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2度目の青春


#創作大賞2023  #エッセイ部門


始まりは、娘がダイエットに成功したことだった。
娘が言うには「運動じゃ痩せない。食事を野菜中心に変えたら、あっという間に痩せた」とのこと。
それならと、私も山ほど食べていたお菓子をやめてみた。
なんと、長年うまくいかなかったダイエットができた。(当たり前だ、あんなにお菓子食べてたんだから)
50年前、東京でアパート暮らしを始めてお菓子をたべなくなったら あっという間に痩せたときと同じである。そこから微妙に増えていったのだが 50年ぶりのダイエット成功に、加齢で下がり気味だった気分も少し上がる

そのうち 夫が散歩で 近くに出来たバレエスタジオを見つけてきた。
最近 大人の初心者むけのバレエ教室もあって ストレッチとか姿勢がよくなるなどをコンセプトにしているらしいので、いつかやってみたいと思っていた。
ダイエットも少しできたので気が大きくなっている私は すぐさまネットで そのバレエスタジオを調べ電話した。
「あの~ 68才なんですけど だいじょうぶでしょうか? 
とてもバレエには到達できないと思うんですけど」
先方は「大人の初心者のクラスがあって、ストレッチとかだから大丈夫ですよ」との返事。
私「きょう、バレエスタジオに電話して、体験レッスンを申し込んだ」
夫「オレは、バレエスタジオが出来たと言っただけだ。まさかやる気だとは! お前、勇気あるなあ」(その年で!その体形で! という夫の気持ちがにじみでている。失礼しちゃう)

さて、バレエストレッチの体験レッスンだが、長年運動もせずに年を重ねてきた私なので、キツイ。
やっぱ私にはムリかも ヨガとか体操とかにすべきじゃないだろうか?と思い悩んだが、どうしてもやりたい。
出来たばかりでまだ生徒数が少ない。それほど迷惑にならなそうなので、
ひとつの動きで半分くらいやって後は休んでていいかと聞いてみた。
先生が「いいですよ」と言ってくれたので10回チケットを買った。
たぶん、先生は私がやるとは思っていなかったんだと思う。
帰りは、体の血のめぐりがよくなったのか、今まで経験したことのないようなスッキリ感

さて、死ぬかと思ったほど私にはハードだったバレエ・ストレッチの体験レッスンの後、とにかくあのままじゃ続けられないと家で毎日ストレッチを復習してみた。
2回目は、何とか最後までいっしょにやることが出来た。半分もやれなかった前回に比べ、すごい進歩である
とにかく、バレエ・ストレッチをやりたい一心でがんばってるのである。
毎日やるだけで 体が多少は動くようになっていく。
それに体操はちっとも続けられなかった私が、バレエ・ストレッチは、毎日やるのが楽しい(一つの動きを1回やるだけだけど)。何といっても、動きがゆったりとして優雅な感じがいい。それに姿勢にも気を付けるようになったし。
私が、バレエストレッチを始めたら、友人も次々と始める。
みんな 小さい頃バレエやりたかったのに親に習わせてもらえなかったとか、スタジオの影からそおっと見てたとか、バレエのあこがれを長年心に秘めていたのだった。それが、一番運動なんてやりそうもない私が始めたので(しかも何とかやれてる)、ハードルがぐんと低くなったのはまちがいない。友だちが「とにかく、あの場所にいるだけでうっとり」というように
きれいなスタジオで 美しい先生の美しい動きを見るだけで気分も上がる。

10回券もクリアして、たぶん先生もビックリの2度目の10回券も購入。
私だって、初回の大変さを思うと ここまで来たのが信じられない。
さて、出来るだけ姿勢を良くして鏡の前に立つと、どうもこのゆるいTシャツやスエットが良くない。
私も もっと体にフィットしたものを見につければ もうちょっと見られるんではないか・・・と、通販でレッスン着を調べたら、けっこう安いものがある。

