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僕の”本気の8年間”は、一瞬で捻り潰された。

5年前の話。

それまで本気でマジックに向き合ってきた
”8年間”を一瞬で捻り潰された。

突然僕の前に現れ、
今まで聞いたことも見たこともないような
圧倒的な知識と実力を持つ人に言われた一言。


「お前がマジックで金貰ってるとは到底思えんな」


僕がマジックの興味を持ったのは6歳の時。

映画「ハリー・ポッターと賢者の石」が公開され、
ギリ信じる年齢だった僕は
ホグワーツに行きたかった。笑

だけど待てど暮らせど誰も迎えに来ず、
痺れを切らした僕は
100均の手品に手を出した…


そこから7年。当時中2。

当時入ってたサッカーチームのコーチから
とんでもない事実を聞いた。


「名古屋に『マジックショップ』なるものがあるらしい」



なんでもそこは
プロも扱うような道具が売っているらしい…

これが僕のマジシャン人生の始まりだった。

そこから僕はサッカーを辞め、
マジックに全集中する日々だった。

中学生ながらにUGMコンベンションに参加し、
高校に入ったら月1でコンテストにも挑戦した。

当時のコンテスタントは

  • 岩根くん

  • 伝々さん

  • SORAさん

  • 片山さん

など強者揃い。

大きく結果が振るうことはなかったが、
毎回本気で向き合った。

この時点で自分にセンスがないことには
薄々気づいてはいたけど
当時の僕にはそんなの関係ない。

バイト代を全て叩いてコンテストに出まくった。


高校3年の時。
僕が通っていたのは高専という5年制の学校。

来年からは研究室に入って研究するらしい。



いや、やる?

うーんやらんだろ…

そんな自問自答の末、
僕は高専を3年で退学。

岐阜の片田舎から東京に出て
マジックの道に進むことにした。

飛び込みで「マジックさせてください!」って
お願いして99%断られたり、
レギュラー店舗のレストランの面接受けるも
ことごとく落ちたり・・・

そんなボロボロな駆け出しだった。笑

そんな悔しさが原動力となって、
なんとかマジックバーに合格。

そこからは

  • マジックバー7店舗

  • レストラン6店舗

で活動し、営業もそこそこ頂いてた。


そんな中、とあるアシスタントのお仕事で
突然現場に現れたマジシャン。

「いいからお前一回うちに遊びに来い」

そう誘っていただき、
圧倒的な知識と圧倒的な経験値の
貴重な話を聞かせてもらった。

すんげぇ楽しかった。

今までは「できるわけない」と思っていた

  • 観客の感情のコントロール

  • 1人も漏らさない場の掌握

  • 寸分の狂いもない観客視点の取得

みたいなスキルを体現している人が目の前にいて、
その人から出てくる話は

多くのマジシャンが”常識”としていることと
全くの正反対だったり、
「そもそもそんな角度の視点聞いたことない」
と驚くものばかりだった。


そんなある日、
飲みに連れて行っていただいた。

他のお客様もいる中、

そこで「ちょっとマジックしてみ」と促された。

一応そこまで8年のマジック歴と
5年のプロ活動歴があって、
それなりに盛り上げる自信があった僕は

「ついにこの時が来たか・・・」

と一部不安はあるものの
8割は自信満々でマジックを披露した。


そしてお店を出た時に
開口一番に言われた言葉。

それが

「お前がマジックで金貰ってるとは到底思えんな」



もう悔しいとかいうレベルじゃない。

今までの8年と自信を一瞬で折られ
でも圧倒的に理にかなった意見を言い返すこともできなくて
なんなら「マジックできる」というアイデンティティまで
全てをへし折られた。

理由のわからない涙が止まらなかった。


でも、一部の冷静な僕はこんなことを考えていた。

「これで俺は変われる」


それまで、多くの先輩方や理論書の言うことを
片っ端から取り入れて実践してみたけど

どう頑張ったって先輩方を超えられないし
当初抱いていたマジシャン像なんて
叶えようがない。

そんなふうに思ってた。

もちろん自分のプライドも邪魔してたかもしれない。

マジックバーの外に出る自分なんて
全く見えなかった。


だけど、

  • 目の前にいるこの人の知識なら・・・

  • 全てをへし折られた今の俺なら・・・


『俺は変われるかもしれない・・・!』

そんな思いで必死に食らいついた。

その時抱えてた仕事を全部断って。

正直習うスピードは
超難関を目指す予備校なんかより
圧倒的に早い。

1日20時間詰め込まれ、
翌日には新しい知識が入るから
残り4時間で噛み砕く。

そして自分の家にいる期間は
毎日限界まで噛み砕いて

毎週末知恵熱が出るまで考え抜いた。

当時は、

「考えるのを辞めたくても
 頭が勝手に回転している」

という未知の状況に吐き気がすることもあった。


そんな毎日を過ごすこと半年。
仕事に復帰した。

そこにいたのは、
以前の自分とは比べ物にならない
圧倒的な知識と実力を備えた自分だった。


1年ほど経って、
恩師ととあるマジックバーに飲みに行った。

店を出るなり開口一番に言われた一言。

「・・・な?お前はもう大丈夫やろ?笑」

この言葉は、
今でも鮮明に覚えてる。



今思うと、僕の人生は”知識”をきっかけに
左右している。

マジックショップという存在を知ること
から始まった僕のマジシャン人生。

あの時、恩師とその「知識」に出会えなかったら
今ごろ僕は何をしてるんだろうか・・・?

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