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book review

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これまでいろんなところで書き散らしてきた書評記事のアーカイブです。選書や読書の参考にしていただければ幸いです。
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2021年11月の記事一覧

3割が支配する国――小熊英二『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』(講談社現代新書、2019)評

「いい学校、いい会社、いい人生」という言葉がある。受験競争を勝ち抜いて「いい学校」に通い、そこから「いい会社」に正社員(終身雇用・年功賃金)として就職すること。「いい人生」を送りたければ、〈いま・ここ〉の欲望は封印し、そうした先の目標のためにがんばらねばならない。多くの子ども・若者を加熱するおなじみのスローガンだが、それが該当するのはかつてもいまも人口の3割ていどにすぎない。 日本社会を生きる人びとの「生きかたの型」は、企業を基盤に生きる「大企業型」(26%)、地域を基盤に

日本で女性差別がなくならない理由――上野千鶴子『女たちのサバイバル作戦』 (文春新書、2013年)評

多くの日本人にとって、現代の日本は、1985年成立の男女雇用機会均等法、1999年成立の男女共同参画社会基本法を経て、職場や社会の男女平等が成り立っている国だというのが一般的なイメージであろう。これらは小学校から高校までの社会科系の教科書で繰り返し姿を現し、暗記させられるものであり、それが上記イメージ浸透の理由であろう。だが、それが単なる建前で、実態はまるで異なる男女不平等、女性差別がなお横行する社会であるというのが、学齢期を終えた人びとの偽らざる実感であろう。 本書は、ジ