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#6 急伸のインドの電動スクーター「Ola Electric」を買っているのはどんな人?

今回は、現在インドで伸びている電動スクーターの「Ola Electric」を購入した方にインタビューをしてみた。

【弊社紹介】
弊社(株式会社hoppin)はUXコンサルティング事業、および中国・インドのUXリサーチ事業を行う企業である。参考:会社サイト
後者について、具体的には、中国・インドの優れたUXを提供するサービスを、現地ユーザやサービス提供企業の役職者へのインタビュー調査を通して分析し、日本企業への示唆を出している。
また筆者の滝沢は上海に2回居住したことがあり、2022年現在はインドのバンガロールに居住している。参考:筆者執筆のYahoo!ニュース


ただいま急伸中!インドの電動二輪の現状


インドにおける電動二輪のシェアはまだまだ少ない。2022年上半期の電動二輪の販売シェアは二輪車カテゴリの3.6%にとどまる。(参考

ただ、シェアは小さい一方で、前年比404%増と伸び率は大きい(参考)。
政府も電動二輪への補助金も出すなど、国からも普及の後押しがあり、今後の伸びが期待されている。

2022年の電動二輪の登録台数(出典:Inc42




人気が伸びている「Ola Electric」のスクーター


電動二輪カテゴリの中では、最近「Ola Electric」の人気が高まってきている。
「Ola Electric」は、インドでUberと並ぶ配車サービス「Ola Cabs」の親会社「ANI Technologies」の子会社として、2017年に設立された企業だ。

最初のスクーターを納車したのは2021年12月だったが、そこから半年足らずの2022年4月には、その月の登録台数1位に。
その後上下はあったが、2022年10月と11月も登録台数はトップ参考)。期待の新興プレーヤーと言えるだろう。

最初に発売されたS1 Pro。豊富なカラーバリエーションがある。(画像出典:公式サイト




想定通り、「ユニークさ」「個性」を良しとする都会の若者にウケている?


電動二輪およびOla Electricの売り上げが伸びているとはいえ、先述の通り、電動二輪が市場に占める割合は未だ市場の5%未満。
現時点で購入されている方は、かなりの少数派だと言えるだろう。

具体的に、どのような方がOla Electricを購入されているのだろうか。
現在バンガロール在住でOla Electricのスクーターを購入している方にインタビューをした結果、以下のようなパターンが多そうだった。

  • 原油価格の高騰によるガソリン代の上昇で「電動」の二輪車が選択肢に入り、

  • Ola Cabで培ったブランド力に加えて、「珍しいデザイン」や「テック感(デジタルを活用した近未来感)」によるユニークさで、Ola Electricが選ばれる


例えば、大学を卒業し公務員試験の勉強中のAさん(22歳・男性)はこう語る。

" ガソリンで走るものよりも電動の方がコスパが良いと考えて電動二輪にしました。同じ距離を1/3以下の価格で走れますし、メンテナンスコストがほぼないからです。
その中でOla Electricにしたのは、まずデザインが伝統的でなく、今までにない感じでユニークだからです。
それから、スクリーンがついているなどのデジタルっぽさ、テックっぽさです。バイクのスピーカーで音楽を流せるという特徴も特にユニークで面白いと思いました。"

Aさんが述べている通り、Ola Electricのデザインは、一般的なスクーターよりも丸みを帯びており、少しかわいらしい感じだ。このデザインがウケているようだ。

個性的なデザインに加えて、カラーバリエーションが豊富にあることも人気の一つのようだ
(画像出典:91mobiles


また、タッチパネルがついており、そこでカーナビ操作ができたり、音楽を流したり、乗車モードを変更したりと様々な操作ができる。

タッチパネルで操作している様子(画像出典:筆者撮影)


IT系の会社に勤めるBさん(33歳)はこう語る。

" 元々車を持っていてそれで通勤していたのですが、最近は渋滞もひどいですし、便利かなと思って二輪車を検討し始めました。長期的にみて電動の方が安いのと、運転しやすいと考え、最初から電動二輪に絞って検討していました。"

" Ola Electricにしたのは、他のものと比較した時に自分の体格にあっていて快適だったということ、タッチスクリーンがあったりして、デジタルで色々できるところですね。
タッチスクリーンは他社でも導入してるところもあります。他社のもの(Ather)も展示場で使ってみたのですが、Ola Electricの方がよりデザインとしてもきれいでしたし、大きいですし、見やすいと感じました。
自分の通勤距離は往復40kmで、Ola Electricはフル充電で80-90km走るので充電の懸念も特にありません。"


インタビューの後、普段どのような機能を使っているのかご本人のスクーターで見せていただいた
(画像出典:筆者撮影)


