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ひとり旅最終日の奇跡

気付けば初日を書き始めてから1カ月が経ってしまったけど、せっかくなのでひとり旅最終日の記録もよっこらせっと書き始める。

自分の記事を読んでいて、こうして残しておくとやっぱりいいなあと思う。だから最後までちゃんと書く!(宣言)

3日目は小豆島内をバスでぐるりと巡る行程を組んだ。
朝、ホテルでチェックアウトをする時に路線バスの一日フリーパスを購入した。乗り継ぎがけっこうあったのでお得に乗ることができたと思う。
最終日にしてようやく計画的な行動がとれた。

はじめに訪れたのは今年の夏に公開されたばかりの三宅之功さんの作品「はじまりの刻」
夕景スポットである屋形崎という場所に設置されている。
前日、夕方に雨が降り夕陽といっしょに見に来るのを諦めた場所だ。

この日もまだ小雨が降っていたけど、見晴らしがよくて気持ちのいい場所だった。

大きな卵のオブジェ。殻のひび割れた隙間から植物が芽吹いている。命がテーマの作品。
ここからの景色とともに観察しているとより一層、自然や生命のパワーを感じることができた。

しばらく眺めた後、バス停に戻る途中、この場所の駐車場を整備していた地元の方に声をかけられた。ほとんどの観光客が車で島内を移動しているので、山道を1人でてくてく歩いていくわたしを心配してくれたのだと思う。

地図で調べていたのでわかっていたけど、バス停までの道と10分くらい歩くけど大丈夫かと教えてくれた。ペーパードライバーの私にとって10分歩くくらいなんてことはない。「だいじょうぶです!」と元気に答えて歩き出すともう一度後ろから声をかけられて、島のパンフレットや観光地で使えるクーポンをくれた。その親切をありがたく受け取りバス停へと向かった。

途中から雨が強まってしまったけど、予定通りのバスに乗ることができた。バスの中で天気予報や雨雲レーダーとにらめっこしていると、わたしの念が通じたのか、雨が止み陽が差してきた。

次に向かったのは寒霞渓という渓谷。前回小豆島に来た時は時間が足りず来るのを諦めたので、今回は外せないと決めていた場所だ。ここに展示されている作品も楽しみにしていた。

ロープウェイに乗り頂上に着くと一面に広がっていたのは、、、霧。濃霧。
なんとなく予想はしていたものの、数メートル先も見えないほどで逆に笑ってしまった。
麓が晴れているからといって山の上まで天気が回復しているとは限らない。当たり前のことを痛感した。

写真で見るより暗かった。これはこれで神秘的で、冒険感があっていいじゃないの。と自分を励ましながら作品の方へ向かう。

辿り着いてもなお霧。見渡す限りの霧。これ以上ないほどの霧。
とりあえず写真を撮って、来た道を戻った。
このままロープウェイで下るのもなんとなく悔しかったので、売店でコロッケと、名物だという「もみじサイダー」を買って機嫌を取り直すことにした。

小腹を満たす売店があったことは不幸中の幸いだなと、得意のポジティブシンキングを繰り広げてみたけれど、ぬかるんだ道を歩いて汚れたスニーカーとデニムをウェットティッシュで拭きながら、なかなかうまくいかない今回の旅を思い返してさすがのわたしも落ち込みはじめていた。

それでも、仕方ない。次の場所に向かおうかな。となんとか気持ちを切り替えようとした時だった。
売店の窓の外が急に明るくなったのに気が付いた。サーッと雲が裂けてキラキラとした太陽の光がさしてきたのだ。

悩む暇もなくわたしはもう一度さっきの場所へ向かった。はじめに来た時とはちがう景色だった。

濡れた木の葉が太陽を浴びて輝いている。わたしの足取りも思わず軽くなる。
せっかく拭いたスニーカーがまた汚れるのも気にならなかった。うそ、それはちょっと気になったけど。

「空の玉」というこの作品の中から見えた景色はこれだった。さっきはいくら目を凝らしても霧の中になにがあるのかわからなかったけど、本当はこんなに素晴らしい景色が広がっていた。

わたし自身もさっきまで落ち込んでいたのが嘘のようにうれしくなった。今回の旅がすべて報われた気がした。
先が見えないときは立ち止まって休憩するのがいいんだなと、人生の話に無理やりこじつけてみたりもした。

最高のお土産ができたと満足した気持ちでロープウェイで下りてつぎの目的地へ向かった。

先ほどコロッケでお腹を満たしたばかりだが、今度はお昼ごはんを食べることにした。

最終日のお昼ごはんはやっぱりうどん。と、しっかり瓶ビール。
店内のテレビを見ながらスルスルと食べてしまった。
お店のおかあさんが、「しょうゆは自分で調整してね、天かすはたくさんかけるとおいしいですよ」と教えてくれたので言われたとおりにした。
地元のお客さんも多くて落ち着くお店だった。

デザートはすぐ近くのジェラート屋さんに移動して、栗とかぼちゃの2色のジェラートを食べた。
実家のような安心感のあるお店でビールとうどんを食べた後、いまどきのオシャレなお店でジェラートを食べているのが、アンバランスな感じがして楽しくなった。
素材にこだわったジェラートはもちろんおいしかった。

帰り際に、港に展示されているこの作品にも寄った。「辿り着く向こう岸」という船のようなアート。中国で廃棄された家具や建具を集めて組み合わせた作品で、細かい装飾が素敵だった。木造であたたかみもあって、しばらくここから海を眺めた。

これで小豆島観光はおしまい。
ホテルに戻って預けていた荷物を受け取り、フェリーで高松へ戻った。

最後にフェリーから見た景色もまた素敵で、3年ぶりにまた来れてよかった。そしてまた必ずここに遊びに来よう。と思えた。

3年前のわたしは、仕事や恋愛やそのほかにも自分自身の些細なことで悩んでいて、この場所でパワーをもらって帰ったのだけど、今のわたしは日常でいろんなことが起きてもほとんどのことを「まあいっか〜」と軽く捉えてやり過ごすことができるようになっていた。うまくいかないことも多かった今回の旅でもなんだかんだまた元気をもらった。

3年前想像していなかった日々を過ごしていて、これでよかったのかはわからないけど、3年前の困ったわたしを今のわたしが見ても、あれでよかったんだと思えるように、未来のわたしも今のわたしを肯定できると思う。
3年後のわたしはどこで何をしているのかな。自分の過去や未来に思いを馳せることができる旅だから、また3年後もここに来たいな。

なにより無事に旅行を終えることができてよかった。安心して旅行ができる未来がこれからもありますように。

帰る前に空港で食べたあったかいかけうどんととり天。またうどん。

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