中学受験生の家庭教師求めます

大学に関わっていると、大学入試や大学院留学のための推薦状を頼まれることが時々ある。近年はオンライン出願が多いので、推薦状もオンラインとなり、中身を考えるのはそれなりに大変だが、字を書くことについてはパソコンだからラクチン。スペルチェッカーもついてる。

問題は手書きの推薦状。僕は日本語の手書きがとても苦手。東洋英和女学院で教えていた時も板書は一切やらなかった、というかできなかった。字が下手な上に、そもそも漢字が思い出せない。大勢の女子学生の前で漢字が思い出せず立ち往生するのはカッコ悪いので、講義はパワポで押し通した。
そんな僕が知り合いの某女子高生に某難関有名大学の手書きの推薦状を頼まれた。今時珍しい手書き推薦状を前に数日悩んだ末に大発見。そうだ、パソコンで書いて印刷したものを手で書き写せばいいんだ!というわけで、まずワードで文章を作り、プリントしてから写した。推薦の「薦」などの複雑な字は良く見えないから虫眼鏡で見ながら。

普段でも自分の名前の「澤」の横棒が一本か二本か確信が持てないぐらいだから、500字ほどの文章を写すのは大仕事で緊張のため手が震える。加えて悪筆。ヘブライ語とアラビア語を足して二で割ったような変字体で何とか書き終えた。この先、懸念されるのは某難関有名大学の選考委員の先生方の読解力。
(で思い出した。18年ぐらい前、UNHCR本部にいたころ。悪筆で有名なルベルス元難民高等弁務官から手書きで3~4ページのメモが何度か届いた。中身は、EUからの拠出金の会計的認識のタイミングというテクニカルなことで、僕の判断に意義を唱えるもの。どうひっくり返しても読めないので、高等弁務官の秘書の部屋に行って二人で解読したもの)。

写し終えて「これでよし」と大きな達成感、安堵感、恍惚感をもって推薦状に封をし、中型封筒に入れて宛名を書いたときに、緊張が解けたためか字を間違えた。桃という字は「木+兆」という構成なのに「本+兆」と書いてしまった。高揚感、幸福感は瞬時にして消え、いつもどおりの劣等感、ダメダメ感の海に沈んだ。封筒を書き直す気力もなく、そのまま出してしまった。某女子高生さん、ごめんごめんごめん。

中学受験の小学生の方が字を知っていて上手に書けるよね。僕の家庭教師になってくれる中学受験生を求めます。


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