また旅行会社の会計士であるCさん(23歳・女性)はこう語る。

" Ola Electricに注目したのはまず知名度があったからです。調べてみて、まずデザインが良いと思いましたし、デジタルなどを活用した新しい感じが良いと思いました。”

" Ola Electricはデザインを始めとして全体的にユニークなんです。自分は「ユニークであること」が好きなので選びました。"

Cさんは続けて、「地方だと保守的な人が多いが、都会の若者はユニークであることを好む人が多いのではないか?」ということを話してくださった。

全体傾向はわからないが、実際、まだ電動二輪を買うこと自体がかなり少数派である現時点では、Ola Electricを購入している方は保守派ではなく「ユニークなもの・新しいもの好き」の傾向があると言えるだろう。



まとめると、まず現時点で「電動二輪が選択肢に入る人」のは、以下のようなユーザだと考えられる。

  • 新しいもの/ユニークなものチャレンジする意欲がある人

  • まだ電動二輪が市場全体では一般的ではない中で、選択肢が思い浮かんだり調べたりできる情報感度が高い人/感度高い人が周りにいる人

  • ある程度都市中央部に住んでおり、通勤/通学のための長距離ライドの必要がない人(充電懸念が大きくない人)


その上で、「Ola Electricを選ぶ人」は以下のようなユーザだと思われる。

  • Ola Electricの今までとは異なるデザイン、およびテック感(デジタルを活用した近未来感)を「ユニークでかっこいい」と思うような感性の人

上記の「Ola Erectricを選ぶ人」のユーザ像はある程度想定通り、というか納得感があるものだった。



街の大気汚染を日々感じるからこその「電動」シフトも


少し意外だったのは、電動二輪を購入する理由として「電動の方が環境に良いから」という理由が数人から上がったことだった。

彼ら/彼女らは、決してキレイゴトを言っているわけではない。

例えば、先述のBさん(33歳・男性)は、「電動二輪にした一番の理由は経済性」としながらも、以下のように語っていた。

" (電動二輪を選択した理由の一つとして)大気汚染を気にしているということもあります。
みんな結構(大気汚染のせいで)咳をしていますよね…。10年前と比べると、人口も増えていますし、大気汚染もひどくなっていると感じます。今後もっとひどくなるのではないでしょうか。未来のためにも変えていかないとと思います。"


先述のCさん(23歳・女性)はこう語る。

" 環境のこととランニングコストの安さを考えて、最初から電動を検討していました。"

(環境のことを気にしているのか?という質問に対して)
環境のことは気になります。交通量が多いのでバンガロールでも大気汚染が進んでいて、運転する時はマスクをしないといけないです。運転し終わったあとは、顔が汚れていたりしますし…。
それに、人によっては大気汚染でアレルギー症状悪化する人もいるみたいで…。私は大丈夫なんですけど他の人にとって害になったりするのは嫌だなって思います。"


ヘルスケア系企業の管理職であるDさん(42歳・男性)は、Ola Electricの目指す「電動二輪車/車できれいな世界を作る」コンセプトに感動したことが、購入するきっかけになったという。

" ガソリンバイクは疲れるのと環境に悪いので、電動で何か良いものが発売されないかな、と様子見をしていました。"

" その時にちょうどOla Electricのスクーターがローンチされたのですが、私はOla Electricが打ち出した「Leading the electric mobility revolution(電動モビリティ革命をリードする)」というコンセプトに深く共感して、予約開始後、実物を見る前にすぐに申し込んだのです。"

" Ola Electricのコンセプトは、大気汚染の問題を解決したい、ということを言っています。それまでは、そこまで深く大気汚染のことを考えていたわけではないのですが、バンガロールで大気汚染が進んでいることは認識していました。Ola Electricのコンセプトを見てああ確かにそうだなと深く共感したのです。"


公式サイトでは「インドを電化の中心地にすることで、世界の排出量と化石燃料への依存を減らす」というビジョンも語られている(画像出典:公式サイト


バンガロールは、渋滞と大気汚染がここ数年で徐々にひどくなっているという。
そのため、多くの方、特に普段から二輪車に乗り外気に触れながら通勤している方はそれを実感しているのである。

結果として、強い危機意識を伴う環境への課題意識が生まれる。
大気汚染が進む地域こそ、より切実に「空気をきれいにしたい」と思うライダーが多く、電動二輪も選ばれやすくなりそうだ。


日本ではあまり馴染みがない電動二輪だが、今回のインタビューにより、インドならではのユーザの考え方・視点を得ることができた。
今後も、このようなインタビューを積み重ねていきたい。



お読みいただきありがとうございました!

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