見出し画像

夏の味

高校一年生の夏。わたしたちは放課後しょっちゅう教室に残っておしゃべりをしていた。

週に2回の部活動も一緒。部活中もしゃべってばかりなのに、部活がない日もああしてぐだぐだしていた。

テスト前はほかの部活の友だちも一緒にテスト勉強をしていたし、ハロウィンやバレンタインの時には放課後にお菓子パーティーをしていた。冬にはわざわざ少し離れたコンビニまでおでんを買いに行ったりもしていたな。

そのうちにみんなアルバイトを始めたり、クラス替えや受験勉強なんかで、放課後ダラダラタイムは少しずつ減っていったけど、予定がなければ誰かの教室に寄って延々としゃべっていた。あれは間違いなくわたしの人生のうちの幸せな時間の一つである。

何を話していたかなんてひとつも覚えていないけど、今みんなと会ってお酒を飲みながら話している話題と大して変わっていないだろう。

今日、近所の自動販売機で500ml缶のカルピスソーダを買った。それがきっかけで昔を思い出したのだ。

わたしたちの高校は、空調が校舎全体で管理されていて、放課後使われていない教室は自動でエアコンが止められてしまう。
わたしたちは暑い、暑い。とスカートを短く巻き上げながら、それでもおしゃべりはやめられず、渡り廊下の自動販売機で冷たいジュースを買って心ばかりの涼しさを求めた。

なかでも大容量なのにほぼ同じ値段のカルピスソーダは特に人気だった。同じくらい人気だったのは、果肉入りの白ブドウジュースの「つぶみ」だが、わたしはいつも金欠だったのでカルピスソーダ派だった。

たしか、ジュースを買いに行くのはじゃんけんで決めていたと思う。それとも、誰かが「ジュース買いに行くけど飲む人〜?」って決めてたっけ。

運動部が息切れしながらスポーツドリンクを買っているのを横目に、人数分のジュースをガラガラ買っていたな。

そのうちに、見回りに来る先生に笑われながら「早く帰りなさ〜い」と言われるので、仕方なく帰る。帰り道もダラダラ、ゲラゲラ。当時のわたしは時間は無限にあるように感じていた。

今となっては、キラキラ輝く思い出の一部。

飲み終わる頃には炭酸が抜けてぬるくなっている500ml缶カルピスソーダはわたしにとって青春の味だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?