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クライストチャーチ③ランドスケープ

クライストチャーチの街を形づくるランドスケープには、いくつかの要素がある。
川、ベンチ、グリーンインフラ。もちろん新旧が混在する建物のデザイン、街の至るところに配されたサイン、隙間を埋めるようなパブリックアート、マオリの模様なども印象深いが、まずは地べたにあるこの3つに注目したい。

川。グリッドで構成される街の中で複雑に蛇行するエイボン川が街にひずみを創り出している。日本の都市河川とはまったく異質で、川沿いには美しい芝の法面、巨木、もしゃもしゃの低木で構成され、近づこうと思えば、そのまま川にダイブすることも可能だ。パンティングと呼ばれる川下りも名物。
なお、唯一といっていいくらい珍しい堤防には、先のカンタベリー地震で亡くなった被災者の慰霊碑が刻まれている。

川沿いの遊歩道に面して建物がある

ベンチ。ベンチを増やそうというまちづくりをしている街が日本にもあるが、まさにその手本となるようなベンチの多さ。歩道空間や公開空地に多様なベンチが並ぶ。Gap Fillerのつくったシャボン玉の出るベンチには残念ながら会えなかったが、街のベンチの多さは体感できた。
もちろんテラス席も多い。古い街並みを遺したトランジットモールのリージェントストリートでは、路面電車の線路を避けて、所狭しとテラス席が設けられている。
ベンチが多いと何が良いか、それは歩いて休めるからウォーカブルになるという以上にベンチに座れば街を眺められる。街を眺める時間が多いほど、街を好きになったり、街を良くする気づきが得られるからだと思う。そして、シチズンの間に、シビックプライドが育まれるに違いない。

テラス席とベンチが並ぶリージェントストリート

グリーンインフラ。ニューヨークやポートランドなど、クリエイティブで先進的な街では欠かすことのできない街の要素であるが、クライストチャーチでも歩道沿いにたくさんレインガーデンが設けられていた。歩道よりもレベルを低くし、雨水が流れ込むようにして、植栽帯の中には水に強い植生を植え、砂利を敷き、排水口を設ける。
雨水の浸透を図り、できるだけ排水管などのインフラへの負荷を軽減するとともに、蒸散効果でヒートアイランド対策にもなる。日本ではなかなか導入が進まないが、クライストチャーチでは標準仕様になっているようだった。市役所に聞くとこれも震災以降の都市再生の一環だという。
そのグリーンインフラを象徴的に設えたグリーンウェイという路地もつくっているが、面白いことに民間敷地内を通り抜けている。自動車のディーラーと修理工場の間にあるのがクールだった。

民間敷地内を貫通するグリーンウェイ

ランドスケープは、その街の思想、アイデンティティ、大切にしたいこと、優先順位を物語る。じわじわと浸透してくる。まさに、クライストチャーチのランドスケープは、この街をしっかりと表現し、伝えていた。

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