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映画とわたしたち

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映画及びドラマに関するエッセイ。(昔は批評めいてました)
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#note映画部

『サマーフィルムにのって』

※映画『サマーフィルムにのって』のネタバレを含みます。  すべてのものに等しく終わりは訪れ、夏をあと100回過ごすのはおそらく無理なのであろう、そんな有限性を思い知らされている25度目の夏、映画『サマーフィルムにのって』を観た。本作は青春や恋愛という普遍的なテーマを表象しつつも、時代劇とSFという、2つの時空を超える装置が盛り込まれている。  2021年の夏が1度しか訪れないように、すべての人間に時間は等しく与えられている。主人公・ハダシが愛する時代劇の世界や、凛太郎がや

『四月の永い夢』

 日本人に愛され続けてきた、四月、桜の舞い散る季節。その季節に閉じ込められた一人の女性の、静かな再生の物語——『四月の永い夢』について、簡単にまとめるならこんなところだろうか。  実は世の中の何もかもを、こうやってあっさりまとめることができるのかもしれない。できるだけ要約し、簡潔に、わかりやすく話すことが評価される——というか、それが普通、日常生活、ことにビジネスの場面においては求められる話法である。  人々はなぜ、映画を見るのだろう。小説を読むのだろう。虚構の世界に浸り