そして、数か月後、

バレエ・ストレッチを始めたころは、ゆるゆるのスエットの上下だったのに、今は、首元が大きくV字に開いたピッチピッチの黒のTシャツ(着るのも大変なのよ、きつくて)、小さなパールの花がついた金のネックレス(娘にもらったもので、私のもってるなかで一番高級なもの。なぜかこのネックレスのみ好評)、薄く透けるスカートがついた黒のレギンス、黒のバレエシューズという 年を顧みないいで立ちでバレエ・ストレッチに励む。
しかし、これを着るとシャンとして姿勢がさらによくなる。
やっぱりレッスンにはレッスン着よ、たとえストレッチでも。
動きやすいし、とにかく気持ちが上がる。
着てるだけで20%増しに上手になりそう。やっぱ恰好は大事よ。
数カ月前は、こんな格好でバレエストレッチをやってる自分なんて想像もできなかった。

文通友達からは「ピッチピッチのタイツをはくんですね。うすくスケるスカートも。想像してみました。3日間 笑えそうな気がします」ってオイ!
さらに、別の友だちも爆笑してたとか聞いた。どいつもこいつ失礼なヤツばかりだな。まっ、正直とも言えるが。

私にとって、体にいいことは苦行だった。
腹筋運動もつらいし、体操も疲れる。ヨガも太極拳も大変そう。
ところが、バレエ・ストレッチは、体にいいのにメチャメチャ楽しい。
とにかく週一のレッスンが楽しくてしょうがない。それは友達も同じらしく 「こんな楽しいことがあったなんて!」状態。
ああ、バレエスタジオで、たとえストレッチでもバレエの真似事が出来る日がくるとは!
先生の贅肉がひとつもついてない姿と、きれいな動きを見るだけでも、やる気が出る。美しい物(人?)を見るのって大事ね。


そして、半年後

・腕のストレッチはいつも痛くてよく曲がらないのに、あれっ 痛くなくなった。
・庭木の枝を切るといつも肩から腕が筋肉痛になるのに、最近はならない
・子供や孫たちが来ると大量の料理を作るので 料理中 腰が痛くなるのにならなかった。
・さらに、子供たちが帰った後ぐったり疲れるのに、たいして疲れず 元気だった。

これは、もしかしてバレエ・ストレッチ効果?!

夫も、私がバレエ・ストレッチで 姿勢がよくなり 元気になったという。
バレエ・ストレッチを初めて半年、ここまで効果を実感するとは!
しかも楽しいのに!!

毎日、習ったことを1回ずつやってみるがほんの数分くらいだ。
1週間に一度は、スタジオでていねいに45分やるので、それがとてもいい。衰える一方の体にうんざりだったが、まさか69才になって体力が向上するとは! この歳でバレエ・ストレッチにめぐり逢えたことに感謝!

そして1年後、 

体力もつき、まわりからも健康になったと言われる。
今まで自分は疲れやすいがそこそこ健康と思っていたのに、本当の健康ってこういうことだったのねと初めて知った気がする。
疲れなくなったし、疲れても回復が早い。

さらにゆるゆるのスエットからバレエのレッスン着に替えたら、長いこと眠っていたおしゃれ心が目覚めた。
ほったらかしだった自分を、少しはかまおうと決心。
今までは、体を締め付けないラクな服が好きだったが、体にピタッとした服がよくなった。まずゆるゆる服はやめて、安いからと安易に服を買わない。今までは、安くて着やすくそこそこ見れるというコンセプトで買っていたのだが、自分が多少はやせてきれいに見える服 というコンセプトに変えた。

バレエスタジオの初めての発表会のパンフレットに、芸術の大切さが書いてあった。本当にそう思う。コロナで、芸術や娯楽がどんなに人々をうるおすかよくわかったし。

発表会は私たちストレッチクラスはもちろん見るだけだが(だって、ストレッチなんだから、踊りまで到達できないんだから)出演する生徒さんたちはかわいくて素晴らしく上手。
しかし、先生たち3人のプロが踊ると、そこには芸術の香りが。
先生が笑顔で登場すると、それだけで舞台が輝く
踊りだすと、もううっとり。やっぱりプロはすごい。
私たちはその優雅で美しい世界へ引き込まれて行く。

