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人生の最期にもう一度観たい映像作品 ベスト2『愛と死をみつめて』2006年版ドラマ

 あれ、なんでいきなりベスト2位発表なの? 普通、1位とか3位とか5位から始めない? と、思われた方、あなたは正しい。
 実は、この作品について紹介する必要があって、一昨日あたりに執筆したものを、一部改変しながらお送りしています。

 ちなみに、ほかの順位の作品をご紹介する予定は、いまのところありません。でも2位は譲れません。
 なぜなら、不動の1位は、小林賢太郎さんの一人舞台『うるう』にもう決定しちゃってるんです。
 3位から5位に関しては、非常に競っておりまして、まだ結論出ず。順位が決定し次第、発表します。(やかましいわ。笑)

さて、この2位の作品のおはなしに入りましょう。

 すべては、『愛と死をみつめて』という、悲恋のふたりの文通小説から始まりました。
 書籍の刊行は昭和38年と、かなり昔のことになります。

 東京の大学生だったマコと、大阪の病院に入院し、軟骨肉腫という難病で21歳で生涯を閉じたミコの実際の手紙を、ミコの死後にマコが書籍化したもので、当時、大ベストセラーとなり、社会現象になりました。

 この作品は、吉永小百合主演の映画になったほか、テレビドラマ化も何回もされています。
 私が好きなのは、2006年版の二夜連続ドラマのDVDで、ミコを広末涼子が、マコを草彅剛が演じています。

 現在、このドラマを観るのは簡単ではないと思うので(とっても名作なので、口惜しいのですが)、あらすじを説明しますね。

【あらすじ】
 ミコが亡くなり、書籍が爆売れするなか、マコは別の女性との結婚報告の場で、マスコミ人たちのやり玉にあがっています。

「ミコさんとの純愛は嘘だったんですか?!」
「国民をだましたということですか?!」

 情け容赦のないマスコミの糾弾。

 実は、マコは書籍が想定を超えて売れてしまったことで、家に引きこもり、うつのような状態になっていたのです。マコのもとに、毎日たくさん届く、ラブレターにも似たファンレター。

 自分のこころと社会の状況との乖離の間で、悩んでいたのです。

 物語はふたりの出会いの場面に移っていきます。

 耳を悪くして、親族を頼って大阪の病院に入院していたマコは、そこで明るく溌剌とした美少女、ミコと出会います。病人のようにはとても見えないミコでしたが、軟骨肉腫を患っていました。

 軟骨肉腫はいまでも難病です。手や足などの関節にできることが多いのですが、ミコの場合は、顔にできてしまっていたのです。切除するしかないのですが、片目はもちろん、頬、鼻の脇から唇の端までを切除しなければならない、大手術なのです。

 幼い頃から、べっぴんさん、べっぴんさんと褒められて育ったミコにとっては、きっととてもつらいことだったのではないかと思われます。ミコは、美しく、聡明な女性だったのです。

 耳が治り、東京に戻ったマコとミコは、文通を始めます。学生というお金のない身分のマコでしたが、必死に労働しては、度々大阪の病院を訪れるのです。

 偽名を使っては、ひそかに病院で大量の睡眠薬を手に入れるミコ。マコに、一緒に死んで、と瓶を手渡します。マコは「俺は死にたくない!」と言いながら、口の中いっぱいに睡眠薬を放り込むのです。

 ここで、一回泣きます。

 片目の切除手術が終わり、傷口が覆われている状態のとき、みなが寝静まった夜中に、ミコはトイレにひっそり向かいます。手鏡を手にして。

 トイレの個室で、電気もつけずに、ガーゼをはがすミコ。手鏡をのぞき込んで、あまりの恐ろしさと絶望に、声も上げられず、震えながら崩れ落ちるミコ。

 ここで、また泣きます。

 ミコの悲劇は、ここで終わりませんでした。
 軟骨肉腫は、残酷なことに、反対の目の側にもできてしまうのです。

「たとえ両目が無くなっても、生きていて欲しい!」と切願するマコに対し、ミコの両親が反対します。

「あの子は、べっぴんさんべっぴんさんって言われて育ってきたんよ? 顔が無くなっても、それでも生きていけなんて、とっても言えないわ。」と。

 結局、ミコは手術を断念し、若い命を散らしていくのです。

 ミコの書き残した、有名な文章があります。
「健康な日を三日ください」というものです。

 一日目、ミコは実家に帰って家族と過ごします。
 二日目は、マコの大好きな山登りを一緒にやりたい。
 三日目。ミコは「私はひとり、思い出と遊びましょう」と書き綴っているのです。

 決して叶うことはないけれど、もしも健康な日が三日もらえたなら、最後の一日は、ひとりで思い出と遊んで過ごすというのです。
 理解ができるようなできないような、大人びた心理に思えます。

 ミコの死後、本が大ヒットしてしまったマコは、うつ状態に陥っていました。毎日、毎日、ファンレターが届く日々のなかで、世界文学全集の一冊目が届くのです。

 その本に添えられた手紙には、「あなたはもっと人生の勉強をしてください。」とだけ書かれていました。差出人の名前も住所もありません。

 文学全集は毎月一冊ずつ届き、すべての全集が揃ったとき、マコは消印を頼りに差出人を探しに行くのです。

 差出人は、笑顔の寂し気な女性でした。その女性とマコは結婚し、残りの人生をひっそり生きていくことに決めるのです。

 というドラマでした。
 ドラマの第一話の終わりで、ドリカムがカバーした「愛と死をみつめて」の曲が歌われ、ドリカムにかかるとこんなにも素晴らしい楽曲になるのか、と感動させられます。

 もし、お手に取られることが可能なら、おすすめのDVDですよ。

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