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2・フォークナーの「魔法の木」

高校の図書館で借りた「魔法の木」という本が忘れられなくて、東京に出てきてから、なんとかして読みたいものだと思っていた。
今のようにネットですぐ情報が手に入るわけじゃなく、記憶のなかの題名だって、あやしいものだったけど。

筋書きとかではなく、イメージみたいなものに引かれていた。
眼のなかに金色のしみのある少年とか 魔法の木を探しに行く様子、 
夢の中の出来事のような そこに流れるイメージが心地よいのだ。

あるとき、当時付き合ってたうちのダンナと できたばかりの渋谷の絵本専門店に行ったとき、なんとその本を見つけた。
買ってみてもっと驚いたのは、
その作者が 当時好きだったウィリアム・フォークナーだったこと。
フォークナーは、うちのダンナに薦められて読み始めたのだが、
「響きと怒り」を読んですっかり好きになってしまった。
その内容は難解といわれ、私も何だかよくわからなかったけど、
やはりイメージというか、詩を読むような感じで、そこにながれる情感を
味わって、なんともいえず感激したのを覚えてる。
心引かれていた本が好きな作家の書いたものだと知って、さらに感激した。


「魔法の木」は、フォークナーが書いた唯一の童話で、
奥さんの連れ子のために書いたものらしい。
この本の最後で、聖フランシスさまが
「たよれるものを持たぬもののめんどうをみて、守ってやるひとというのはわがままな願いをもつことなどはありえないのでな」
「あなたが、たよれるものを持たないものにやさしくしてやったら、どんなことでもピタッと本当にしてしまう魔法の木なんか、あなたには必要ないんだよ」
と伝えるのが、美しいイメージをさらに深めている。


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