こんな素晴らしい人に習ってるんだと、申し訳ない気分になる(アラ還、アラ古希の私たちのストレッチに付き合ってくれて)。
しかし、私たちに生きがい健康を与えてくれた功績は大きい。
先生は、私たちにも手を抜かず、私たちが楽しくかつ少しでも上達するように教えてくれる。先生の動きを見るだけでもスタジオに来る価値があり、心躍る

そして思ったのだが、こんなにバレエ・ストレッチが楽しいのは、バレエという芸術に多少とも触れられるせいじゃないだろうか?
そこが体操もヨガも続けられなかった私が、こんなに夢中になる要因かもしれない。身体のためとかじゃなく、純粋にバレエという芸術の素晴らしさをちょっとでも味わえるから こんなに楽しいのかも。

さらに 息子夫婦が 私には手が出なかったステキなレッスン着まで買ってくれ(しかし、もう少し痩せなければ似合わん)、コロナで会えなかった友達ともバレエスタジオで会えるし、楽しいことばかり。

今までは老化の一途をたどるといった感じだったのに、体も改善できるし、楽しいと気持ちもアップするし、おしゃれも楽しむようになった。
人生まで変わったバレエストレッチ入門だった。


そして、ふとしたことからnoteというものを知った。
今までブログに書いてたものをまとめようとしたのだが、サッパリわからない。けど、noteはとってもまとめやすく(マガジン)書きやすい。

実は、私はnoteで たわいのない出来事や 音楽や 自然や 花や 料理や 加齢によるもろもろなどを書くつもりだった。
どうせ誰も見ないから、日記のように気楽に書くつもりだった。

ところが、大好きなローリング・ストーンズのことを書いたら、コメントをいただき、noteで思いがけず音楽の交流ができるようになった。
私にとっては、うれしい誤算である。世代を超えて音楽でつながれるという思いもかけない楽しみができた。
驚いたのは、若い人で ローリング・ストーンズ好きの人や、60~70年代の私が青春時代リアルタイムで聴いていたロックを好きの人がいること。
自分と同じ音楽が好きというのもうれしいし、年齢に関係なく音楽の話が通じるのが すごくうれしい。
しかも、みなさん、よく聴き込んでいて(レコードで聴いてる人もいる)、解説がすばらしい! 私なんて、好きとか いいとか すばらしいとしか言えないのに、ここの楽器がいいとか、流れがいいとか、くわしく解説しているのだ。
で、他の方のnoteでなつかしい音楽を味わったり、知らなかったいい曲もたくさん教えてもらってる。忘れてた曲もいっぱい思い出したし、そういえば、このコンサートにも言ったっけなどと次々思い出す。

かつ実際にすばらしいカバーをしている人もいて、そのライブも愉しみ。
オリジナルは、何回も聴いてるから カバーが新鮮。
それもかなりの実力があるからであって、違和感がないのだ。

私は音楽の解説はできないので、その音楽を聴いていたころのことや、その音楽にまつわる話など書くだけだ。
みなさんも、リアルタイムで聴いてた人がめずらしいらしく(ほんとに、私の年齢の人はほとんどいない)、私も話に混ぜてもらってる。

noteで味わう音楽の至福の時間♪
昔のロックなどの音楽を 愉しみながら教えてもらえるので 私にとっての社会人大学(大学院?)の講座のよう。
まさか、この歳で こんな心ウキウキの時間が持てるとは!!

さらに、noteには イラストとか、文章とか 若くて才能のある人がいっぱい。
いいと思っものは、すぐコメントしてしまう。
みなさん、私よりずっと若いのでコメントなんかするのも申し訳ない気がするのだが、年だからと言いたいことややりたいことをがまんするのはやめようと思うこのごろなので、いいと思ったものは素直にコメントする。
こっちだって、人生の残り時間が少ないのだ。
それに、交通事故であっという間に逝ってしまった知り合いだっている。
ぐずぐずできないのだ。


ダイエットから、バレエ・ストレッチ、そしてnoteでの音楽。
この歳になって、人生がこんなに生き生きするとは思いもしなかった。
うちには97才の母がいて、元気だけど もう世話なしでは生きられない。
母もいるし、コロナもあったし どこにも行けない閉塞感でウツウツしてたが、最近の充実ぶりには 自分でもびっくり!

まるで2度目の青春がきたようだ。




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