した直後に本体の業況が悪化し、リストラの担当が嫌になって会社を退職。その後某メーカーの海外工場の設立など財務や総務人事周り全てのバックオフィスの仕事を引き受ける現地法人の社長としてそれから10年近く東南アジアに単身で駐在。60歳前でその会社も早期退職し、海外リスクマネジメントのコンサルタントとして実家のある京都で1人で開業した。死ぬまで売上はなかった。別に頑張って営業するつもりもなかった。

会社人としては立派な人だった。私は心底尊敬している。個人的には性格が似ているところもあり衝突が絶えなかった。でも、そんなにストレスためて早く死んでしまうなら、もっと早く話こんでおくべきだった。ちょうど自分は40歳を迎える。このタイミングで背水の陣を敷こう。身一つで勝負したい。一から登記するより役員変更し、住所変更した方が少し安価で済むし父の形見として残せる。

こうして見よう見まねで登記手続きを独力で済ませ、2017年4月京都から東京に本店を移転、自ら代表となった。



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