44歳 女性(自覚症状なし)

主訴

「自覚症状はないけれど、血液検査の値がすごい低いみたいです。他に飲んでいるお薬はありません。」


新患 新規
血液検査

症例➄ 検査値

ポイント

貧血は
小児・妊婦ではHb濃度11g/dL未満
思春期・成人女性ではHb濃度12g/dL未満
成人男性ではHb濃度13g/dL未満

基本的に緩徐かつ慢性的に進行
⇒重症化しても自覚症状に乏しいことが多い
*自覚症状としては《匙状爪》《異食症》が認められることがある

鉄欠乏が生じる
⇒血清鉄やHb値よりも、貯蔵鉄が減少する

治療方針

基本的には《鉄剤内服》
鉄剤の内服には、消化器系副作用の発現が多く工夫も必要

経口薬の使い分け

1)フェルムカプセル(フマル酸第一鉄徐放カプセル)100mg 1日1回1カプセル
⇒徐放性製剤 空腹時でも胃への刺激が少ない

*食後内服
*胃切除後
*制酸剤併用
⇒吸収率の低下が知られている

併用注意
テトラサイクリン系抗菌薬・セフジニル・ニューキノロン系抗菌薬

2)フェロミア錠(クエン酸第一鉄ナトリウム錠)50mg 1日1~2回 1回1~2錠
⇒非イオン型の鉄剤は酸性~塩基性の広い範囲で溶解される
*pHが高い食後でも、吸収への影響は少ない

併用注意は、1)と同様

3)フェロ・クラデュメット錠(硫酸鉄水和物)105mg 1日1~2回 1回1~2錠 朝夕食前または食直後
⇒塩基性条件下では溶解が不良で、吸収が低下する
*錠剤が小さく飲みやすく、細粒の選択肢もある

併用注意は、1)と同様

4)インクレミンシロップ(溶性ピロリン酸第二鉄) 1回5mL 1日3回 毎食前
⇒基本的には15歳までの小児対象の薬剤。三酸化鉄で他剤に比べ吸収は悪いが、消化器系副作用が少なく、成人にも有用

患者さんへの説明

鉄欠乏性貧血の原因を究明し、根本的な改善は期待できない。
食事療法やサプリメントでの改善は難しい。
貯蔵鉄(フェリチン値)が十分量となるまでは継続が重要。

○食事療法として
肉や魚など動物性食品に多く含まれるヘム鉄の吸収率は10~30%と効率が良い

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