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私、じつは滝が好きなんです

「私、じつは滝が好きなんです。」

たとえば、初対面の自己紹介で。たとえば、まだそんなに親しくない人との世間話で。
趣味や好きなものの話題になることってありますよね。
そんなとき「じつは・・・」と話すのですが。

私の経験上、「へえ・・・滝・・・」と微妙な空気になることがほとんどです。
そして数秒おいて「滝、いいよね」とか「日光の華厳の滝へ行ったなー」と言ってくれる人、多いです。そのお気遣い、その優しさ、身に沁みます。

「どこの滝がおすすめ?」と興味を示してくれる人もいます。素直に嬉しい。喜んでおすすめの滝、教えちゃいます。

「滝行してみたいなー」という人も、ときどきいます。でもね、「滝行」と「滝が好き」は、全然違うのですよ。そもそも「滝行」は修行だし。やったことありますが、痛いです。覚悟が必要です。

「海が好き」「山が好き」と比べて、「滝が好き」は少しマニアックなようです。
普通に暮らしていて「私も滝が好き! 先週は○○滝へ行ってきて、来週は○○滝へ行く予定!!」という人と出会うことは、まずない。ときどき出会いを期待してチャレンジしますが、毎回、微妙な空気が流れます。

そして「滝のどこが好きなの?」と、核心を突いた質問をする人。これ、いちばん困る。
マイナスイオンが気持ちいい~とか、水の躍動感がサイコ~とか、よくわからないイメージ映像みたいな答えだと、ますます微妙な空気が漂って、私自身が微妙な人になってしまいます。
このあたりで、滝のどこが好きなのか、じっくり考える必要がありそうです。

滝へ行く朝。
家を出て、見慣れた景色から、いつもの日常から、少しずつ遠ざかっていく。雑事に追われる私から、好きなものに胸をときめかせる私に変わっていく。

はじめましての滝は、いつもどきどきする。どんな姿をしているのだろう。
何度目かの滝は、いつもわくわくする。今日はどんな表情を見せてくれるのか。
そう、滝はひとつひとつ姿が違うのです。そして、季節や天候によって表情が変わるのです。

電車に乗り、バスに乗り、歩いてようやく到着したとき。
水飛沫を浴びて滝を見上げるとき。
水の流れ落ちる音に包まれるとき。
この日、この瞬間しかない姿と向かい合うとき。

ああ、来てよかった、この滝に会いたかったんだ、と幸せな気持ちになります。
そうなんだ。私は、一期一会の滝との出会いや、滝へ行くまでの時間が好き。
「滝」を中心にして過ごす一日が、たまらなく好きなんです。

この、「じつは、滝が好き」。
微妙な空気が流れたあと、「じつは、私は○○が好き」と意外な一面をカミングアウトして、新しい世界を教えてくれる人もいます。
「滝へ行ってみたい」と言う人を案内して、違う見方に気付くこともあります。
面白いことに、よくわからないイメージで「好き」を伝えるより、しっかり語るほうがそんな出会いが多い気がします。
「好き」って強い。世界は「好き」で広がっていくように思います。


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