【ルポ】名古屋のクラシックカーイベントが予想以上に大規模すぎた
『第2回COPPA CENTRO GIAPPONE』を観覧
2023年10月9日(月祝)、愛知県名古屋市にてクラシックカーを中心とする自動車イベント『第2回COPPA CENTRO GIAPPONE(コッパ・チェントロ・ジャポネ)』が開催されました。現地の様子をお伝えします。
第2回、とあるように当イベントは2022年に始まったばかりの新しい催し物です。1日限りの開催となりますが、古今東西、自動車の魅力がギューっと凝縮された濃密な内容でした。
COPPA CENTRO GIAPPONEの公式サイトはこちら。
開催場所
第2回COPPA CENTRO GIAPPONEは、愛知県名古屋市の中心街である栄・久屋大通公園で開催されました。
久屋大通公園は、栄を南北に貫く大通りの真ん中にある長方形の大きな公園で、県庁舎や市庁舎、名古屋城のすぐ近くに位置します。近年、公園の大規模整備が行われたばかりで、日頃から多くの人で賑わっています。書店にカフェなど、おしゃれなお店もたくさん並びます。
地下鉄「栄」駅や名鉄瀬戸線「栄町」駅など、電車やバスでもアクセスしやすい立地。駐車料金はあまり安くありませんが、クルマで立ち寄ることもできます。
当日はあいにくの曇り模様(ときどき小雨)でしたが、非常に広い範囲でイベントが行われていたこともあり、たくさんの人で賑わっていました。自動車メーカーやクラシックカーのオーナーだけでなく、名古屋市消防局やJAF、NEXCO 中日本、陸上自衛隊、大学のフォーミュラチームなどから多種多様な車両が参加していました。
当日のタイムスケジュール
10:00 イベント開始
マルシェなども開店11:00 開会式
11:30 ラリーカーによるエキシビション(第1回、有料)
13:00 市内パレード走行
101台が市役所や中心部を周遊13:30 ラリーカーによるエキシビション(第2回、有料)
14:00 消防音楽隊によるジブリ楽曲の演奏会
ジブリ作品の名曲を生演奏15:30 ラリーカーによるエキシビション(第3回、有料)
18:00 『カリオストロの城』野外上映
見どころが多すぎてお腹いっぱい…
幅広い層が楽しめるイベントに
COPPA CENTRO GIAPPONEは、クラシックカーを中心としたイベントです。クラシックカーを所有するオーナーさんが集まり、自慢の愛車を展示しながら趣味を同じくする同志たちと交流する場です。とはいえ、決して堅苦しい雰囲気ではありません。基本無料で見て回り、オーナーさんが近くにいればいろいろなお話を伺うこともできます。
名古屋大学のフォーミュラチーム「FEM」や同志社大学の「D.U.P.F」など、学生が制作したフォ―ミュラマシンも数多く展示されています。電動カートのコースも用意され、小さな子供たちがレーサー気分を味わっていました。幅広い年齢層の方がこのイベントを楽しんでいた印象です。
もちろん、目玉となるクラシックカーの展示も、控えめに言って素晴らしいものでした。
美しき欧州産クラシックカー
イタリア・トリノで生まれた美しいクーペ、ドライバーの頭の真後ろに巨大なエンジンを積んだスポーツカー、ル・マン24時間レースを争ったレーシングカー、イギリス貴族御用達の超高級車、かつて人々の移動を支えた大衆車など、ありとあらゆるクルマが一堂に会しています。
製造から半世紀以上経った今でも大切に保管されている希少車から、週一で乗り回しているという現役のマイカーまで、出自や経歴、状態もさまざま。ナンバープレートを付けている個体も多く、彼らは遠路はるばるやってきたのか、エンジンのぬくもりが感じられました。
普段は自動車雑誌でしか見られないような、貴重なクルマばかりで、1台1台に大変な価値があります。それを息のかかる距離で鑑賞できるなんて、クルマ好きにとっては至福のひとときでしょう(幸せでした)。
今回のイベントテーマの1つとして、名古屋市の姉妹都市トリノで生まれたクルマにスポットライトが当てられていました。すべてをご紹介することはできませんが、フェラーリやアルファ・ロメオが製造したモデルのほか、ピニンファリーナがデザインを手掛けたモデルなども見ることができました。
ほかにも、ルネ・ボネ・ジェットやアルピーヌといったフランス車、ジャガーやオースチンといったイギリス車も多数展示されていました。
「名誉の負傷」も輝かしい耐久レーサー
もう1つの目玉がル・マン24時間レースです。自動車メーカーとエンジニアたちが総力を結集して作り上げ、世界で最も有名な耐久レースでしのぎを削った、超ホットなマシンがずらりと並んでいるのです。
実際にレースで活躍してきた歴戦の勇士たち。排気による黒ずみ、溶けて焼き付いたアスファルトの破片、無数の小キズが戦いの激しさを物語っています。横を通り過ぎるだけの人も多かったのですが、1台1台に語り尽くせないほどのストーリーがあります。レプリカもあったようですが、とても1日では消化しきれない……。
