86歳 男性(息苦しさ 胸の痛み)
主訴
S
「大腸内視鏡の予定だけど、血便とか不安感から来る過呼吸とかがあった。息苦しさや、足のだるさ、胸痛がありました。心不全の状態で、不整脈もあるようです。」
O
他院クリニックにて
・ドネペジル塩酸塩錠3mg
他クリニックにて
・ユリーフOD錠4mg
・ベルソムラ錠15mg
ポイント
心不全はあくまで「病態」
器質的/機能的異常→心ポンプ機能の代償起点が破綻
胸痛≒狭心症の可能性
⇒硝酸イソソルビドテープ
不安感
⇒ジアゼパム錠2mg
左室駆出率のうち
・駆出率40%未満の心不全→HFrEF
・駆出率50%以上の心不全→HFpEF
身体所見上では
○下腿浮腫
○頸静脈怒張
○両側肺水腫
○胸水
血液検査
目安としては
○BNP<40pg/mL
○NT-proBNP<125pg/mL
⇒心不全の可能性は低い
*NT-proBNPは腎機能低下により、顕著な高値を示す
薬物治療
ステージA
リスク有るが、心臓の異常はない
基礎疾患の高血圧・脂質異常症・糖尿病治療を行う
ステージB
心臓の異常有るが、症状がない
予防目的として
○ACE阻害薬
⇒エビデンス豊富、咳嗽が出現するが、降圧作用は弱い(低血圧患者適応)
○ARB
⇒降圧作用が強い(高血圧患者に適応)
○β遮断薬(維持遼の1/8量程度から開始)
⇒アーチスト(カルベジロール)は導入しやすいが、α遮断作用によるふらつき注意
メインテート(ビソプロロール)はβ1選択性であるため呼吸器への副作用が少ない
ステージC
心不全症状がある
・労作時の息切れ
・夜間呼吸困難
・下腿浮腫
・食欲低下
⇒水分貯留によるもの(利尿薬で鉱質コルチコイド受容体拮抗薬も生命予後改善のために追加)
▼
RAS阻害薬と鉱質コルチコイド受容体拮抗薬併用時
⇒血清K上昇には注意
・易疲労感
・めまい
⇒不十分な血液送達によるもの
使い分け
○利尿薬
ダイアート(アゾセミド)⇒長時間にわたって作用するため、生活への支障が少なく、電解質異常が起こりにくい
フルイトラン(トリクロルメチアジド)⇒短時間の強力な利尿効果があるため、生活への支障や電解質異常が起こりやすい
○鉱質コルチコイド受容体拮抗薬
アルダクトン(スピロノラクトン)⇒エビデンスがあり安価であるが、女性化乳房を起こすことがある
セララ(エプレレノン)⇒受容体選択性が高いため、女性化乳房になりにくい
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