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"SWEET SUMMER DAY" が紡ぐ、TWICEの夏物語 -9th Mini Album『MORE&MORE』-

 思わず泣いてしまった。TWICEの約9ヶ月ぶりとなったカムバック。リード曲『MORE&MORE』の衝撃はさることながら、私たちONCEの心、その多くはカムバックステージでパフォーマンスされた『SWEET SUMMER DAY』に全て持っていかれてしまったのではないか。TWICEが2020年に夏を全力で楽しむ歌を9人で歌って踊っているということが示唆するものはある意味『Feel Special』で見せたそれより大きいはず。

 TWICEは物語を伴うアイドルグループである。いやそもそもアイドルというのは大抵物語を背負うものであるのだが、彼女たちは時に尋常じゃないほど過酷な物語に放り込まれることがある。そしてその多くが彼女たちの意に反する理不尽であるのだから心が痛む。しかし彼女たちはその全てに対し頑なに「9人でいること」を選び続け乗り越えてきた。

 TWICEには「ONCEと共に愛したい曲」というジャンルの楽曲が確実に存在する。例えば『ONE IN A MILLION』、『Be as ONE』、『Pink Lemonade』、『STUCK』、『21:29』など。『Pink Lemonade』はともかく、その他の楽曲はどれも直接的な言い方、というか「この曲はファンソングですよ」という構成がなされている。私はこの度の『SWEET SUMMER DAY』もこのファンソングのジャンルにカテゴライズされるものだと感じているが、歌詞を見る限りはただTWICEが夏を楽しんでいる、という要旨が前面に打ち出されている。それなら『DANCE THE NIGHT AWAY』も『HAPPY HAPPY』も同じでは?と思ってしまうのだが、今が2020年であること、この曲を誰が作詞したのか、この楽曲はどこを向いているのか、そして上記のカムバックプレミアライブの様子を鑑みると、この楽曲のもつ物語性がこれまでのTWICEの楽曲と比較しても群を抜いていることを思い知らされた。

 詳細を記述することは避けるが、2019年の夏はTWICEにとってとても手放しで楽しめるものではなかったはずである(この辺りについては先日公開されたYouTube Originals ドキュメンタリーが詳しいだろう)。

 9人で夏の曲を心の底から楽しみ踊り歌い、まるでかつてのV LIVEのようにワチャワチャしているその様が示唆するのは彼女たちの現在地か、それとも。

 この楽曲最大の遊び心はナヨンのラップだろうか、チェヨンがナヨンのためにラップを書いたらしい。万能のナヨン姉さん、流石にお上手。このライブバージョンだとラップに入る前にモモが「ナヨーン!」とコールしてるのもなお良い。多国籍グループであることももちろんだが、TWICEの魅力は個性が混ぜ合わさりながら一つの強い共同体としてそびえ立つところである。そういうわけで彼女たちのPerformance Videoは一見の価値有りだ。(ミナ抜きでPerformance Videoを撮っていたFeel Specialだが、MORE&MOREカムバの直前に全員で撮ったものをアップし直している。日本活動では確認することが難しいのだが、TWICEは相当に本人たちの意思が強いアイドルグループである)

 この楽曲のラップパートを除く作詞をジョンヨンが担当していることも忘れてはならない。ジョンヨンといえば、メンバーの中でも群を抜いてチーム愛が強いお姉さんである。YES OR YESの活動期、多忙を極めたメンバーを気遣いネックレスをプレゼントしたエピソードをはじめ、人一倍TWICEを俯瞰しながらも愛している人物だと思っている。

 そんな彼女が書く、夏の歌。前述したこの楽曲の向く方向というのはまさにここで、ジョンヨン、ひいてはチェヨンがメンバーと共に夏を楽しみたい!という歌詞であることが今作が他のファンソングと比べ異端である部分だ。この曲は、わかりやすくONCEに向けられたものではない。

 TWICEはいつだって、ONCEに対する感謝を忘れない。「ワンスー!」「ワンスのおかげです」「ワンスー!声が小さい!(東京ドームのジョンヨン)」などワンス、ワンス、と言われ続けた僕たちワンスは、いつしかそうされるのが当たり前、「イムナヨン、ユジョンヨン...」とコールすることでさえ受動的な態度になっていたのではないか、と猛省させられる。『Be as ONE』は特に、ワンスへの明確なメッセージ性がある楽曲だが、欧米進出を公言している以上、今後の活動はこういったわかりやすいものだけに止まらないかもしれない。『MORE&MORE』はその象徴だろう。
 オタクは、アイドルが発信するものを100%の力で受け取る努力をする義務がある、と私は思う。まずは『SWEET SUMMER DAY』で示唆される彼女たちの物語を全力で楽しむことで、私たちはまた一歩真のONCEに近づく...とか、そんな難しいこと、考えなくて良いのかもしれない。だって最後、ミナでこの曲終わるんですけど、やっぱりメンバーが寄ってくるんですよ。んで、ミナがビシッとピース決めてる。最高じゃないですか。2020年、米ビルボード200にもついにランクインしたらしい。もっともっと大きくなるTWICEを、私たちはきっと目撃する。それだけで良い。


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