僕は恥ずかしながらレースの歴史に詳しくないため、ここに並んだマシンがどのようなサーキットを駆け抜けてきたのか、想像するほかありません。それでも、本来の役割を終え、静かに余生を過ごしているレーシングカーを眺めていると、不思議と胸が熱くなります。
このマシンに人生をかけたエンジニアがいた。このマシンに命を預けたドライバーがいた。このマシンに勇気づけられたファンがいた。その躍動が今も息づいている。
かっこよぎる……。
ジブリ劇中車の再現度が高い
目玉はまだまだあります。なんと、スタジオジブリの映像作品に登場する劇中車を精巧に再現するという、ジブリファンにもクルマオタクにも嬉しい展示が行われていました。
見ることができたのは、『千と千尋の神隠し』で主人公の父親が乗っているアウディA4クワトロ、『崖の上のポニョ』で大活躍したピンクの三菱ミニカ・トッポ、短編アニメ『On Your Mark』で主人公たちが走らせた鮮やかなイエローのアルファ・ロメオ・ジュリエッタ、そして『君たちはどう生きるか』の「脱兎サン」ことダットサン17型セダンも……。
「これ見たことある!」「千尋のお父さんが乗っていたやつだ!」と大興奮。クルマの再現度もたいへん素晴らしく、例えばグレーのアウディA4クワトロの後部座席には、映画冒頭で千尋が抱えていた花束やメッセージカードが載っていたのです。アルファ・ロメオ・ジュリエッタには、あの「天使」の羽が散りばめられています。そんな1台1台を眺めながら、僕の頭の中では名シーンが次々と自動再生されていきました……。
2022年11月に愛知県長久手市にジブリパークが開園したこともあり、こうした劇中車はナイスな展示内容でした。
まとめ:イベントに足りなかったもの
第2回COPPA CENTRO GIAPPONEは、スケールが大きく、中身も濃い素晴らしい自動車イベントでした。単にクラシックカーだけでなく、レーシングカーや学生フォーミュラ、ジブリ作品劇中車など非常にバリエーション豊かな展示内容で、個人的にもたいへん楽しませていただきました。
ただ、気になった点があることもお伝えしなければなりません。
真面目な話、COPPA CENTRO GIAPPONEには、まだ自己批判やパロディーの精神が足りないと思います。いきなり何を言い出すのかと思われるかもしれませんが、COPPA CENTRO GIAPPONEはクルマの美しさを競う「コンクール・デレガンス」を中心としています。クルマ版の「ミスコン」のようなものですが、アメリカで毎年開催される世界最大の『モントレー・カー・ウィーク』を少なからず意識していることは間違いありません。
モントレー・カー・ウィークではクラシックカーやレーシングカーのコンクール、ラリー、伝説的な名車が数十億円単位で売買されるオークションなど多様なイベントが開かれます。入場料は基本的に有料で、約10日間にわたって開催されるなどスケールもケタ違いですが、COPPA CENTRO GIAPPONEと基本的なコンセプトは共通していると思います。
そんなモントレー・カー・ウィークで近年ひそかに注目を集めているのが、「コンクール・ドゥ・レモン」というイベントです。レモンとは、英語で欠陥車という意味がある「Lemon」のこと。つまり「醜さを競うコンテスト」なのです。参加するのは傷だらけで廃車寸前のどんがらや、おふざけ満載のジョーク車両など。美しさを競うコンクール・デレガンスとは真逆のコンテストです。
コンクール・ドゥ・レモンは、高級志向が強いモントレー・カー・ウィークという自己に対する皮肉が込められたイベントです。高価なクラシックカーがずらりと並んだ会場に対し、斜め上からちょっと冷めた目線を送っている。だからこそ、モントレー・カー・ウィークは真に多様で奥深い祭典と言えるのではないでしょうか。
今回のCOPPA CENTRO GIAPPONEでは、僕が見つけられなかっただけかもしれませんが、まだそのような気配は見当たりませんでした。第2回ということですから、今後に期待したいところではあります。モントレー・カー・ウィークは入場料がかかりますが、COPPA CENTRO GIAPPONEは基本無料ですし、チケットを用意する必要もありません(ラリーカーのエキシビションのみ有料)。会場内を散歩する感覚で楽しめるので、そういった意味ではまだ自己批判するような段階にないのかもしれません。
いずれにせよ、個人的には気づきも多く、たいへん良い思い出になりました。次回、開催されるのであればまた観覧したいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました!
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