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誤字:なぜ人類は「少しづつ」と書いてしまうのか

政府の発表による「現代仮名遣い」によれば「少しずつ」と書くのが本則ということになっています。
しかし、人類のかなりの人が「少しづつ」と書いています。僕も最初そう書いていました。

少しづつと書いてしまうのには、ちゃんと理由っぽいものもいくつかあるのです。

まず、正仮名遣い(歴史的仮名遣い、旧仮名遣い)では、「少しづつ」と書いていました。
ですから、戦前までは「少しづつ」と書くことが「正しかった」のです。
ちなみに「づずぢじ」は「四つ仮名」といい古来、発音も違ったので、普通は区別されていました。

正しかったのですから、今でもそれで書いている人がいても、なんら不思議ではありません。
要するに、なんとなくその人の言語感覚的に「づ」が正しいと、分かってるということでしょう。
その感覚は本来なら正しかったのに、現代仮名遣いでは「ルール」のほうを変えてしまったので、本則ではなくなってしまいました。

もうひとつは「直後に『つ』がある」というものです。
これは「つづみ、つづる、つづく」のように、直前が「つ」だった場合に「ず」ではなく「づ」になる、というルールがあります。
それに引っ張られて、直後でもやはり何となく「つ」で書きたいような気がしてきます。

ちなみに、もともと「づ」だったものとして「いづれ、おとづれる、うなづく、ひざまづく、かしづく、いなづま」などがあります。
どれも現代仮名遣いの際にルールのほうが変更になって「ず」で書くことを本則とされました。
これらのものは、やはり多くの人が、本則ではないほうの表記で書いているのを見かけます。

そのためルールはかなりややこしいのです。

ちなみに僕は一貫して「『ず』のほうが正しい」ではなく「本則」であると書いています。
これにも理由がありまして、昭和61年の「現代仮名遣い」では「本則が原則ではあるけれど、違う表記も認めている」という注意書きがある項目があるためです。
すなわち、逆の表記でも、間違いとまでは言えません。
ただ、一般的には誤字として訂正処理することが多いものになります。

現代仮名遣い、ややこしいですね。
ひらがな書きと侮るなかれ。


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